第13回
[前編]IT業界 転職の○と× ~転職決断のポイント
株式会社リクルートエージェント 第一ビジネスユニット
ITクライアントマーケット マーケットオフィサー 遠藤 泰弘 氏

株式会社リクルートエージェント
第一ビジネスユニット
ITクライアントマーケット
マーケットオフィサー
遠藤 泰弘 氏
M&Aやベンチャー企業の設立、新技術の出現などで、IT業界は目まぐるしく変化しています。また、人的資源の流動化などの労働環境の変化を背景に転職が一般的になりつつあります。そんななか、IT企業や情報システム部門で働く方々はどのようにキャリアアップをしていけば良いのでしょうか。今回は、株式会社リクルートエージェント 第一ビジネスユニット ITクライアントマーケットマーケットオフィサーの遠藤泰弘氏に、IT業界の求人、転職事情と、転職決断のポイントについてお話を伺いました。
年間転職者数は約19万人
今や、年間のビジネスパーソンの転職者数は約19万人にものぼり、求人情報誌や求人サイトも数多く存在するようになりました。しかし、転職希望者が転職期間内に希望する企業を見つけたり、企業が応募期間内に最適な人材を見つけるのは簡単なことではありません。弊社が提供している「転職エージェント」というサービスでは、転職希望者と求人企業の間に転職市場の動向に精通するプロが立ち、双方の希望に沿うようマッチングを行っています。聞き慣れない言葉かもしれませんが、大リーグなどで選手と球団の間に立ってさまざまな調整を行う「エージェント」と同じようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
IT業界の求人動向
弊社で扱う求人数の推移を見ると、ここ数年はどの業界も右肩上がりに増加しています。なかでも顕著なのはIT業界で、システムやネットワークのインテグレーター、ITコンサルティング企業からの求人が増えています。この傾向は、少なくとも2007年の上半期までは拡大していくと思われます。

IT業界における求人数の急増には、金融機関のIT投資の増加が大きく影響しています。銀行だけでなくネット証券会社などでも、IT基盤やこれを支える事業継続に関連するシステム構築を必要としているのです。この背景には、これまで法人部門を中心に営業してきた金融機関が、個人 (リテール) 部門を強化しようとしている動きがあります。
求人企業を規模別に見ると、大手のシステムインテグレーターからの求人が最も多く、これを支える中堅、大手パートナー、独立系のインテグレーターまで活発な求人傾向が広がっています。また、エンジニアからプリセールス、営業まで、職種も拡大しています。ちなみにエンジニアで求人が多いのは業務系アプリケーションのSEです。企業が求めるスキルレベルはプロジェクトリーダークラスから上級プログラマ、職歴2、3年のプログラマまで多岐にわたります。
このように、IT業界では求人数が圧倒的に多く、転職希望者にとっては選択肢が多い時期であると言えるでしょう。
業界知識や経験を企業は求める
次に、転職を希望するSEの就職希望先を見ると、最近では、一般企業の情報システム部門で社内SEとして働きたいと希望する方が増えています。この理由には、一般的にIT業界は、モノを作り出すメーカーとは異なり、仕事の成果が見えにくいということがあるようです。実際に、2次、3次請けの開発会社であったり、コーディングや運用保守の担当であったりすると、プロジェクトとの一体感や、エンドユーザーとの接点が希薄になるという傾向があると思います。
これまで社内SEとして働いて来られた方であれば、より大きなプロジェクトマネジメントを行いたいという意欲を持たれることもあるかもしれません。そうした場合には、大手のシステムインテグレーターに転職し、ノウハウを吸収する機会を増やすということもキャリアの可能性を広げるチャンスかもしれません。たとえ、開発から遠ざかっているSEであっても、仕事で関わりのある業界の知識や課題をきちんと把握していれば、業務の知識に精通しているということで採用枠もあります。どの求人企業も、ITの知識だけではなく、業界の知識や経験もあわせて持っている人を求めていると言えます。
転職を決断する前に
このように説明すると、だれにでも転職を勧めているように感じるかもしれませんが、そうではありません。転職を思いとどまった方が良い場合もあり、私もそのようにアドバイスさせていただくことも数多くあります。だれしも、会社勤めをしている方なら、転職について一度は考えたことがあると思いますが、そんなときに大切なのは、年収や人間関係など、現状の職場を不満に思うストレス源をリストアップし、冷静に考えてみることです。入社する前にはとても良く見えていた会社が、実際に入社してみると違っていたということはよくあることです。一時的な感情や理想論に惑わされることなく、冷静にリストアップすることで、自分が大切にしたいことや、絶対に譲れないことなどが明確になると思います。まずは、それが今の職場で実現できることかどうかを考えてください。
というのも、転職して実現しようと思っている希望は、実は今の職場で実現できることだったり、せっかく転職しても、そこでも実現できない希望だったりすることがよくあるからです。実際に、転職相談で来られた方にお会いすると、理由が曖昧な方も多くいらっしゃいます。お話を伺うことで、転職の方向性を整理できることもあるのですが、できることなら前もって自分で把握されていた方が良いと思います。
また、転職の検討では、自分の年齢もよく考える必要があります。年齢が上がるに従って、企業から求められるスキルも上がる傾向にあるからです。25、6歳までの第二新卒と呼ばれる世代では未経験者の採用もありますが、それ以上になると、同じ業界での経験など、何らかの条件が加わります。
30歳前後になると、IT業界では一般的に未経験の採用はほとんどなくなりますが、たとえばSEという職種の場合、アプリケーション分野からネットワークやサーバーなどの領域にスライドすることは可能です。30歳以上になると、求人もそのほとんどが同一領域となります。
今の会社では実現不可能だと判断したら転職する
現在抱えている問題や不満が、冷静に考えてみて現在の職場で解消することができるのであれば、転職する必要はありません。その問題や不満の解決に向けて行動することです。ここで何をすれば良いのか悩む人も多いでしょう。一番簡単なのは自分の上司にまずは相談することです。これをせずして不完全燃焼を起こしている人は意外と多いように感じます。最近では、自社の離職率を意識する企業も増えてきましたし、部下の対応をきちんとするように経営者から強く求められている上司も増えているようです。まずは上司とコミュニケーションを取り、話をしてみることが原点でしょう。
大企業の場合だと、人事担当に直接掛け合ったりする方も多いようですが、解決につながらないケースも少なくありません。現場の問題は現場で解決する方が早いのです。上司に対しては、自分がどのような思いを持っていて、目指すのはどこか、それに対する現状やギャップなどを伝え、「ここまで責任を果たしたら私の希望も検討してほしい」などと相談すれば、建設的な話になるはずです。上司に相談する際にも、自分の考えることを明確にしておくことが大切です。
そして、現状の職場では絶対に解決できない問題だとわかったときには、転職を決断すべでしょう。しかし、転職はそう簡単にはいきません。働きながらの転職活動や、転職先の選定、経歴書の書き方、給与など条件面での交渉など、なかなか思うに任せないこともあります。後編ではこうした転職活動の上手な進め方についてお話ししたいと思います。
(2007年1月16日掲載)
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