2014年6月2日から、4K試験放送が始まりました。
フルハイビジョンの4倍の解像度があることに加え、色や明るさの表現が大きく広がるという4Kテレビ。「4Kテレビは買ったのに、放送が始まらない」と待ちかねていた方もいるのではないでしょうか。
高精細な映像を圧縮して伝送する技術を持つKDDIも、この4K試験放送に参加します。4Kってそんなにキレイなの?我が家で見られるのはいつ?
KDDIで4K放送の技術開発を担当する宮地が解説します。
宮地悟史 (みやじ・さとし)
KDDI メディア・CATV推進本部メディアプロダクト技術部
技術開発グループリーダー 工学博士
4K放送やSTBなど、ケーブルテレビサービスの技術・機器の開発を担当

- KDDIといえば通信事業ですが、通信回線やケーブルテレビを通じた映像配信も、重要な事業領域のひとつです。例えば、auひかり (FTTH回線) を使ったテレビ放送を提供していますが、ここでは、KDDIが持つ映像の圧縮・伝送技術が欠かせません。また、ケーブルテレビ回線に接続して、放送信号を受信して視聴できるようにする装置STB (セットトップボックス) の次世代版の開発や、マルチデバイスで楽しめるVODサービス「ビデオパス」も手がけています。
- 4K・8K映像の圧縮・伝送技術の研究には、2008年からKDDI研究所とともに取り組んでいます。4K・8K放送の実用化に向けてオールジャパンで取り組むため、2013年5月に設立された「次世代放送推進フォーラム」にも最初から参加しています。
- はい。まず、今回の4K試験放送では衛星を使うのが基本となります。NHK、民放、J:COM、スカパーなどが4K映像コンテンツを制作し、その映像がスカパーの衛星を通じて放送されます。この放送を4K専用チューナーで受信・視聴するのが一般的な受信方法となります。
- これに加えてKDDIのトライアルでは、ケーブルテレビ事業者のJ:COMと連携して次のように行います。衛星からの4K映像の信号を一旦J:COMが受信します。J:COMはこれを自社網に同時再放送するとともに、専用回線でKDDIに信号を伝送 。それを受け取ったKDDIは、そこからauひかり回線により同時再放送を行います。
- KDDI本社ロビーに、4K信号を受信するSTB (今般KDDI・JCOMで共同開発) と4Kテレビを置き、お越しいただいた皆さまにご覧いただけるようにいたします。なお、J:COMから全国41のケーブルテレビ事業者にも信号が送られ、そこでも、各社のケーブルテレビ網による4Kデモが行われます。
- 映像を圧縮してデジタルの信号にし、エンドユーザーまで伝送するという技術の基本的原理は、現在放送されているHDTVも4Kもほぼ同じです。ただし、4Kになるとデータ量が大きくなるため、その分、高品質に圧縮するための計算量や情報量が膨大になります。そこには、KDDI研究所が長年取り組んできた優れた高圧縮・高速伝送の技術があります。また、4Kの電気信号も光通信も受信できるハイブリッドSTBも、J:COMと共に開発しています。
- HDTVの画素数は、縦1080×横1920で約200万画素。4Kは、これを縦横2倍にするため、HDTVの約4倍の画素数となります。もちろん、撮影時のカメラも4Kカメラを使用するのですが、私が感じたのは、携帯電話で撮った画像と、一眼レフのデジタルカメラで撮った画像くらいの差があるということ。奥行き、立体感がまるで違います。美しい景色の映像を見ると、その場にいるような錯覚を起こしそうになるほど。米イエローストーン国立公園の4K映像を見たのですが、迫力があって、ほんとうに美しかったです。
- 4Kでは、解像度だけでなく、色の数や明るさの段階も大きく広がります。これまでテレビでは表現できなかった色が出せるようになり、黒から白に徐々に移り変わる明るさの段階も、これまでの256から1024に大幅に増加。従来の放送では、暗さにまぎれて黒く見えなくなるような、わずかな明るさの映像もきちんと表現することができます。
- ええ、ぜひたくさんの方に見ていただきたいですね。試験放送では、ゴルフ、野球などのスポーツ中継、音楽LIVE、ドラマなどの番組が放送される予定です。2014年秋に向けて、さらに番組が追加されるようです。
- 5/20に、4K試験放送に対応したHDDレコーダが発表されました。また、普及に関しては、2016年のブラジルオリンピックの前に本放送を開始し、2020年の東京オリンピックまでの普及を目指して国内での取り組みが進められています。現在の4Kテレビには4K放送用のチューナーは内蔵されていませんが、その頃にはチューナー搭載の4Kテレビが数多く登場していることでしょう。
- 現在、国内では、4Kの普及に加えて8Kの実用化に向けた取り組みも進められています。KDDIは、2013年2月に、8K・4K・HDTVの映像を同時に伝送する実験に成功しています。直近では、4Kの試験放送への対応に注力していますが、すでに8Kの技術開発も進めています。

▲これまでのハイビジョン映像サンプル
・4Kに比べて解像度が1/4
・4Kに比べて階調の段数が少ないので空のグラデーションが不得手
・4Kに比べて色の表現範囲が狭い

▲4K映像サンプル
※わかりやすくするための加工処理を行っております。
- 4K放送実現に取り組んでいるのは日本だけではありません。お隣の韓国では、2014年4月からケーブルテレビ局が世界初の4K本放送を開始しました。アメリカのケーブルテレビ事業者は2014年中に4K放送を開始予定。フランスが、2013年6月に全仏オープンの4Kパブリックビューイングを実施するなど、ヨーロッパ各国も4K放送実現に向けて動いています。また、ロシアはソチオリンピックの開会式を4Kカメラで撮影し、衛星回線で伝送して4Kテレビで再生する実験を行いました。今やテレビ放送の4K化は世界的な流れとなっています。