第14回
[前編]IT時代の健康促進術 ~いつでもできる運動のコツ
日常ながら運動推進協会 ダンベル健康体操指導協会 アロマフィットネス協会 会長 萱沼 文子 氏

日常ながら運動推進協会
ダンベル健康体操指導協会
アロマフィットネス協会
会長 萱沼 文子 氏
私たちの生活環境は、技術の進歩による機械化や自動化によって、より便利に、より快適なものへと進化してきました。しかし、便利になればなるほど、体を動かすことが少なくなり、生活習慣病などの疾患を招きやすい、健康にとってはあまり歓迎できない状況を作ってきたという側面もあるようです。今回は、エアロビクス、ストレッチ、ダンベル健康体操などのパイオニアとして、テレビや雑誌、講習会などで活躍されているカリスマ・インストラクターの萱沼文子氏に、現代社会で健康を保ち生活を充実させるための考え方や、その方法についてお話を伺いました。
だれでも簡単にできる運動の必要性
私は現在、「日常ながら運動推進協会」や「ダンベル健康体操指導協会」、「アロマフィットネス協会」といった、健康を推進する団体の会長として、健康づくりの普及に携わっています。そのきっかけは、高校時代に陸上競技でケガをして、体を壊してしまったことにさかのぼります。大好きなスポーツで体を壊してしまったことで、競いあうためのスポーツではなく、健康のためのスポーツへの関心が高まったのです。そこで、社会体育 (注) を学ぼうと決心し、大学では運動生理学を専攻しました。そして、当時の学生は、卒業後、競技スポーツの指導者を目指して教員などになることが多かったのですが、社会体育に関心をもっていた私は別の道を模索することになりました。
この頃、大学の先輩の紹介で、日本に初めて米国のフィットネスクラブのシステムやエアロビクスを紹介していた長野茂氏と出会うことができました。長野氏を通じてフィットネスクラブやエアロビクスに非常に興味をもつことになり、大学卒業後、米国へわたってエアロビクスを本格的に学びインストラクターになったのです。長野氏とは、その後も健康のための運動の普及に共に取り組んでいます。
10年以上も普及に努めた成果もあって、エアロビクスもフィットネスクラブも広く知られるようになりました。しかし、フィットネスクラブに通い続けているフィットネス人口は、日本人全体のわずか3%に過ぎないという統計もあるなど、だれでも簡単にできるというわけではないという限界も見えてきました。そこで、エアロビクスの中でライトウェイトとして使用していた軽いダンベルを利用して、子供にもお年寄りにも簡単に家でもできる「ダンベル健康体操」や、不眠や体調不良など、運動ができない状態でも心身をリラックスさせることに効果のある「アロマフィットネス」、そして、日常生活の中で無理なく運動をする「日常ながら運動」などの普及に取り組むようになりました。
- 注) 生涯スポーツやスポーツリクリエーションなど、社会生活を行う上の健康な体と心の育成を目的とした体育活動のこと。

運動は人間の本能ではない
フィットネス先進国と思われていたアメリカでは、今、肥満が大きな問題になっています。一旦はフィットネスクラブに入会しても、結局長続きせずに通わなくなってしまうということが起きています。私たち日本でも、ほぼ同じ状況だと思います。フィットネスクラブに限らず、なんらかのきっけかで運動の必要性を感じ、ジョギングやテニスをはじめたり、運動器具を購入してみたりという人は多いと思いますが、しかし、なかなか長続きできないようです。なぜ、長続きしないのでしょうか?
それは、運動は人間の本能ではないからなのです。人間の欲求には、食欲や睡眠欲などがありますが、「運動欲」というものはないのです。本能からすれば、運動するよりも、寝ていたいと思うのが当然で、よほど強い意志や理由がないと、続かないのが当たり前なのです。そして、厄介なことに、人間の体は、運動しないでいるとどんどん弱くなってしまいます。寝て起きて、食べて、仕事でパソコンと向かい合い、疲れて、帰ってからも夜遅くまでパソコンに向かい、そして、休みの日には、何もせずゴロゴロとして…、という生活を繰り返すうちに、体も心も疲弊して弱っていきます。デスクワークが中心の人は、体を使う仕事の人に比べ、極端に痩せていたり、太っているなどの傾向があります。
本来、人間は、獲物を狩ったり大地を耕したり、生活をするために体を動かしていました。狩りの方法を頭で考え、人と協力しあい、走って獲物を追うなど、心身をバランスよく使っていたのです。しかし、現代の職業は細分化され、体の一部分しか使わない労働に変化しました。また、スーパーやコンビニにいけば、食べ物も飲み物もいつでも簡単に手に入りますし、遠くにいくのにもクルマや電車に乗って座っていれば目的地に着きます。エスカレーターやエレベーターのおかげで、階段を上ることもほとんどありません。ときには、“歩く歩道”などというものまであって、歩くこともますます減っています。こうした、慢性的な運動不足と、体の一部分しか使わない不自然な労働、昼夜の別のない不規則な生活が続けられれば、なんらかの不具合が出てきても不思議ではありません。
現代人が抱える頭痛や肩こり、腰痛、腹痛といった悩みは、この不具合のサインだと言えます。そのまま放っておくと、自律神経に悪影響が出てきたり、精神面で問題が起きるなどして、仕事ができない体になってしまうこともあります。
まずは自分の健康状態をチェック
うならないためには、仕事の合間に伸びをして体をほぐしたり、適度な運動を心がけるべきなのですが、まずは、自分の健康状態をチェックしてみましょう。図のように、片手を上から、反対側の片手を下から後ろにゆっくり回して、両手が触れるか試してください。きっと、「以前はできたのに」と思う人もいることと思います。できなかったという人は、片手をゆっくり後ろに回して、反対側の耳を触ってみましょう。もし、触ることができたら、手を伸ばして、ほおを触ります。ほおを触れた人は、さらに手を伸ばして鼻を触ってみましょう。いずれの場合も、体に負担をかけないようにゆっくりと行うようにしてください。
肩が上がらずこれらの運動ができなかった、というような場合は、体が衰えていると考えてください。きっと体の他の部分も同様に衰え、何かの問題を抱えているはずです。


日常ながら運動の大切さ日常ながら運動の大切さ
先に述べたように、本来人間は、日常生活を送るために、自然と体を動かしていました。移動のために歩いたり、汗を流して労働したりすることが、体にとってちょうどよい運動になっていたのです。しかし、だからといって、現代の便利な生活を捨て、昔のような不便な生活には戻ることはできません。そこで、私たちは、楽をしないために知恵を使う必要が出てきました。現状の生活を変えずに、日常生活を通じて十分な運動を行えるような工夫が必要になるわけです。それが「日常ながら運動」なのです。
私は、もともと太りやすい体質で、エアロビクスのインストラクターをして体を動かしたり、食事制限をすることで体重をキープしていました。しかし、「日常ながら運動」を取り入れてからは、好きなものを食べても理想的な体重や体形をキープしていますし、40代で初産し、3児に恵まれることもできました。後半では、私がこれまでに実践してきた「日常ながら運動」のうち、仕事場でも簡単にできるものをご紹介しましょう。
(2007年2月13日掲載)
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