第16回
[後編]IT英語のステップアップ術 ~効果的な英語習得方法
株式会社エイブス 代表取締役 阿部 淳一 氏

株式会社エイブス
代表取締役 阿部 淳一 氏
業種や職種によって必要とされる英語力は異なりますが、英語力も技術者のスキルの1つとして考えられるようになりつつあります。このため、社内でのキャリアアップや転職時にも、基本的な技術力と同じ重要度で英語力が求められることも多いようです。「IT英語のステップアップ術」後編となる今回は、IT業界で必要とされる英語力をどのように身につけていけばよいのか、前編に引き続き、株式会社エイブス代表取締役阿部淳一氏にお話を伺いました。
読解力を鍛える
海外との交渉がない仕事では、英文メールのやりとりや英会話の機会もほとんどないと思います。しかし、技術的な最新動向を知っておくためにも、英文は読めるようにしておきたいものです。一般的に、契約書などビジネス全般で使用する英語はビジネス英語と言われ、技術的な内容を含んだ英語は技術英語と言われます。IT系の仕事では、技術的な内容を解説するマニュアルやWebサイトなどの英文を目にすることは多いでしょうから、仕事に役立つ英語力を身につけるにも、ビジネス英語のほかに技術文書を読む力、技術英語としての読む力が必要となります。
まずは技術英語を読むということがどのようなものか、以下に簡単なサンプルをあげますので、日本語に訳してみてください。

主語は「This system (このシステム) 」で動詞は「allow」、目的語は「high speed data transmission (高速データ通信) 」ですので、「このシステムは電気的変動や雑音に影響されることなく、高速データ伝送を許します」と和訳されたかもしれません。ここで気をつけたいのが、「allow」の訳で、物や事が主語の場合は、「許す」ではなく、「できる」と訳します。「allow」は技術英語でよく出てくる動詞なので覚えておきましょう。正しい訳は「このシステムでは、電気的変動や雑音に影響されることなく、高速データ伝送ができます」となります。最初の訳でも大意は伝わりますが、訳文を比較するとニュアンスが違うことに気づくと思います。
読む力を培うには、基本的な英語能力だけでなく、技術英語が読めるように、IT関係のボキャブラリーを増やすことも大切です。IT用語の場合は、英語がそのまま日本語で使用されることも多く、ソフトウエアに関するマニュアルであっても、その前提知識があれば、小説とは違い、なんとなく内容を把握できるものです。ですから、英語の勉強だけに偏らず、雑誌やWebサイトなどから技術的な知識を得ておくことが大切でしょう。
次にITを使って効率よく英文を読むコツについてお話ししましょう。最近では、翻訳ソフトやマウスカーソルを載せると自動的に日本語を表示するソフト、英文を翻訳してくれるWebサイトなど、翻訳環境も充実しています。昔のように重い辞書をいちいち引かなくても簡単に日本語の意味がわかるので、大いに活用してください。ただ、ソフトウエアによる翻訳 (機械翻訳) は構文解析や訳語の選択を誤ることが多く、誤訳が生じる可能性があります。たとえば文章中に「and」が複数あったときに、どこまで文章が続いているのかの判断ミスで、間違った翻訳結果を表示することもあります。現状では、機械翻訳は文章の大意をつかむために利用することをおすすめします。
書く力はメールでは必須
英語を読むことの次に必要となるのは,英文メールなどを書く能力です。海外とのコミュニケーションには、メールが利用されることが多いと思います。お互いの時差を考えずにやりとりできるのがメリットですが、ほかにも意外な利点があります。それは、電話などでのリアルタイムな交渉では、英語に不慣れな日本人は、どうしても会話のスピードや正確さ、あるいは饒舌さで不利になり交渉そのものに悪い影響を与える傾向があります。しかしメールを使えば、自分の言いたいことを論理的に伝えられます。特に記録が残るため、お互いの意思の確認とこれまでの経緯を明確化することが期待でき、異文化のコミュニケーション手段として即時性のある優れたツールではないでしょうか。
こうした理由もあってか、海外とのやりとりではメールが頻繁に利用されています。大切なことは、相手に誤解されない英文でメールすることですが、簡単な例題を出しますので、英語に訳してみてください。

簡単な英訳なので、すんなり書けたことだと思います。基本的なことですが、キーボードやマウスは2個以上の場合は複数形にしなくてはなりません。ここで気をつけたいのが、マウスの意味である「mouse」の複数形です。知識のある人は「mouse+s」とせずに、「mice」と書いたことでしょう。しかし、マウスを日本語でネズミと呼ばないように、英語にも区別があります。マウスはもともとネズミという意味ですが、ネズミの意味での複数形は「mice」、マウスの意味での複数形は「mouses」が一般的に用いられています。このため、解答例は「Please send us two keyboards and two mouses.」になります。ネズミを送られることのないように、気をつけたいですね。
最近ではメールでのコミュニケーションが増えてきたこともあり、企業が講師を会社に呼び、技術英語の読み方や書き方についてのセミナーを開くことも増えているようです。もし、身の回りにそうしたチャンスがあれば、ぜひ参加されることをおすすめします。
技術者の英語勉強法
次に、英語を勉強するコツについてお話ししたいと思います。大切なのは、夢に日付を入れるということです。つまり計画を立てることです。ただ漠然と英語力を身につけたいと思っていてもそれは夢でしかありません。「来年の3月までに英語でRFP (提案依頼書) を書けるようにしよう」というように具体的な目標を立て、現在からその目標までの間にマイルストーンをいくつか設定し、一つずつ実現していくことが大切です。仕事で英語が必要となれば、どうしても勉強しなくてはならなくなるので、目標はなるべく仕事と関係のあるものにしておくことも大切です。

目標を設定したら、実際に勉強を始めてください。まずはたくさんの英語に触れることです。小説や新聞、雑誌などを読んでもよいですし、Webサイトなどを活用してもよいと思います。さらに仕事の分野に関する技術英語に触れることも大切です。たとえば、米国で開催されたIT関連イベントのニュース速報を読んだり、IEEEやオープンソースプロジェクトのWebサイトにあるドキュメントを読んだりするとよいでしょう。
また、独学でもよいですが、勉強方法がわからないという人であれば、最近では、技術英語を教える語学学校もありますので、通ってみるのもよいと思います。学校を選ぶときには、いくつか留意することがあります。まずは、学んだことをすぐに活用できるように、現在自分が行っている、または将来行いたい実務と関係のある教材を使用しているかどうかを確認しましょう。たとえばソフトウエアの開発を依頼したり、その進捗を確認するメールを海外に送る必要があるなら、そうした内容の教材があるにこしたことはありません。また、どのような講師がいるかについても確認しておきましょう。技術英語には、英語力だけでなく技術力も必要となりますので、技術的なことがわからない講師に教わったとしても効果が得られないからです。ほかには、少数制かどうかもポイントです。たとえよい教材、講師がそろっていたとしても、大教室では講師が生徒一人あたりに割ける時間も少ないですし、質問もしづらい状況であるかもしれないからです。
英語を学ぶ環境は、一昔前に比べると、格段に整備されつつあります。これから英語を本格的に学ぼうという人は、学校や研修制度、ITを使いこなしてキャリアアップにつなげてほしいと思います。
編集後記
国際化するビジネスの現場で英語力の重要度は高まっており、IT業界では、最新情報を得るにも、メールでの交渉などでも英語が必要とされています。そうした中で、いわゆるビジネス英語だけでなく、技術英語 (IT英語) をしっかり身につけることができれば、技術者としてのキャリアアップにもつながり、新しい可能性も開けていくのではないでしょうか。
(2007年4月25日掲載)
- ※ 掲載日以降、最新情報ではない場合があります。あらかじめご了承ください。




