2010年春、新しい海底ケーブルが誕生しました! 名前は「Unity」。千葉にあるKDDI千倉海底線中継所と米国ロサンゼルスの間の海の底には、全長約10,000kmものUnityが沈められています。
そもそも海底ケーブルってどんなものなのでしょう? どんなふうに工事してるのやら。海底ケーブルに携わって15年、KDDI国際ネットワーク部の成松が、海底ケーブルについて解説します。
成松優晴(なりまつ・ゆうせい)
KDDIネットワーク技術本部 国際ネットワーク部 ケーブル技術グループ
Unityケーブルのプロジェクト管理・契約交渉等を担当

- 海底ケーブルとは、海外との通信の基盤になっている光ファイバーケーブルのこと。インターネットで外国のサイトを見たり、メールのやり取りをしたり、国際電話で話したりできるのは、世界中の海の底に約200本の海底ケーブルが張り巡らされているからなんです。
- ケーブルを敷設船という特殊船に乗せて、船を進めながら海底に沈めています。ケーブルを海中でたるませると切れることがあるので、海底面にきっちりと沿わせるように敷いていくんです。水深8,000mに設置されたケーブルもあるんですよ。
ケーブルの中には光ファイバーが入っていて、船のイカリで傷つけられたり、サメにかじられたりしないよう、周囲は金属やポリエチレンで保護されています。
大掛かりな工事なるので、工事の前には綿密な計画を立てるんですよ。海洋生物への影響は?海底火山はないか?など、海底の様子を調査して、適切なルート、ケーブルの長さ、工事のスケジュールなどを決めています。 - まずは、ケーブルを陸揚げしなくてはなりません。敷設船から陸揚局までケーブルを引き込むには、シャベルカーとロープを使ってケーブルを陸揚げし、海岸から穴を掘って地中を通って、陸揚局まで引き込んでいきます。
- 衛星とは比べ物にならないほど、海底ケーブルの容量は大きいんです。昔は、ケーブルを流れる光の伝送容量は少なかったのですが、2000年頃から飛躍的に増えて、現在は1テラ以上になりました。
みなさんが見ている米大リーグのテレビ中継なんかでも、今は海底ケーブルが活躍しています。衛星を使っていたときは、映像が途絶えたり、現地より遅れて映像が表示されたりなんてことがありましたが、海底ケーブルを使った中継なら映像の遅れもほとんどありません。 - 今は一般の家庭でも、インターネットに光ファイバーを利用し、海外のウェブサイトを見たり、動画を楽しんだりがあたりまえになりました。今後、さらにインターネットの需要が増え、光ファイバーの利用が広がると、今の容量では足りなくなることがあきらかです。こうした事態に備えるため、KDDIは米Google、インドやマレーシアの通信会社などと6社共同でUnityを建設しました。
Unityは、計画に2年、建設工事に2年かかってるんですよ。総建設費は約3億米ドル、日本円にすると約320億円です。 - いえいえ、Unityで大容量が確保できても、これだけに集中させることはありません。現在、KDDIでは日米間でUnity以外にも5本のケーブルを使用しています。海底ケーブルは容量の問題だけでなく、障害などに対応するために複数のルートを常に確保しておかなければなりません。

これらが海底ケーブルの実物。浅いところほど、何層もの金属で覆って保護する

2009年11月1日に千倉で行われたUnityの陸揚げ風景
- 地震や漁船のイカリにあたって、切れることがあるんです。その場合は、まず切れた箇所の海上にケーブル敷設船を走らせ、切れているところを引き上げます。切れたところを接続するのは、特別な訓練を受けた「ジョインター」と呼ばれる人々。船上でゆらゆら揺れながら、16時間近くもかけて繊細なファイバーをつなぐ難作業を経て、再び接続されます。