第4回
[後編]中小企業によるITの活用 ~適切な通信サービスの選択とメリット
株式会社サイエント ビジネスアソシエイツ 代表取締役社長 中小企業診断士 横山 彰吾 氏

株式会社サイエント
ビジネスアソシエイツ
代表取締役社長
中小企業診断士
横山 彰吾 氏
かつて企業の本支店間を接続していた専用線は、現在ではVPN(※1)ベースへと移りつつあります。ネットワークの利用方法が、拠点間を接続する「線」から、拠点間や取引先などを結ぶ「網」へと、変化しているのです。しかし、回線サービスが多様化するにつれ、どのような通信サービスを選択すればよいかという選択も難しくなってきました。「中小企業によるITの活用」の後編となる今回は、前回に引き続き、株式会社サイエントビジネスアソシエイツ、代表取締役社長、中小企業診断士の横山彰吾氏に、適切な通信サービスの選択とメリットについて伺いました。
適切な通信サービス選択でコスト削減
前回は、今後の中小企業の業務システムについて説明しましたが、今回は、通信サービスやネットワークについてお話ししたいと思います。適切な通信サービスの選択はコスト削減につながります。たとえば、IP電話の導入です。30人程度の企業規模であれば、間違いなく、通信費削減の効果があると思います。音声とデータのネットワークが1つになることで、人事異動などの設定変更に関わるコストも大幅に削減することができます。
適切なネットワークの選択によって、電話以外のデータ通信にかかるコストも安くなります。現在、さまざまなネットワーク接続サービスがありますが、自社が必要とする速度や品質が確保できれば、必ずしも高価なサービスを選ぶ必要はありません。多少の遅延があっても構わなければ、専用のサービスを使わずに、インターネットを利用して通信費を安くしてもよいわけです。
「線」から「網」のネットワークへ
最近では、大企業でもほとんどが、従来の専用線から、通信事業者が提供するIP-VPN(※2)サービスやインターネットVPN(※3)サービスを利用するようになりました。これらのVPNの特長は、専用線で行われていた特定の拠点と特定の拠点とを結ぶポイント・ツー・ポイントの「線」としての使い方から、不特定の拠点を安全で柔軟に結ぶ「網」として利用できるになることにあります。これにより、新規の取引先や関係企業ともデータのやりとりが簡単に行えるなどのメリットが出てきます。
関連企業に出向するケースや、在宅勤務など、中小企業での就業形態も変わってきています。VPNを使うことで、スタッフが業務システムにアクセスし、日報を書くことも可能になりますし、経営者としても、スタッフが遠くにいても安心できるでしょう。また、テレビ会議などのシステムも比較的容易に導入することができるため、出張にかかっていたコストや時間を削減することも可能になります。

- ※1 VPN(Virtual Private Network)とは、暗号化技術などによって、共有通信回線を利用して専用線のような安全で信頼性の高い私設網を安価に実現する技術またはサービス。
- ※2 IP-VPNとは、通信事業者の閉域IPネットワーク網を通信回線に利用するVPNネットワーク。
- ※3 インターネットVPN(Internet VPN)とは、通信回線にインターネット公衆網を利用するVPNネットワーク。
どのような通信サービスを選べばよいのか
企業がどのような通信サービスを選べばよいかというのは、なかなかに難しいことです。それは、企業の業務内容や規模、今後の事業計画にもよって異なってくるからです。また、ネットワークとサーバーなどのシステムは、密接な関係にあります。とにかく導入・運用コストを安くしようとすると、通信サービスやシステムなど、バラバラに選ぶ必要があり、手間がかかってしまいます。一方、ネットワークやシステムの構築会社に、ネットワークからサーバーまでを一括して頼むこともできます。その場合、手間がかからない反面、コストがかかってしまいます。
私自身、通信サービスの選定は、社内の詳しいスタッフに任せています。社内に詳しい人がいなければ、何かの会合の折に同業他社の知り合いに聞いたり、Webサイトで調べたりすることも有効です。まずは、自社と同じ規模、業種の企業がどのような通信サービスを使用しているのかを調べるとよいと思います。
経営者と通信事業者に求めること
中小企業のこれまでのITやネットワークの導入は、米国のようにトップダウン式で一方的に進められることが多かったと言えます。しかし、無理に使用させるのではなく、現場側からの「あると便利なもの」としてのニーズに応え、ITを活用していくという姿勢が、経営者には求められるでしょう。
一方、通信事業者への提案としては、ネットワーク接続サービスの提供だけでなく、サーバーや通信機器の設定、メンテナンスなどを、人手不足と資金不足に悩む多くの中小企業に安価にサポートしてもらいたいと思います。また、自社に最適な通信サービスがどんなものかを把握できていない企業も多いので、各企業の固有のニーズを受け止め、どのような通信サービスが適切かを把握し、提案・提供してほしいと思います。
編集後記
中小企業におけるITの活用について、独自の発想で解決策を提示する横山氏のお話はいかがでしたか?
人的、資金的な制約がある中で、本当に役に立つシステムやネットワークをどう作り上げていくか?という課題には、ITと利用者との関係を見直す基本的なテーマが含まれていたように思います。そして、コンピューターやネットワークの今後の進化が、より便利で安価な情報通信環境の実現に結びつくものであることに期待したいと思います。
(2006年5月16日掲載)
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