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第27回

[後編]服部幸應の“食育”のススメ ~食事バランスの改善

学校法人服部学園理事長 服部栄養専門学校校長 医学博士 服部 幸應 氏

写真: 学校法人服部学園理事長 服部栄養専門学校校長 医学博士 服部 幸應 氏

学校法人服部学園理事長
服部栄養専門学校校長
医学博士
服部 幸應 氏

私たちが健全な食生活を送るには、食品の安全性や食事のバランスなどの基礎知識を得る必要があります。「食育基本法」では、特にこれから成長する子どもに対して必要なことが定められていますが、私たち大人が毎日の食事などで気をつけることはどんなことなのでしょうか。「服部幸應の“食育”のススメ」後編となる今回は、“食育”について講演や執筆など幅広い活動をされている服部幸應氏に、食事の取りかたやバランスなどについて、前回に引き続きお話を伺います。

朝食の欠食による弊害

“食育”の3つの大きな柱のうち、「しつけ」は主に子どもに対するものでした。子どもに対して「しつけ」は有効ですが、大人になってからでは遅く、そう簡単には食習慣を変えることはできません。大人の場合は、論理的に理解するとわかりやすいと思いますので、実験など科学的なデータに基づきながら、大人の食についてお話ししたいと思います。

最近では、朝食を食べない子どもたちが増えていますが、これは彼らの親が食べないことや、遅くまで起きているために朝ぎりぎりまで起きられないこともその原因です。社会人の場合であっても、夜遅くまで働いて疲れているので、朝はぎりぎりまで寝ていたいという理由もあるかもしれませんが、朝食の欠食は仕事にも悪影響を与えます。夜に食べたものはグリコーゲンとして肝臓や筋肉に備蓄され、ブドウ糖となって血液に溶け、エネルギー源となります。体内に蓄積できるグリコーゲンの量は約60グラムで、人間が夜寝ているときは、1時間に5グラム程度を消費し、朝までに40グラム使用することになります。朝食を欠食した場合は、残りの20グラムを昼食までに使用することになりますが、通勤で10グラム程度を消費するため、仕事を始めるころには残りの10グラムしか残っていないことになります。仕事を始めて1時間もすると、エネルギー源は枯渇してしまいます。脳にブドウ糖 (脳のエネルギー) が行き渡らないので、集中力が無くなり、仕事の効率が悪くなったり、ミスをすることも多くなってしまいます。また子どもの場合は、大人より代謝率が高いので、もっと早くエネルギーが欠乏してしまうのです。

図: 朝食を欠食すると脳が働かなくなる

グリコーゲンが枯渇した場合でも、体を動かすことは可能です。それは、体に蓄えられた中性脂肪がエネルギーとして使用されるためです。中性脂肪を使うのだったらダイエットにもなるのでよいのではないか、と思われるかもしれませんが、中性脂肪は身体を動かすためのエネルギーにはなりますが、脳が必要とするブドウ糖にはなりません。体は動かせても、脳が動かないという状態になってしまうのです。ですから、たとえどんなに忙しくても、朝食は必ず取っていただきたいと思います。最近では、簡単に栄養補給のできる食品も販売されていますので、何も食べないよりは、そうした食品を取ることも有効でしょう。糖質が有効ですが、大量の砂糖の入ったものはできるだけ避けてください。そこで、基本的には、きちんとバランスのよい朝食を食べるようにしたほうがよいと思います。

気をつけたい食事バランス

また、日常の食事で気をつけるべきことは、栄養のバランスを考え、食べ過ぎないことですが、残飯も出すべきではありません。たとえば私が実践しているのは、外食時に残さないことです。残すと残飯として捨てられてしまうわけですが、食べ過ぎてしまうと、自分の体に悪影響を与えてしまいます。そこで、出された料理を見て全部を食べられそうにないとわかったら、自分が手を付ける前に、同席している人に分けるようにしています。

食事のバランスについては、ラットで行った実験結果を紹介したいと思います。ラットを100匹ずつA~Cの3つのグループに分け、与える食事を変える実験を行いました。Aのグループには玄米と野菜、Bのグループには、白米と野菜、魚、肉、最後のCのグループには食パンとマーガリン、ベーコン、ソーセージを与えました。Bグループの食事内容が一般的な日本食と言えるでしょう。

ラットの場合、人間の60歳にあたるのは2年7ヶ月くらいですが、実験ではラットが60歳になったときの状態を調べてみました。Aグループは、60歳になってもどれも元気で、3匹だけねんざしていた程度で、毛並みもつやつやしていました。Bグループでは、100匹中18匹が亡くなっていました。生きているマウスの3分の1は元気でしたが、次の3分の1が生活習慣病の予備軍、残りの3分の1が生活習慣病になっていました。そして最後のCグループでは、100匹中52匹が亡くなっていました。さらにその後1週間程度で25匹が亡くなりました。

図: 食事バランスを変えたマウスの実験結果

この実験結果から玄米と野菜が体によいのはわかるでしょうが、だからといってAばかりの食事をするわけにもいかないでしょう。私は職業柄、料理コンテストの審査員などをすることがありますが、そのときは、体重が2キロ増えるほど食べてしまうことがあります。また、時々ですが、焼き肉が食べたくなり、たくさん食べてしまうこともあります。そういうときには、その後しばらくはAのタイプの食事を取ることでバランスを保つようにしています。このように、食事の際には、今の自分はAなのかBなのかCなのかを思い浮かべて、食べるようにすればよいと思います。

「腹八分目に医者要らず」

次に、食べる量についての実験結果も紹介したいと思います。毎日好きなだけエサを食べられるマウスと、食べられる量を減らしたマウスを比較しました。好きなだけ食べられたマウスの寿命を基準にすると、エサの量を2割減らして腹八分目にしていたマウスは約1.4倍、3割減らした場合は約1.6倍、4割減らした場合は約1.8倍長生きしたのです。人間の場合、マウスと違って仕事などさまざまなストレスの要素が加わるので、食事を4割も減らすとイライラして健康に悪いと思いますが、2、3割食事を減らすのが好ましいと思います。食事の量を減らすと最初は苦しいですが、1ヶ月もたつと胃が小さくなるため、なんでもないようになってきます。

カロリー制限を行うと、なぜ寿命が延びるかは、体の中にある酵素とも関係してきます。食べ物を摂取すると、消化を助けるために、この酵素が消化酵素として使用されます。多く食べれば食べるほど、消化酵素として使用される割合が多くなるため、免疫力や治癒力を高める代謝酵素として使われる割合が少なくなってきます。逆に、食事を取りすぎない環境では、代謝酵素として使われる割合が高まるため、免疫力が高まり病気などになりにくくなる、というわけです。

ほかにも食や健康に関する科学的な研究が進んだことで、健康改善に有効な物質などがわかってきました。たとえば女性の更年期障害には、大豆イソフラボンが効果的と言われていますが、それには大豆イソフラボンをエクオールという物質に変えるラクトコッカス20-90株という乳酸菌を体内に持っていなければなりません。日本人の30%はその乳酸菌を体内に持っていないため、大豆イソフラボンをエクオールに分解することができなかったのですが、エクオールのサプリメントなどを摂取すると、更年期障害を軽くすることもわかってきました。

今後、皆さんが食生活について考える際には、私も作成に関わった農林水産省の「食事バランスガイド」なども参考にしていただくとよいと思います。せっかくのこの機会ですから、“食育”を理解して、健康で安心、安全な食生活を送っていただきたいですね。

図: 食事バランスガイド

編集後記

親の言うことを聞かない子どもや、自分の子どもばかりをかわいがり、理不尽な要求を学校などに行うモンスター・ペアレンツ、またニートと呼ばれる学校にも行かず、働くこともしない若者、そうした人たちが増えてしまう原因には、親子の食卓でのコミュニケーション不足がありました。“食育”の大切さを私たち大人が認識し、家庭や学校で子どもに教え、そして次の世代に継承し続けていくことが、健全な社会、経済の発展の源となることを気づかせていただきました。

(2008年3月19日掲載)

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注) 出典: 日経コミュニケーション2008年9月1日号ブロードバンド/モバイル/NGN時代の企業ネットワーク実態調査「広域イーサネット部門」で「KDDI Powered Ethernet」が7年連続第1位



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