第7回
[前編]「頭がいい人、悪い人」のビジネスコミュニケーション
~樋口式「頭がいい人」の思考法
「白藍塾」塾長 京都産業大学客員教授 樋口 裕一 氏

「白藍塾」塾長
京都産業大学客員教授
樋口 裕一 氏
国際化やネットワークの進展により、多種多様な相手とコミュニケーションを取る機会が増えています。さらに、ビジネスの現場では、相手に自分の考えを正確かつ簡潔に伝えることが、商談の成否に直結することもあります。今回は、『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP 新書)の著者であり、小論文の添削指導塾「白藍塾」(はくらんじゅく)を主宰する樋口裕一氏に、コミュニケーションの根幹となる論理的な思考法について伺いました。
論理的な思考が求められる理由
外国の方はよく、口癖のように「私は○○と思う。その理由は3つある」と自分の意見を論理的に述べようとします。一方、日本人でこうした話し方をする人はほとんどいません。話の順序や論点の所在を明確にしないのが普通です。しかし、これは日本独特のコミュニケーションの進め方と考えるべきでしょう。
海外出張やインターネットが当たり前の世の中になり、近年では海外との物理的な距離がますます縮まっています。政治はもちろん、ビジネスの世界でも、取引先が海外の企業ということも珍しくはなくなってきました。海外とのコミュニケーションでは、論理的に説明できなければ、交渉もうまくいかない可能性があります。
また、「あうんの呼吸」という言葉があるように、かつての日本では、口に出さなくても理解してもらえることもありました。しかし最近では、きちんと文章にしたり、口に出さないと相手に伝わらない時代になっているとも言えます。
論理的な思考ができるようになると、文章や会話で相手にきちんと自分の考えを伝えることができます。逆に、聞き手の立場であっても、相手の話を理解し、矛盾点なども指摘できるようになります。私は現在、白藍塾という小論文専門の塾を主宰して、学生や社会人に小論文の書き方について教えています。入学試験や入社試験の課題への対策として学生のみならず、社会人に向けても開講しているのは、小論文を書くことで、論理的な思考能力を訓練することができるからです。小論文の訓練によって、人前で話せるようになった、相手を説得できるようになった、書くのがつらくなくなったという人もいます。小論文を書くだけでなぜ、と思うかもしれませんが、これにはすべて論理的な思考が関係してくるのです。
ではどうしたら論理的な思考ができるようになるのでしょうか。これには、3つのポイントがあります。1つめは、「YESかNOか、自分の意見をはっきり示す」こと。2つめは「3WHAT3W1Hに従って問題点を整理し、ものごとの考えを深める」こと。3つめは「四部構成の「型」に従ってまとめる」ことです。


状況を正しく把握、分析する鍵
1つめの「YESかNOか、自分の意見をはっきり示す」ことについては、文字通り、最初に自分の意見をはっきりと示すこととなります。意見をはっきりさせることで、自分の立場が明確になりますし、自分と対立する意見も把握できるようになります。
2つめの「3WHAT3W1Hに従って問題点を整理し、ものごとの考えを深める」ことについては、3つのWHATと3つのW、1つのHに基づいて分析し、考えをまとめることで、これを行うと何が起こっているのかを把握することができます。
3つのWHATとは、「それは何か(定義)」「何が起こっているのか(現象)」「それにより何が起こるのか(結果)」を考えることです。たとえば、「成果主義」という言葉が議題であった時には、まずその「定義」について考えます。日本人ははっきりと定義をしないことが多いので、ここは意識して定義するようにしてください。また、定義がはっきりとしていない場合には、相手に聞くことも大切です。質問することを恥と考える人もいますが、物事を厳密に捉えようとする時には大切ですので躊躇しないでください。なぜなら、最初からお互い違う定義で物事を考えていたら、その先に何を議論しても意味がないからです。
その次に2つめのWHATである「現象」を考えます。たとえば成果主義だったら、成果主義がよいとされていたり、悪いとされていたり、成果主義について何が起きているのか、となります。そして、3つめのWHAT「結果」については、このままいくと結果はどうなるか?について考えます。この3つのWHATについて考えることで問題点を整理することができます。
次に3つのWは、「WHY」と「WHEN」、「WHERE」を示しています。「WHY」は、理由や背景、なぜそうなったのかについて考えます。たとえば、なぜ成果主義という言葉が言われるようになったのか、となります。また、「WHEN」は時間というよりも歴史的に、いつ頃からそうなったのか、となります。また、「WHERE」は、地域性について、他の国や地域、他の企業ではどうか、ということを考えます。
そして1つのHとは「HOW」のことです。どのような対策がよいのか、について考えます。これらのことを念頭に置き、メモを取ることで、大概のことについては分析ができるようになります。
型を使いこなして、論理的な人となる
3つめのポイントである「四部構成の「型」に従ってまとめる」ことについては、型という文の流れを用いて話したり書いたりすることです。たとえば、先に外国の方の口癖としてあげた「根拠となる理由は3つある」という言い方は、一種の型で、この言い方、書き方をすれば、知的・論理的な話し方が自然にできるようになります。
「四部構成」について解説すると、まずは第一部で、YES、NOを示します。次の第二部では、反対意見を取り入れながら、自分の意見を述べます。自分の意見だけでもよいと思われるかもしれませんが、反対意見を取り上げることで、自分が客観的な立場に立っていることを相手に示すことになり、また、後から出てくる反論を封じることができます。会話の場合では、「確かに課長のおっしゃる通りです、しかし…」という流れにすることで、相手をたてることもできます。
第三部では、ここまで述べたことに関する根拠を示します。ここで、「理由は3つある」と前置きしておけば、論理的に話を進められます。そして第四部では、結論を述べます。このように展開すれば、常に論理的な文章を記述したり、会話ができるようになります。話の途中から脱線して、自分が何を言っているのかわからなくなることもなくなりますし、「型」に基づいて話をすることで、自分の意見を決めつけて言うのではなく、その根拠を論理的に示せるようになるのです。
後半では、今回説明した3つのポイントを実際のビジネスに活かすコツについてお話しします。
(2006年7月25日掲載)
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