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第8回

[前編]勝てるプレゼン術 ~準備編

アーサー・リリーコンサルティング代表取締役 デジタルハリウッド大学助教授 武蔵野大学非常勤講師 長田 有喜 氏

写真: 長田 有喜 氏

アーサー・リリーコンサルティング代表取締役
デジタルハリウッド大学助教授
武蔵野大学非常勤講師
長田 有喜 氏

ビジネスでは、企画・営業・技術などさまざまな職種でプレゼンテーションの機会があります。プレゼンでは、製品や企画を単に説明するだけでなく、内容を的確かつ効果的に伝え、相手を説得する必要もありますが、なかなか思うようにいかないのが現実ではないでしょうか。今回は、「ビジネスで成功するプレゼンテーション講座」を手がけるアーサー・リリーコンサルティング代表取締役の長田有喜氏に、“勝てるプレゼン術”の秘訣についてお話しいただきました。

日米両国での経験を活かしたプレゼン手法

私は現在、プレゼンに関する講座を開いていますが、そのきっかけは、米国への留学にさかのぼります。大学ではジャーナリズムとマーケティングを専攻しましたが、クラスの中でディベートやプレゼンを行うことは日常的で、クラスメートの演出力、説得力の上手さに驚きの連続でした。“先生の話を静かに聞くのがよい子”という教育を受けてきた日本人の私は、小学生からプレゼンの訓練を受けているアメリカ人には到底かなわず、初めは先生に直接指導していただき、必死でした。

米国のテレビ局でリポーターをしていたときは、いかにカメラの向こうにいる視聴者に情報を伝えられるか、という点に注力して話す経験を積みました。その後、日本に帰国してからは、プロダクトマーケティングや広告、PRの仕事をし、職務上、ビジネスプレゼンをする機会に恵まれました。今度はカメラを通してではなく生で相手に伝えていく、という技術が必要になったのです。

米国系ベンチャー企業の日本代表になったとき、投資を集めるためにビジネスモデルのプレゼンに奔走し、相手を説得する難しさを知りました。億単位の資金を調達するには相当の説得力と妥当性を理解してもらわなくてはならないわけで、「勝てるビジネスプレゼンのテクニック」はそのとき培われました。

現在、企業研修や大学での講座で講師をする立場になり、知識はあるのに、相手に伝える術を知らず損をしていると感じる方が多いことに気づき、講座を開講し「成功するビジネスプレゼン術」を指導することにしたわけです。

プレゼンを構成する3つのフェーズ

私の提唱するプレゼン手法は、論理的な構成を重視しつつ、聞き手の心をつかむために、米国のMBAで教えられたテクニックを日本のビジネス文化に融合させたものです。まずプレゼンには、3つのフェーズがあり、それをすべて戦略的に組み立てていくことになります。それは「1.シナリオ(構成)」「2.ドキュメンテーション(文書作成)」「3.デリバリー(発表)」です。

1番目の「シナリオ」では、プレゼン全体の構成を練ります。導入部分の内容から始まり、どこにクライマックスを持っていくか、最後はどう締めくくるかといったストーリーの流れを決めるのです。次の「ドキュメンテーション」は、文字通り作成したシナリオをスライドに落とし込みます。ここで初めてプレゼンソフトを立ち上げ、分かりやすさを考慮しながらスライドや配布物を制作するのです。そして最後の「デリバリー」は、発表するというフェーズです。

この3つのフェーズがすべてうまくいって、初めて訴求力のあるプレゼンになります。一つでも欠陥があれば、成功率は上がらないでしょう。特に、土台となるシナリオ作りを疎かにしてはいけません。いきなりプレゼンソフトでスライド作りから始めてしまうと、目の前のスライドを完成することに集中してしまい、全体の流れが乱れて、戦略的でなくなりがちです。全体の構成図を描いたのちに、それをスライドに落とし込む、というルールを徹底した方が成功率は高まるでしょう。

それでは、これから各フェーズにおいて行うべきことを詳しく説明していきしょう。

プレゼンを構成する3つのフェーズ

「シナリオ」作りでは3つのPを分析する

実際に構成を考える前にはまず、自分に与えられた「時間」を頭に入れておきます。クライアントから許されたプレゼン時間が「15分」と「1時間」では、提供する情報量に大きな差があるからです。仮に製品紹介に1時間もらえたとすれば、商品の各仕様や市場動向などを、しっかり把握しておく必要があります。反対に15分しかなければ、各情報にプライオリティーをつけて整理し、優先度の高い情報だけを伝えるよう心がけてください。

時間と情報量のバランスが決まれば、次にプレゼンにまつわる各要素を「分析」する作業へと移ります。私は、自身の経験から「3つのP」を分析することがプレゼンを成功させる鍵だと考えています。

1つめのPは「Purpose(目的)」です。自分のプレゼンが終わったときには、どのような結果が出ればよいのか、を確認します。そして、もうひとつ重要なことは、相手の目的を探る、ということです。今回プレゼンのチャンスを与えてくれたということは、こちらの話を聞いてくれる気があるということです。話を聞こうとするからには、そこに何かしらの目的が必ず存在します。ですから、相手の視点で考えて、どんな情報を得たいのか、どうしたいと思っているのかを入念に分析する必要があるわけです。

2つめは「People(人間)」です。プレゼンの相手が誰かということです。会社という組織にはさまざまな職位があり、それによってプレゼンの内容も変える必要があります。たとえば、あなたがシステム導入をすすめる担当者だったとしましょう。多くの場合、初回ミーティングでのプレゼン聴衆者は、システムを実際に動かす現場レベルの方です。そして、二回目になるとマネージャーレベル(中間管理職)の方、三回目は経営サイドの方となったとしましょう。そのとき、同じシステムの紹介であっても、話のウェイトを置く箇所を変え、いかにそのシステムの導入がメリットをもたらすか、をアピールする必要があります。

最初に会う現場レベルの方は、新システムを導入することで、“自分はどのような操作をしなければいけないのか”を気にするでしょう。“そのシステムで自分の仕事がどう変化するのか”という点に注目しているのです。ところが、中間管理職の人はどうでしょうか。この役職の人にとっては、“システムを稼働するにあたり人力がどれくらいかかるのか”“ワークフローはどう変わるのか”“さらにチーム全体でどれくらい効率が上がるか”が懸案事項になるのではないでしょうか。

そして、経営者の方が重視するのが「コスト」です。導入費用はもちろんのこと、“ランニングコストはいくらかかるか”“何年後に消却できるのか”そして、“システム導入により会社全体としてどのくらいのメリットがあるのか”というように物事をより長いスパンで捉えるかもしれません。

このように、相手の職位や立場によって着目する部分はまったく異なります。それが分かっていながら、毎回、判で押したようなプレゼンをしてはいけません。相手のニーズを的確に把握し、それに応じてどのポイントを膨らませるべきか、事前に察知しておく必要があるのです。

そして3つめのPは「Place(場所)」です。どんな場所で発表するかによって、準備するツールの種類も異なります。小人数のミーティングで小さい会議室を使うなら、プロジェクターではなく、紙の配布物の方が分かりやすいかもしれません。逆に、大会場なら、スライドデータや、ポインターなどを準備するべきでしょう。客先でプレゼンをするなら、アポ取りの際に、場所の広さや利用できる設備をそれとなく聞いておくとよいでしょう。その場所に応じて、一番伝えやすいツールを選択することを心がけましょう。

場所に関するありがちな失敗としては、ひとつのツールに頼りすぎることがあります。たとえば、ノートPCでインターネットを閲覧しながら説明しようとしたところ、地下の会議室でモバイル接続もLAN接続も使える環境ではなかった、というケースです。このとき、事前にネットが使えるかを確認することはもちろんのこと、予備対策としてデータをダウンロードしておくことやプリントアウト(印刷物)など、代用できる予備ツールを用意しておくことも大切です。

図: シナリオ作りで押さえるポイント

「ドキュメンテーション」で押さえるべきポイント

「シナリオ」をまとめ終えたら、次は2番目のフェーズ「ドキュメンテーション」に移ります。プレゼンソフトの操作スキルはそれほど関係ありません。より重要なのはシナリオに基づいてそのメッセージを簡潔に、正確に伝えることです。

技術系の職業の方が陥りやすい罠のひとつに、知っていることを盛り込みすぎることがあります。情報を多く持つあまり、詳細にこだわってしまうのです。そのため、焦点がぼやけて、本当に伝えたい主旨がうまく伝わらないことがあります。さらに悪いことに、文章を詰め込みすぎた結果、文字のサイズが小さくなり、プレゼンの出席者は視力検査を受けているような錯覚をおぼえることでしょう。

ビジネスプレゼンは情報量や知識量を競う場ではありません。相手に「YES」と言わせることが大切なのです。そのためには、エッセンスだけを抽出して、スライドは「1ページ、1メッセージの法則」を心がけるようにしてください。各ページ(スライド)で一番言いたかったメッセージを、枠で囲んだり、アンダーラインを引いたりすることで、相手に強く印象づけることができます。詳細を長々と記述するよりも、大きな効果を得られるはずです。

後編では、これまでの内容をふまえ、3番目の「デリバリー (発表)」についてお話しさせていただきます。さらに、プレゼンを成功に導くポイントにもいくつか触れていきたいと思います。

(2006年8月22日掲載)

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注) 出典: 日経コミュニケーション2008年9月1日号ブロードバンド/モバイル/NGN時代の企業ネットワーク実態調査「広域イーサネット部門」で「KDDI Powered Ethernet」が7年連続第1位



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