第27回
持ち主の好みと見ている番組を理解し、関連するウェブページを
携帯電話に表示する「パーソナルTVアシスタント」技術を開発
もっと知りたいと思った情報がケータイで見られる
テレビとインターネット、携帯電話の連携により、もっと便利で楽しく、広がりのある次世代のテレビ視聴スタイルが実現しようとしています。
例えば家族みんなで旅の情報番組を見ているとき、お酒が好きなお父さんの携帯電話には、番組で話題になった地酒に関するウェブ情報がお勧め情報として提供され、その中から選んだツイッター(※)でつぶやきあうことができます。グルメなお母さんの携帯電話にはネット通販サイトの情報が提供され、ご当地の名産品を購入することも可能。お子さんの携帯電話には番組で紹介されたテーマパーク関連の情報が提供され、アトラクションの話題で大いに盛り上がることもできるようになります。
このように見ているテレビ番組に関連した情報の中から視聴者一人ひとりの興味や嗜好にあったものを選んでお勧め情報を作成し、簡単なボタン操作で携帯電話の画面に表示できる「パーソナルTVアシスタント」技術を、KDDI研究所は2009年9月に開発しました。
- ※ ツイッター:短いつぶやきや写真を投稿し、ユーザー同士がつながりあうインターネットサービス。
■ 利用イメージ

テレビを見ていて「もっと知りたい」と思った興味・嗜好に関連した情報が、自分の携帯電話で見られます。
新しい視聴スタイルの実現で、暮らしをもっと楽しく
ここ数年で、テレビを見ながらパソコンや携帯電話を使い、番組の内容に関連するコンテンツをインターネットで探し出して見たり、チャットやツイッターで意見を交換して楽しむという、新しい視聴スタイルが広がりつつあります。ところが、ただキーワード検索しただけでは膨大な数の情報がヒットし、その中から本当に欲しい情報を探し出すのは至難のワザ。それを番組の進行に合わせて行うとなると、情報検索に慣れた人でも大変です。
KDDI研究所では、2006年ごろからテレビ番組の内容をリアルタイムに把握する研究を始め、2008年の秋にデジタル放送で流れる字幕情報から内容を理解し、関連する情報を扱ったウェブページを取得する「Webページ代行検索技術」を開発しました。この技術と、個人の番組視聴履歴を取得する技術を開発して融合できれば、番組に関連した多くの情報の中から視聴者一人ひとりの嗜好にあった情報が提供できます。「新しいテレビ視聴スタイルの実現で、毎日の暮らしをより楽しくしたい」という思いが、今回開発した「パーソナルTVアシスタント」を実現する大きな原動力になりました。
ケータイなら、視聴者にもテレビにも優しいシステムが実現できる
いつ、どのチャンネルを流していたかという情報は、いまのテレビやSTB(セットトップボックス)※からでも取得できます。あとは、その番組を誰が見ているのかが分かればいい。こうした考えから、個人の番組視聴履歴の取得については楽観視していました。ところが、テレビやSTBから個人の番組視聴履歴を取得するには、新たな認証システムなどが必要なうえ、視聴者にもログイン操作など、これまでにない手間や負担をかけてしまいます。しかもSTBは多くの契約者に無料で配布しなければならないため、コスト的には想像以上にシビアな製品でした。そのため開発は一旦停止となり、軌道修正を余儀なくされました。
さらにもうひとつ、「パーソナルTVアシスタント」実現の道をさえぎる課題がありました。表示画面の問題です。テレビの大画面化とデジタル放送化を背景に、最近では番組と同時に、さまざまな情報もテレビ画面に表示することが定着しています。同じように、視聴者一人ひとりの嗜好を反映した情報をテレビ画面に表示すると、一緒に見る人が増えるたびに情報が画面にあふれ、番組自体を表示する領域が狭くなってテレビ本来のエンターテインメント性が損なわれてしまうのです。
こうした課題を同時に解決するには、どうすればいいか。その解決策として浮上してきたのが、携帯電話の活用でした。携帯電話は共用する例が少なく、個人の識別に向いています。しかも、携帯電話をテレビリモコンとして使用することはすでに実現しています。この機能を高め、STBから取得できる情報と組み合わせれば、個人の視聴履歴が取得できるはずです。さらに嗜好を反映した情報を表示するセカンドスクリーンとして、携帯電話の画面を利用すれば一石二鳥です。「パーソナルTVアシスタント」は、この発想を発展させることで開発できた技術です。
- ※ STB(Set Top Box):ケーブルテレビや衛星放送、デジタル放送などの信号を受信し、一般のテレビで視聴できるようにする装置。
ケータイとSTBの履歴照合で個人別チャンネル視聴履歴を把握
個人別の視聴履歴を把握するために構築したのは、携帯電話、STB、マッチングサーバーの3つで構成するシステムです。
視聴者は自分の携帯電話に搭載されているテレビリモコン機能を使い、スイッチのON/OFFやチャンネル切り替えなどを操作します。すると、この操作履歴が自動的に携帯電話からマッチングサーバーへ送られます。一方STBからは、何時何分にどのチャンネルを流していたかという情報が、マッチングサーバーに送られます。こうしてマッチングサーバーに集まった2つの情報を付き合わせることで、視聴者に特別な負担をいっさい強いることなく、誰が何時何分にどのチャンネルを見ていたかという個人別の視聴履歴が把握できます。
また、近くにいるときだけ通信できるBluetooth(R)通信を利用することで、リモコン機能を使わずに近くで一緒に見ている人を見つけ出す手段も、合わせて開発しました。数人で一緒に見ているときは、それぞれのリモコン機能で操作した内容をBluetooth(R)で1台の携帯電話に集約し、マッチングサーバーへ送信します。これにより、視聴者別の視聴履歴が一度に把握できるとともに、データ送信回数を節約し、パケット通信料を抑えることも実現しました。
■ 個人別の番組視聴履歴を把握
携帯電話のリモコン操作情報と、STBの視聴情報をマッチングサーバーで照合することにより、
視聴者に負担をかけず、個人別の視聴履歴が把握できます。
Webページ代行検索システムとの融合で先進システムを実現
こうして把握したチャンネル視聴履歴と前述の「Webページ代行検索システム」を組み合わせることで、まずは見ていた番組の内容が明確になります。その内容を分析すれば、視聴者一人ひとりの嗜好が把握できます。次に、把握した嗜好をもとに、自動検索した関連ウェブページ情報を絞り込み、レコメンド情報を生成するわけです。「パーソナルTVアシスタント」では、この作業をマッチングサーバーの後方に設置したレコメンドサーバーで行います。そして、携帯電話のテレビリモコン画面にある「レコメンド」「ウェブ連動」といったボタンの操作で、生成したレコメンド情報を提供。その中から選択されたお勧めページを、画面に表示します。
このようにパーソナルTVアシスタントでは、視聴者に新たな手間や負担を強いることなく、番組内容と嗜好にあったレコメンド情報が提供できます。さらに、嗜好傾向は情報の蓄積量が増えることによって精度が高まるため、利用すればするほど、嗜好にあった情報が提供できるようになります。また、携帯電話の画面をパーソナルな情報を表示するセカンドスクリーンとして活用するため、テレビ画面は番組内容だけが表示でき、本来のエンターテインメント性が発揮できます。
字幕情報の利用で番組内容を理解し、関連したウェブページを自動検索したうえ、番組の視聴履歴から嗜好を把握して、テレビを見ている視聴者が「もっと知りたい」と思った情報を携帯電話の画面に表示する。この技術は時代の先端を行く画期的なシステムであり、テレビの視聴スタイルを、より快適なものにすると考えています。
■ 「パーソナルTVアシスタント」の画面例
~リモコン操作画面と(左)と関連情報表示画面(右)~

これからも次世代FMBCの実現に向けた研究開発を推進
現在、番組内容の把握からレコメンド情報の生成までにかかる時間は40秒以内です。ほとんどの番組では十分なスピードだと思いますが、ランキング情報などを提供するような番組への対応を考えると、もう少し速くしたいと考えています。そのためには、携帯電話からマッチングサーバーへ情報を送信する時間間隔の最適値を、データ量やマッチングスピード、そしてパケット通信料なども加味しながら探り出す必要があると考えています。また、実用化に際しては、番組内容とレコメンド内容の関係をより密接なものにするため、テレビ番組制作サイドとの検討・協議を進めているところです。
KDDIでは、次世代インフラ構想として、携帯電話やWiMAXといった移動体通信と、FTTHなどの固定通信、そしてCATVや放送などのさまざまなサービスを連携させてシームレスに提供するFMBC (Fixed Mobile and Broadcasting Convergence) の実現に取り組んでいます。その一環としてKDDI研究所では、次世代FMBCを実現する研究開発を推進しており、「パーソナルTVアシスタント」も、こうした取り組みによる成果のひとつにあげられるものです。
KDDI研究所では今後も次世代のFMBC実現に向け、より便利で楽しい毎日を実現する研究開発を進めてまいります。
2010年5月26日 掲載
- ※ 掲載日以降、最新情報ではない場合があります。あらかじめご了承ください。





