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第19回

[前編]他人の10倍こなす仕事術 ~仕事ができる人の秘密

医学博士 臨床心理士 国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹 氏

写真: 和田 秀樹 氏

医学博士 臨床心理士
国際医療福祉大学大学院教授
和田 秀樹 氏

普通の人にはこなしきれない多くの仕事や難しい仕事を、効率よくテキパキとこなし、残業もせず、自分の時間もしっかり楽しむ。誰もが思い描く理想のライフスタイルかもしれません。そう簡単には実現できそうにありませんが、実際に人の何倍もの仕事をこなしている方もいます。そこで今回は、精神科医を務められながら、教育問題や大学受験、人材開発といった多分野にわたり、書籍の執筆やテレビのコメンテーターなどとしても活躍されている和田秀樹氏に、仕事ができる人の秘密についてお話を伺いました。

ビジネスと心理学の意外な関係

私は現在、精神科医として患者の心のケアにかかわっていますが、教育や人材開発といった分野の仕事も行っています。このように医療だけでなく他の分野の仕事にも携わるようになったのは、米国での経験がきっかけです。

精神医学を学び始めた学生当時、私は家庭教師や塾経営など、人と接する仕事を行っていたので、心理学的なアプローチをする精神医学に興味がありました。しかし日本では脳の働きなどに着目する生物学的な精神医学のほうが主流だったため、カウンセリングやサイコセラピーなどの研究が進んでいた米国に留学し、経験を深めることにしました。そのとき、米国では心理学的な精神医学の知識が、医療だけでなく、経営やマーケティングといったビジネスの分野にも活用されていることを知りました。

ビジネスと心理学には、関連がないように思われるかもしれませんが、実は違います。マネジメントでは対人関係の心理分析、マーケティングでは顧客心理の分析も大切です。また、経営に関しては、経営者が抱える課題を心理学の方面から分析してみることも大切です。しかし、日本ではいまだにその大切さに気づいていない方が多いようです。そこで私は、社会にその必要性を訴えるためにも、心理学ビジネスのシンクタンクを設立しました。教育や人材開発などのさまざまな分野で、書籍の執筆や、講演、コンサルティングなどを行っているのは、その活動の一環です。

「ノウハウ学力」と「コンテンツ学力」

生物学的なアプローチをとる精神医学では脳の研究が進んでおり、脳を活性化させ、脳を若返らせる方法も明らかになりつつあります。これは素晴らしいことだと思いますが、ハードウェアとしての脳そのものでなく、心理学的な精神医学による脳のソフトウェア部分の研究も大切だと私は考えています。これは最新のコンピュータを購入しても、ソフトウェアが働かなければ、その価値がないのと同じような理由です。

脳のソフトウェア部分を開発するためには、私はこれまで著書などでたびたび“要領のよい”勉強法について言及してきました。その根底には、人々に不必要なあきらめの気持ちを持っていただきたくないという、願いがあります。いくら勉強しても結果が出ないという人は、その方法が間違っているだけで、あきらめずに方法を変える気持ちがあれば、つまり“要領”をつかむことができれば、見違えるように勉強ができるようになる可能性が高いのです。

私は、いろいろと試行錯誤しながら得た学力を「ノウハウ学力」、勉強法を工夫することもなく獲得できた学力を「コンテンツ学力」と呼んでいます。大学受験にたとえると、模擬試験ではCやD判定だったが、勉強法を変えることで最終的には大学に受かることができた、というようなタイプの人が、「ノウハウ学力」の高い人にあたります。いずれも学力であることに変わりはありませんが、さまざまな場面で応用が効くのは、経験上、「ノウハウ学力」が高い人だと思います。

図: 到達度は同じでも、ノウハウ学力を持つ人は百戦錬磨

能力を活用して仕事を工夫する

「ノウハウ学力」で身につけた試行錯誤ができる力は、受験勉強だけでなくビジネスのさまざまなシーンでも役立ちます。たとえば、技術職の人が営業職になったとしましょう。営業活動を行ったが、結果が出ず、自分が営業に向いてないと思ったとき、あきらめて異動を願い出たり、会社を辞めようとするのは早計です。自分が営業に向いていないと考えるのではなく、営業のノウハウがないだけと思うようにし、営業ノウハウに関する書籍などを読み、そこに書かれているさまざまな手法を実践すべきだと思います。企業の経営でも同様に、経営コンサルタントを入れたが結果が出なかった、という場合には、心理学の手法を取り入れるなどの別方向からのアプローチも有効だと思います。

図: 思うような結果が出そうにない場合には、別の方法も試してみる

情報の入手には知識も必要

次に、勉強や仕事において、「ノウハウ学力」のほかに大切な知識力についても、お話ししたいと思います。インターネットもなく、情報へのアクセスが悪かった時代には、情報を早く入手できる人が有利に立つことができました。しかし、いまではインターネットから簡単に情報を入手することができますので、入手すること自体にはあまり価値がなく、情報を分類し理解して、その情報がどこにどのように役立つかを見分けることが大切になりました。

知識があれば、外部の情報を理解し、必要に応じて参考にすることも可能でしょうが、そうでない場合には、情報の理解すら困難になります。情報の入手が簡単になった現代では、情報を頭の中に持たず、必要なときに参照すればよいというようになりましたが、それは、学習をしなくてもよくなったということではなく、しっかりと学習をして情報を参照する知識を一層必要とする時代になったということを意味しています。

このように、仕事ができる人は、仕事の手法を工夫したり、知識にもとづいて情報を理解する力を持っているのだと思います。後編では、仕事のモチベーションの高め方や、仕事の質を落とさずに量をこなすための具体的なコツについてお話ししたいと思います。

(2007年7月4日掲載)

  • ※ 掲載日以降、最新情報ではない場合があります。あらかじめご了承ください。

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注) 出典: 日経コミュニケーション2008年9月1日号ブロードバンド/モバイル/NGN時代の企業ネットワーク実態調査「広域イーサネット部門」で「KDDI Powered Ethernet」が7年連続第1位



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