誰もが使いこなせるミライ。

アドバイス機能付き文字入力支援技術

シニアや初心者には難しい、スマートフォンの文字入力。
誰もがスムーズに入力できるよう、一人ひとりのレベルに最適なアドバイスを。
シニア・初心者向けのアドバイス機能付き文字入力支援技術を開発。
スマートデバイスのユーザーインターフェースの研究に取り組む研究員が見つめるミライとは?

KDDI研究所
ユーザインタフェース
グループ

研究主査萩谷 俊幸(はぎや・としゆき)

地図操作方法の習得から、
文字入力支援に発展。

シニア層でもスマートフォンの利用者が増えていますが、「操作が難しい」といった理由で、購入を躊躇する、スマホからフィーチャーフォンに戻る、といった例も多くあります。KDDIでは、シニアにもスマートフォンを使いこなしてもらいたいと、スマホ教室を開催し、シニア向けのスマートフォンを発売しています。
それと並行して、私が所属するKDDI研究所ユーザインタフェースグループが研究開発を進めているのが、スマートフォンの操作支援技術です。これは、スマートフォンが普及し始めた2011年頃から、IBMと共同で進めている研究で、これまでに地図操作方法を習得するための練習用アプリ「スマホ道場」を開発しました。そこから発展し、シニアが操作の中で最も苦手とする、文字入力を支援する技術の開発を私が担当することになりました。

アドバイスが必要なのは、
苦手な操作をしているときだけ。

今回の入力支援技術の特徴は、日常のスマートフォン操作から利用者の文字入力スキルを判断し、どこでつまずいているのかを検出しながら、適切なアドバイスを行うことです。
研究を進めるにあたって、多くのシニアの方に会い、スマートフォン操作のデータを取ったり、操作しているところを観察したりしました。そのとき感じたのは、操作のレベルやスピードはもちろん、得意な操作、苦手な操作もさまざまだということ。得意な操作をしているときにまでアドバイスされると、余計なお世話という気になりますよね。アドバイスが欲しいのは、困っているときだけです。そこで、すべての文字入力でアドバイスが表示されるのではなく、苦手な操作をしているときにだけアドバイスをくれる技術を目指しました。
難しかったのは、どんなところで入力を誤ったり遅くなったりしているのか、苦手な操作を検出するところ。私は、“つまずき”と言っています。また、文字入力がスムーズにできる自分では、入力支援技術のテストができないため、スキル推定の精度を測るのに苦労しました。

こだわりの、自分だけのルールは?

毎朝7時半までには出勤すること。みんなが出社する9~10時頃まで、誰にも邪魔されず研究テーマを考えたり、論文をじっくり読んだり。最高に贅沢な時間です。

夢中になっている趣味は?

テニスです。KDDIの実業団にも所属しています。年2回大きな大会があるので、それに向けて練習しています。好きだけど、実力はそこそこです。

子どもの頃の夢は?

ゲームクリエイター。昔は、ドラゴンクエストのようなロールプレイングゲームが好きだったので。でも、今、仕事でアプリをつくる機会があるので、半分は叶ったかなと思っています。

もっとここを伸ばしたい。それはどこ?

外国でパートナー企業を探したり、国際会議で発表したりといった機会があるので、もっと英語を上達させたいです。

レベルやつまずきを分析しながら、
適切にアドバイス。

スマートフォン文字入力支援技術では、まずは利用者の操作ログを取得。そこから、画面接触時間や入力の間隔、時間当たりの入力文字数などをもとにスキルを推定して、5段階に分類します。最初の10タッチからレベルを測ることができ、データとなるタッチ数が増えるにつれて、徐々にスキル推定の精度は上がります。
さらに、スキル推定と同時に、どんなところで入力を誤ったり遅くなったりしているか、つまずきのパターンを検出します。
すると、文字入力する度に、フキダシでアドバイスが表示されるので、アドバイス通りに操作すれば、操作スピードや精度がアップする、という流れになっています。もちろん、利用者がスムーズに文字入力できるようになれば、アドバイスは一切表示されなくなります。
入力支援技術の開発を終えた現在は、テストと操作ログ取得からの精度向上を兼ねて、シニアモニターのみなさんとスマートフォンでチャットなどもしています。
ついに実用化も決定しました。2016年8月下旬発売のシニア向け端末BASIO2に、文字入力アシスト機能を搭載するので、多くのお客さまにご利用いただけたらうれしいですね。

基礎研究から実用化まで、
ハードルがあるからおもしろい。

最近一番うれしかったのが、人間とコンピュータのインタラクションに関する研究で最重要な国際会議CHI Conferenceで、この文字入力支援技術の論文が認められたことです。実は、KDDIでこの会議に採録されたのは初めてです。シニア層をターゲットにした研究で、利用者を分析しながら、最適なアドバイスをする仕組みはとても貴重らしく、そこが評価されたようです。
ひとくちに研究員といっても、基礎研究をする者もいれば、実用化のための研究をする者もいます。私が所属するユーザインタフェースグループでは、基礎研究から実用化まで、幅広く担当することが多いです。研究フェーズではスムーズに進んだのに、開発フェーズになると大きな問題やズレが生じることがあります。また、技術とは直接関係がない部分で利用者のニーズに合わせて変更する点も出てくるし、スピードも求められます。たいへんなのですが、出てきた課題をどう乗り越えるか考えるときこそ、研究員としてのやりがいを感じます。
どんなにすごい技術が開発されても、人が使いこなすことができなければ、何の意味もありません。今後も、人とデバイスをつなぎ、さらには人と人をつなぐのにも役立つ、そんな技術の開発に取り組んでいきたいです。

新たなコミュニケーションツール、ロボット、マシーン。
説明書がなくても、誰もがすぐに使いこなせます。
さらには、一人ひとりの好みやレベルに合わせて、使い方も機能も最適化。
便利なだけでなく、楽しさやこだわりも叶えるミライがやって来ます。

研究員になりたい
人たちへのメッセージ。

データ分析の重要性が説かれている昨今ですが、一番大事なのは
人間を見ること。主観的に、客観的に、あらゆる面から人間を
見ることができる観察眼を養ってください。

どんなときもぶれない男。目指せ!世界のUI研究のリーダー。

ずっと同じグループで、彼の仕事ぶりはそばで見てきました。どんなときもぶれずに筋が通っている、頼もしい後輩です。毎朝7時台には出勤していて、前日の帰宅が遅くても、ずっと続ける姿勢がすごい。頑固なのかもと心配したほどですが、彼の結婚式で本当に柔らかい笑顔が見られたので、ほっとしたのを憶えています。
シニア・初心者向けアドバイス機能付き文字入力支援技術を開発できたのも、彼のひたむきな性格があってこそ。これからも人に寄り添った研究開発を続けてほしいです。いずれは、世界のユーザーインターフェース(UI)研究を牽引する人物になるのではと、大いに期待しています。

KDDI研究所 ユーザインタフェースグループ
研究マネージャー
堀内俊治

思いつきで動かず、何事も計画的。いつか、一緒に研究開発を。

同期入社で新人研修の時から仲が良いのですが、彼の自己管理能力にはいつも感心します。プライベートでも、思いつきで行動することはなく、何事も計画的ですね。何度か一緒にゴルフコースをまわったのですが、納得いかないショットがあると、あとできちんと自分のフォームから原因を探る。そんなところまで研究熱心なんです。
今回の文字入力支援も、基礎研究から始めてほぼ独力で実用化のレベルまで持ってくるのはすごいと思います。同期として、私も負けられないと刺激を受けました。いつかは同じプロジェクトで、一緒に次世代のスマートデバイスを研究開発したいですね。

KDDI研究所
ソフトウェアインテグレーショングループ 研究員

小林達也