第6回
[後編]ワールドカップとネットワークの熱い関係
~ワールドカップを支えるネットワーク
株式会社ベースボール・マガジン社 週刊サッカーマガジン編集長 平澤 大輔 氏

株式会社ベースボール・マガジン社
週刊サッカーマガジン編集長
平澤 大輔 氏
IT化の時流にもれることなくスポーツの世界にも、デジタル化、ネットワーク化の波が押し寄せています。それに伴い、選手やファン、主催者を取り巻く環境も大きく変化しています。特に、世界規模で催されるスポーツイベントの運営では、ネットワークを利用したサービスの提供、報道向けのシステム構築が不可欠になっています。今回は、株式会社ベースボール・マガジン社「週刊サッカーマガジン」編集長の平澤大輔氏に、ワールドカップ2006ドイツ大会における、ネットワーク利用の現状について伺いました。
ネットワーク技術が大会運営をアシスト
決勝トーナメントを迎え、さらに盛り上がりを見せるワールドカップですが、大会を支えているのは、サポーターが送る声援だけではありません。インターネットに代表されるネットワークの技術も、大会の運営・活動をアシストしています。ネットワークを使用したサービスのなかには、現地で観戦するサポーターや、日本国内で視聴するファンが受けられるものも数多くあります。
まずは、ワールドカップの運営母体、FIFA (Federation Internationale de Football Association) が展開する公式サイトのサービスを始め、提携サイトによる試合の動画配信や、ユーザー参加型のコミュニティサイト、メディアのWeb速報の現状などをご紹介しましょう。さらに、そうしたサービスを裏側から支えるネットワークについても、触れたいと思います。
FIFA.COMはサッカー情報の宝庫
ワールドカップを思う存分堪能したいなら、試合の観戦前に、参加選手やチームの情報をまず頭に入れておくことです。選手の経歴、プレースタイル、過去のコメントなどをチェックしておけば、選手の評価や試合の見方もがらりと変わるでしょう。そのための情報源としてサッカー専門誌は外せませんが、ニュースソースとしては、Webサイトも便利です。なかでも特に、FIFAの公式サイトは、ワールドカップの歴史やインタビュー記事、参加選手のプロフィールなど、世界のサッカー情報を一覧できます。
また公式サイトは、情報配信の拠点としてだけではなく、チケットサービスの窓口としての役割も担っています。チケット販売に関しては、過去の大会で何度かトラブルが発生しています。販売価格の数倍でチケットが流通した98年のフランス大会や予約した入場券が試合直前まで届かなかった2002年の日韓大会などは、マスコミにも大きく取り上げられました。これらのトラブルは、いずれも、ネットワークや情報システムだけの問題ではありませんでした。今回の大会では、それらの外的な問題をクリアして、チケット販売システムの本来の有効性を実証してほしいと思います。
テレビ観戦以外の楽しみ方も登場
公式サイト以外にも、スポーツ専門サイトやポータルサイトが、独自のコンテンツを揃えて、多くのサッカーファンを取り込んでいます。大手のポータルサイトでは、特集を組んでレビュー記事を掲載するほか、Web限定のイベント、訪問者による選手評価のアンケートなどを企画しています。こうしたサイトには、ブログが設置されていることも多く、試合観戦のレビューや選手起用への不満などを投稿することができます。また、掲示板などのコミュニティサービスが設置されていれば、自宅で観戦しながら、好みの選手について語り合うこともできます。サッカー好きは、要するにサッカーを語るのが好きな人たちですから、同じ嗜好の人が集まるコミュニティサイトは、まさにうってつけのコミュニケーションメディアです。
試合の観戦方法も多様化し、自宅だけでなく、外出先でも観戦できるような機器が登場しています。たとえば、TVチューナー付きのノートPCや、ワンセグ携帯 (※1) なら、電車のなかや喫茶店など、場所を問わない視聴が可能になります。
ただし、今回のワールドカップの各試合は、時差の関係上、深夜に放送されることが多いため、こうした機器を利用して屋外で視聴する人はまれかもしれません。いずれにしても、ワールドカップのような大規模なスポーツイベントを機に、携帯端末や関連サービスが普及する可能性は十分考えられます。
- ※1 モバイル端末向け地上デジタル放送 (ワンセグ) のチューナーを内蔵した携帯電話。放送中に表示される文字コンテンツ (リンク) から、番組に連動した携帯サイトにアクセスすることができる
スタジアムに構築された専用ネットワーク
ワールドカップの楽しみは試合そのものだけではありません。各メディアから報道される速報、週刊サッカーマガジンのような専門誌のレビューで、試合を振り返る楽しみもあります。私たちは、試合のハイライトや選手のコメントはもちろん、ひとつのゴールが生まれた状況を多角的に分析した記事などを提供しています。
こうした速報やレビューは、試合の終了から、ほとんど間を置かずに配信されますが、その過程でもネットワークが活用されています。ワールドカップでは、94年のアメリカ大会から、事務局や開催国内に点在する各会場を結ぶ専用のネットワークが構築されるようになり、近年では、選手の身分照会を行うセキュリティシステムや、参加チームへのスケジュール通知などにも利用されています。このネットワークは、取材活動の拠点となる国際メディアセンター (IMC) にも直結しているため、私たち報道関係者もおおいに活用して、速報性に役立っています。たとえば、取材用のエリアで選手が発したコメントは各言語に翻訳され、IMCのイントラネット上に掲載されます。直接取材する機会のなかった報道関係者でも、ネットワーク経由で、コメントなどの情報を自由に入手できる仕組みです。
また、会場となるスタジアムにはすべて無線LANが網羅されており、ピッチ上で撮影された画像を、インターネット経由で自国の報道機関に送信できるようになっています。そのおかげで、報道関係者は撮影した写真を、ほぼリアルタイムで配信できるようになりました。海外で開催された大会の試合風景を、速報として視聴者に届けられるようになった背景には、こうしたネットワークの存在があるのです。
後編では、スポーツ報道とネットワークの関係について、国内メディアの動向を中心に解説したいと思います。
ワールド杯ドイツ大会 優勝チームはココだ!
週刊サッカーマガジン編集長の私が、ワールドカップの試合について語らないワケにはいきません。そこで、ワールドカップ決勝トーナメントの予想・展望などをコメントさせてもらいます。
まず、個人的には、今回のワールドカップは「攻撃サッカー復権」の大会になってくれれば! と思ってます。守備的なサッカーは合理的ではありますが、観るものにとってはやはりもの足りなさを感じます。ココだけの話、大会を運営するFIFAも、より飛びやすいボールを提供することで、実は攻撃サッカーを後押ししているくらいです。
また、強いチームが順当に勝ち上がってくれることも期待しています。前回の大会は、フランスやアルゼンチンといった強豪が一次リーグで敗れ去るなど、前半から波乱含みとなりました。これには、ガッカリしたファンも相当いたことでしょう。今回は、ブラジルのような強豪チームが力を発揮して勝ち続け、観客を楽しませる攻撃サッカーを展開してくれたら・・・これほどスッキリしたワールドカップはないでしょうね。
しかし、アマノジャクな私は、優勝チームをブラジルではなく「アルゼンチン」と予想させていただきます。彼らには、攻撃サッカーの真髄を見せて欲しいし、それができるチームですから! (6月1日のコメント)
(2006年6月27日掲載)
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