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第2回

[前編]FMCの現状と展望 ~FMC-固定とモバイルの融合

日経BP社 日経コミュニケーション編集長 宮嵜 清志 氏

写真: 宮嵜 清志 氏

日経BP社
日経コミュニケーション編集長
宮嵜 清志 氏

高速な通信回線の普及や通信技術の向上により、IP電話やモバイルセントレックスなど、さまざまな通信サービスが生まれています。さらに今後は、携帯電話網や固定網などのネットワーク回線を意識することなく、高速なネットワーク回線と各種サービスが利用できるようになっていくでしょう。
今回は、携帯電話網と固定網をシームレスに連携させ、場所を問わず最適な回線とサービスを提供するFMCのメリットと可能性について、日経BP社の日経コミュニケーション編集長、宮嵜清志氏にお話を伺いました。

FMCとは何か?

最近、通信業界でFMCという言葉を耳にすることでしょう。FMCは、固定 (Fixed) とモバイル (Mobile)、融合 (Convergence) の頭文字を取ったものですが、実は、人によってこの言葉の定義が異なります。もともとは、通信事業者が企業向けというよりも、一般利用者に向けて、使うようになった概念だと思います。FMCは携帯電話網と固定網を密接に連携させ、さまざまなサービスを提供する技術です。端的に言うと、外にいるときには携帯電話網を使い、家の中では携帯電話網ではなく、無線LANなどのアクセスポイントを介して光ファイバなどのブロードバンド回線を使って通信するということになります。
通話や通信にFMCサービスを利用すると、携帯電話網や固定網など、その場で最適な回線が選択される。

ここで、「家の中でも携帯電話網で通話ができるのでは?」と思われることでしょう。確かに、外で使用している携帯電話を家の中に持ち込んでも、電波が届けばそのまま携帯電話網で接続できます。しかし、携帯電話網と固定網との違いは、品質と料金にありますので、家の中で固定網に切り替えることができれば、ユーザーは低料金で高品質な回線を利用できるようになるわけです。
また、FMCサービスには、外出先と家で同じ端末を使用し、同じ電話番号で通話ができ、料金明細も一本化できるという特徴があります。事例としては、韓国のKTや英国のブリティッシュテレコム (BT) がサービスを開始しています。日本では、KDDIにより、固定電話と携帯電話に加え、インターネットサービスまでの料金請求を1つにするということがすでに、実現されています。1台の端末で,どのネットワークを使おうと同じ番号で済むことから,世界的には「ワンホン (OnePhone) 」サービスと呼ばれることもあります。

従来のモバイルセントレックスとの違い

FMCの概念と似たものとして、モバイルセントレックス (注1) があります。モバイルセントレックスは、もともとは企業向けの概念で、外出先では通常の携帯電話として使用し、オフィスの中では無線LANを使って内線通話ができるというものです。アクセスポイントまでは無線LANを使用しますが、その先は、固定網を使います。オフィスの中では、IP電話のコードレスホンといったイメージです。構造的にモバイルセントレックス (注1) は、FMCサービスの一部でもあると言えます。
モバイルセントレックスは構内PHSの置き換えとしてサービスが開始されました。しかし今では、企業向けだけということではなく、モバイルセントレックスで使用するデュアル端末を家庭向けにも展開しようとする通信事業者も出始めています。

  • 注1) モバイルセントレックスとは、企業の内線電話を携帯電話で取れるようにするシステムのこと

FMCのメリットとは?

なぜFMCという概念が生まれたのか、そしてその魅力はどこにあるのかを考えてみましょう。通話や通信にFMCサービスを利用するメリットとしては、まずは通話料金があげられます。携帯電話を自宅で使用すると、携帯電話網ではなく自宅のブロードバンド回線を利用するため、通話料を低減できます。仮に通話料金が9割減となるのであれば、ユーザー誰しもがFMCに魅力を感じることでしょう。
しかし携帯電話と固定電話の料金がほぼ同じであれば、この魅力は生まれません。実はこの問題で苦しんでいるのが韓国のKTです。韓国の場合、携帯電話の料金は、固定電話とさほど変わりはありません。ユーザー獲得に向けて料金格差をアピールできないとなると、ユーザーにどのようなメリットを訴求すればいいのかということになります。
そこでKTは、FMCサービスを利用すると会社や自宅ではブロードバンド回線、喫茶店などでは無線ホットスポット、そしてこうした電波が入らないエリアでは携帯電話網というように、居場所によって自動的に最適な回線を使い分けられる利点があることを、ユーザーに訴求しています。音声通話以上に、データ通信の場合は、回線速度や品質が選択のポイントとなるからです。
日本のように固定と携帯の通話料の差が大きければ、当初は通話料の差がメリットの第一にあげられると思いますが、実は料金ではなく、ユーザーが意識しなくても最適な回線を選択できるという利便性こそがFMCサービスのメリットだと思います。

固定通信事業者が推すFMC

通信業界を見渡してみると、携帯電話事業者ではなく固定通信事業者がFMCを推していることに気づくと思います。これには理由があります。通話手段が携帯電話中心の世の中に移る中で、固定電話の加入者数が減り、通話料収入も減少しています。しかし、FMCを利用した通信・通話サービスが普及すれば、固定網も利用されるようになります。固定網の加入者数は増え、ユーザーが携帯電話事業者に払っていた通話料のいくらかを取り返すことができるのです。すべての通信事業者が声を揃えてFMCと言っているのではない、というところがポイントでしょう。

文字通り、FMCは「固定と携帯の融合」ですので、携帯電話網と固定網がシームレスに連携しなくてはなりません。しかし、自社で固定網を持たない携帯電話事業者からすれば、トラフィックが減り、通話料収入が減ることになりますので、固定通信事業者とどのように利益を分配するか、という泥臭い問題になります。
韓国KTの場合、同社のFMCサービスを利用する携帯電話事業者は同社の子会社でした。また、携帯電話部門を持たない英国のBTの場合は、英国ボーダフォンと提携し、MVNO (※2) としてFMCサービスを開始しています。日本の場合、NTTドコモは同社が持つ固定網ネットワークを利用してFMCサービスを開始することも可能だと思いますが、グループ内には固定網を持つNTT東・西がありますので、単独では行わないでしょう。グループ企業間の調整が必要だと思います。
また、KDDIの場合は、自社内に携帯電話部門と固定電話部門を持っていますので、他社とのしがらみなしにFMCサービスを開始できると思います。KDDIのように携帯と固定のネットワークをそれぞれ持っている通信事業者の場合、FMCによってネットワークを一元管理できるようになるので、ネットワークの運用管理の負担が減りますし、課金サーバーは1つで済むなど、固定と携帯向けに自社のサービスを一括提供できるようになります。その結果、料金も安く設定できるでしょう。KDDIのウルトラ3G戦略が、まさにそれにあたります。しかしFMCに関連したサービスを開始する前に、解決すべき問題がいくつかあります。この問題は何か?そして、FMCによって企業が享受できるメリットは何か?については、後半でご説明します。

  • 注2) MVNOとは、Mobile Virtual Network Operatorの略で、仮想移動体サービス事業者のこと。携帯電話の免許を受けた通信事業者からインフラを借り、自社で携帯電話サービスを行う会社を指す。

(2006年2月21日掲載)

  • ※ 掲載日以降、最新情報ではない場合があります。あらかじめご了承ください。



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