ミライにつながる、光の道。

マルチコア光ファイバ伝送技術

1本の光ファイバの中に、複数の光の通路をもつマルチコア光ファイバ。
2013年、KDDI研究所は、7つのコアを持つ光ファイバによる
世界初の長距離伝送実験に成功しました。
このプロジェクトのリーダーは、KDDI研究所入社から、
ずっと光の速さに挑み続ける研究者です。
彼が描いている光のミライ、一緒にのぞいてみましょう。

KDDI研究所光トランスポート
ネットワークグループ

工学博士釣谷 剛宏(つりたに たけひろ)

地上も海底も、ケーブルで大混雑!?

スマートフォンやスーパーハイビジョンの出現で、データ通信量は年々増え続けています。このままいけば、2020年以降にはデータ伝送の限界を迎えると言われています。
ケーブルを増やせばいいのでは?と思う人がいるかもしれませんが、それで解決する問題でもないんです。光ファイバは髪の毛1本ほどの細さですが、何層ものジャケットで保護されています。ケーブルにするとかなり太くなり、何本も束ねるとどうしても場所をとるうえに、敷設できるスペースは限られています。そのため、道路脇などでケーブルがひしめきあい、海の中では張り巡らされた海底ケーブルで大混雑といった状況が起きています。

光の研究に進んだきっかけは?

光増幅器が開発されたのが、
大学進学時。
長距離の光通信に
可能性を感じました。

1日のスケジュールはどんな感じ?

夜10時頃まで研究を続ける日も。
打ち合わせ等で外出した日は、
早めに直帰します。

最大の課題は、コア間のクロストーク。

データ伝送量を増やそうと、単純に光のパワーを強くするだけでは光ファイバを溶かしてしまいます。そこで生まれたのが、光ファイバの中のコアを複数にするマルチコアです。
マルチコアのアイデア自体は1980年代からありましたが、ファイバ自体の製造が難しい上、伝送を実現するのは難しいと考えられていました。その大きな理由が、コア間の信号の干渉によるクロストーク(混信)です。
光ファイバは、光の通り道であるコアと、その周囲を覆うクラッドの二重構造になっています。光は、わずかにコアからクラッドに染み出すため、コア間の距離が小さくなると隣のコアに信号が乗り移りクロストークが生じます。このクロストークは長距離になるほど累積し、信号を劣化させる要因となり、送受信できなくなります。長距離伝送を目指している私たちにとっても、このクロストークをいかに抑えるかが最大の課題に。古河電工、NECと共同で進めた研究開発の中で、何度も試行錯誤を重ねました。
また、伝送距離が長いと光は少しずつ衰えるため、ある中継間隔で光増幅器を設置し、途中で光を強くしなければなりません。この増幅器や、両端の送信器・受信器も、共同研究機関とマルチコアに対応した開発を行い、高度な中継伝送技術を実現しました。

研究のアイデアはどこから?

お風呂に入っているときなど、普段の生活の中で浮かぶことが多いですね。

気分転換は?

お酒が好き。休みの日は飲みに行くことが多いです。

光は世界最速。だから、おもしろい。

このマルチコアに関する技術分野は、日本が世界を牽引しています。特に、KDDIは光伝送の研究で世界トップクラスを走っています。今回の長距離・大容量光伝送実験の成功で、そのことを証明できたのではないでしょうか。
一時、光バブルといわれて、光伝送の研究が下火になったこともあったのですが、今はデータ通信の増量で研究が再び盛んに。毎年3月と9月には、光通信市場の流れを左右するといわれる、大きな光通信の国際学会が開催されます。この学会でもマルチコアは大きな注目を浴びました。
この世の物質で最も速いのが光なんです。これって、すごいことじゃないでしょうか。大学時代から、ずっと光の研究を続けているのは、この速さに魅せられたから。その光で、世界初の技術に携われたのだから、研究者冥利に尽きますね。

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中心にコアが1つの従来のシングル光ファイバに対して、複数のコアを配置しているマルチコアの光ファイバ。

7コアファイバでは、中心のコアを6つのコアで囲み、コアどうしの間隔が最大限に広くなるように配置する。さらに、屈折率の低い材料で、7つのコアをぐるりと囲む。
クロストークに強く、かつ大容量な伝送を可能とする送受信技術。

この2つの方法で、コア間の信号の干渉(クロストーク)による影響を最小限に抑えることに成功しました。

また、光増幅器や送信器・受信器もマルチコア用を開発。50km毎の中継地点に7つのコアをもつ光増幅器で各コアの信号の光を強くして、再び1本のマルチコア光ファイバに接続しています。

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2013年9月、マルチコア光ファイバによって、毎秒140テラビットの超大容量信号を約7,300キロメートル伝送することに成功。
この距離は、東京-ブリスベン間、ニューヨーク-ローマ間の距離に相当し、
140テラビットは、2時間のハイビジョン映像700本分を1秒で伝送することに相当します。

また、伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)が、世界で初めて、毎秒1エクサ(100万兆)ビットx kmを突破しました。

今後は、システムの標準化や消費電力の低減などの技術的課題をクリアし、2020年頃を目指してマルチコア光ファイバ伝送技術の実用化を進めていきます。

光伝送の研究者になりたい
人たちへのメッセージ。

KDDI研究所なら、世界最先端の光伝送の技術を体験できます。
光のおもしろさに興味がある人、世界に技術力をアピールしたい人は、
ぜひチャレンジしてほしいですね。

いつか光伝送技術を
受け継いで、
次のステージに。

釣谷グループの一員になって、3年。「自分で考えて好きなようにやっていい」と、若手を信頼してくれるグループリーダーです。といっても、放っておかれるわけでなく、毎日実験の進捗を聞いてくれるし、行き詰ったときは必ず解決策をアドバイスしてくれます。
今回の長距離伝送実験の成功は、ついにやったなぁという感じです。少し悔しいのは、私がその実験の主担当ではなかったこと。KDDIの光伝送技術の伝統を絶やさぬよう、私たち若手がもっと頑張らないといけないと感じています。

KDDI研究所 光トランスポートネットワークグループ竹島公貴

光ファイバで、
目指せ、
東京オリンピック。
目指せ、
世界のTSURITANI。

本社の光ネットワーク技術担当だった際に、光伝送装置の最適な配置や導入に関して、技術的なサポートをしてくれました。釣谷さんは、自分を追い込むのが得意なタイプ。綿密な計画に合わせるより、パワーをためて、爆発的に挑んでいく。それでいて、柔軟でバランス感覚があって、こちらの課題や事情まで、ちゃんと考慮してくれるんです。
この技術は必ず必要になるはずだし、ここまで来たら、世界のTSURITANIになってほしい。「東京オリンピックの映像はマルチコア光ファイバを通っているんだよ」と、周りに言いたいです。

KDDI 技術戦略部松本正明