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第11回

[前編]ビジネス脳で仕事は変わる! ~できる脳の秘密

医学博士 作家 米山 公啓 氏

写真: 米山 公啓 氏

医学博士 作家
米山 公啓 氏

最近、テレビ番組や書籍などで、脳のトレーニングがテーマに取り扱われることが増えています。これは、医学の進歩によって脳のメカニズムが解き明かされるにつれ、かつては衰えるだけと思われていた脳を鍛えることもできると考えられ始めたからです。今回は、神経内科医として医療の現場に携わりながら、脳をテーマにした執筆活動もされている米山公啓氏に、ITが脳に与える影響や、ビジネスと脳の関係についてお伺いしました。

現代は脳を発達させられる時代

私は神経内科医として、おもに認知症の患者の治療を行っています。認知症は脳の働きが悪くなる病気で、脳のしくみを解明することが、その治療にも役立つと考えられています。新しい計測機器の登場などのITに後押しされ、脳医学の研究は進んでおり、最近ではその研究成果を、医療の現場だけでなく、一般の人々も得られる環境になっています。

たとえば、脳をテーマにしたクイズ番組や、書店に並ぶ頭脳トレーニングの書籍などにもその成果が生かされています。これらは脳医学の研究成果をヒントにしたもので、私自身も認知症の治療や研究から得た経験を生かして、一般向けに書籍を執筆しています。テレビや書籍などで得た情報を活用して脳を発達させれば、ビジネスの能力も向上させることができるかもしれません。

コンピュータが育む創造的な脳

Webサイトで情報を発信したり、メールでコミュニケーションを行うなど、現代のビジネスではITの利用が必須の時代となりました。"ITが与える脳への影響"については賛否両論ありますが、脳を発達させる方法という観点からすれば、一般的によく言われる"便利な道具は人間の能力を低下させる"という意見は誤解だと思います。

たとえば、インターネットを利用することで、情報収集にかかる手間と時間が大幅に減り、その結果、人は調べものなどの単純作業から解放され、脳をより創造的な作業に使えるようになったということがあります。また、ワープロや電子メール、携帯メールの普及によって、手で文字を書く機会が減ったことを取り上げて "漢字が書けなくなる"などと言われることもありますが、しかし、ワープロやプレゼンテーションツールなどの普及によって文章が作りやすくなったおかげで、表現や構成といった、よりクリエイティブな作業に専念できるようになってきています。ITの普及前と比較すると、メールやブログを活用する現在のほうが、人が文字を書く(アウトプット)する機会は圧倒的に増えているのです。

このようにITによって脳が得た "余裕"を活用すれば、脳を発達させるチャンスはさらに増えるでしょう。認知症の予防のためにパソコンを始める人もいますが、決して的外れではないのです。

ビジネスで活躍する2つの脳

次にビジネスと脳の関係についてお話ししたいと思います。ビジネスにはさまざまな能力が求められますが、能力に大きな影響を与える人の脳は、正確で着実な行動を取ることが得意な"論理型のビジネス脳"と、一つのことに没頭することができる"追求型のビジネス脳"に分類することができます。

論理型のビジネス脳とは、左脳側が発達している脳です。このタイプの人は、物事を順序立てて考えるという特性があるため、正しい判断を下せる人材として評価されることが多いようです。与えられた役割はきちんとこなし、約束の時間も正確に守ることが得意な人です。ルールを重んじる職種では、論理型のビジネス脳は有利だと言えるかも知れません。また、一般的にコミュニケーション能力が高いという特徴もあります。

一方、追求型のビジネス脳は、右脳の働きが優れている脳です。この脳を持つ人は自分の能力をフルに発揮して一つのことを極めようする特性があり、専門性の高い技術を身に付けやすい傾向があるようです。また、ひらめきや直感といった能力にも長け、瞬時に物事を判断できるといった強みもあります。左脳の論理的思考も、判断の正しさという点では優れていますが、処理にどうしても時間がかかってしまいます。瞬間的、直感的な判断では、右脳に分があるのです。

ビジネスの現場では、論理型、追求型のバランスが取れた人材ばかりを集めるのではなく、いずれかに特化したタイプの人材を集めてチームを組むことで、予想以上の効果を上げられることもあるようです。たとえば、一つのプロジェクトには、企画立案や関係者への提案、条件の折衝、プロジェクト管理、分析といったプロセスがあります。企画や提案は右脳の発達した追求型のビジネス脳、プロジェクト管理や分析は左脳の発達した論理型のビジネス脳が得意としていますので、それぞれのプロセスを得意とするスタッフに担当させると、+αの効果が得られることがあるのです。

図: どちらかに秀でた脳を持つスタッフ同士で補完すると効果的なこともある

脳に合った職業を見つけることが成功の鍵

自分の脳が、論理型のビジネス脳なのか、それとも追求型のビジネス脳なのかを知ることができれば、能力を発揮できる得意分野もわかり、ビジネスでも成功する可能性が高くなるわけですが、なかなかそれを知ることは難しいようです。

自分の脳が右脳型か左脳型かを知ることだけでも難しいですし、ましてや自分の脳に向いている仕事を見極めることは、発達した現代の医学でも不可能です。これを見つけるには、試行錯誤してさまざまな体験を積むことで、それを見極めていくしかありません。もしも、努力しても一向に成果が出ないという場合は、自分の脳が不得手としている仕事なのかもしれませんので、新しい展開をはかることを考えても良いかもしれません。

後半では、脳との上手な付き合い方や鍛え方、私が最近研究テーマとして取り組んでいる"8割仕事術"について説明したいと思います。

(2006年11月14日掲載)

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