2015年度ステークホルダーダイアログ (CSR調達)

過去のステークホルダーダイアログ

KDDIにおけるCSR調達およびグリーン調達の深化について

KDDIでは2014年2月に「KDDI CSR調達方針」を策定し、主要なお取引先さまを対象としたCSRアンケートを毎年継続して実施しています。
今回のステークホルダーダイアログでは、CSR調達に詳しい有識者の方をお招きし、CSR調達およびグリーン調達の深化をテーマに対話を行いました。

出席者

<有識者>
足立 直樹氏

株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役
多くの先進企業に対して、「どうすれば持続可能な社会に貢献できる企業になれるか」を中心にコンサルティングを行う。企業による生物多様性の保全とCSR調達 (サプライチェーン・マネジメント) を専門とし、アジアにおけるCSRの推進にも力を入れている。

金丸 治子氏
イオン株式会社 グループ環境・社会貢献部 部長
株式会社マイカルCSR本部長を経て、2013年より現職。イオンは2003年よりCSR調達の取り組みを開始し、日本では先進的に活動を推進。近年では持続可能な原材料調達にも力を入れて取り組む。

<KDDI>
コーポレート統括本部 購買本部長 赤木氏
コーポレート統括本部 購買本部 購買管理部長 吉田氏
技術統括本部 技術開発本部 技術戦略部 副部長 井上氏
技術統括本部 技術開発本部 技術戦略部 戦略G マネージャー 後藤氏
CSR担当役員 総務・人事本部 副本部長 土橋氏
コーポレート統括本部 総務・人事本部 総務部長 田中氏
コーポレート統括本部 総務・人事本部 CSR・環境推進室長 鈴木氏

第1部 サプライチェーンにおけるCSRの位置づけおよびトレンド
重要度が増すサプライチェーンのCSR

足立: 2015年に行われたG7サミットの首脳宣言には「責任あるサプライチェーン」の項目があります。サプライチェーンにおける人権、労働、安全衛生の取り組みに力を入れていこうという内容なのですが、各国の首脳がコミットする宣言に組み込まれるほど世界経済にとって重要な課題として認識されていることに注目いただきたいと思います。

また、2013年にバングラデシュの縫製工場で起きた崩落事故をご記憶でしょうか。1,000人以上が亡くなる大惨事で、欧米の報道では事故直後から、どの企業の服をつくっていたのかが話題になりました。工場と取引していたグローバルブランドは対策をしていなかったのか、と。事故の約1ヵ月後には各社が出資して対策のための基金が立ち上げられたように、「サプライチェーンで起きる問題は自分たちブランド企業の責任」と考えるのが欧米の常識です。

司会: イオンさまではどのように取り組まれているのでしょうか。

金丸: 当社では国連グローバル・コンパクト (注1) やSA8000 (注2) を参考にして、2003年に「イオンサプライヤーCoC (取引行動規範)」を制定し、お取引先さまの労働や人権の状況を確認する取り組みを始めました。また、農水産物を始めとした自然の恵みにより事業が成り立っているとの認識から、2014年に「持続可能な調達原則」を定め、水産物であれば海のエコラベルと呼ばれるMSC (注3) やASC (注4) 認証商品の拡大に取り組むとともに、定期的なリスク評価を行うアセスメント会議を社内に設置して対応しています。
こうした商品の取り組みをセルフ中心の店舗でお客さまにお伝えするのは簡単なことではないのですが、きちんと伝わればご理解いただき、賛同される方は確実に増えていると実感しています。

  • 注1)
    国連グローバル・コンパクト: 企業を中心とした団体が、影響の及ぶ範囲で人権・労働・環境・腐敗防止に関わる10の原則を支持し、遵守することを求める国連のイニシアティブ。
  • 注2)
    SA8000: 国際的な非営利組織 (Social Accountability International) による人権や労働に関する国際規格。
  • 注3)
    MSC: 自然環境や水産資源に配慮した持続可能な漁業によって獲られた水産物を認証する仕組み。「海のエコラベル」ともいわれる。
  • 注4)
    ASC: 持続可能な形で行われた養殖による水産物を認証する仕組み。

司会: お客さまの関心について触れていただきましたが、投資家からの注目も高まっていますね。

足立: 日本でも昨年GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) がPRI (国連責任投資原則: Principles for Responsible Investment) に署名しましたが、世界的にESG情報が投資判断に影響するようになっています。PRIでは投資先のCO2排出量の開示を投資家に呼びかけるモントリオール・カーボン誓約を進めており、2015年12月のCOP21にあわせて、さらに進んで投資先の排出量の削減を促す取り組みであるポートフォリオ脱炭素連合も結成されています。これはサプライチェーンでのCO2排出量が多い企業から投資を引き上げる投資引き揚げ (ダイベストメント) の動きにもつながっています。ほとんどの業界において、実は自社よりサプライチェーンの環境影響がはるかに大きいんですね。特に通信業界の場合は、おそらくみなさんが使っている電気や水の10倍ぐらいの量がサプライチェーンでは使われています。
また、国際的には持続可能な調達の基準ISO20400が策定中で、国内では消費者庁が人や社会・環境に配慮した倫理的消費を推進する研究会を立ち上げるなど、国内外でサプライチェーンに関する制度づくりも進んでいます。

サプライチェーンで発生するリスク

金丸: プライベートブランドは、製造についても私たちが責任を持つということでイオンの名前を表示しており、原材料に対する説明責任を求められることも増えてきています。サプライチェーンで何か問題が起きた場合、「私たちは知らなかった」では済まされず、「イオンが責任を果たしていなかった」と受け取られます。

足立: 原材料の枯渇や工場でのストライキ等で物流が停止するリスク、販売時に製造過程に対する消費者の不信感によって評判を落とすリスクなど、実は持続可能なビジネスという観点で一番重要なのはサプライチェーンなのです。
また、御社は東南アジアで事業を展開していますが、児童労働の問題には注意が必要です。児童労働はアジアに非常に多く、国別ではミャンマーやカンボジア、業種では農業と建設です。たとえば現地で鉄塔等を建てる際の建設業者に対する教育が必要でしょう。

KDDI: 製品の安定調達や品質・コスト・納期のQCD (Quality (品質)、Cost (費用)、Delivery (納期)) の観点からサプライヤー訪問を定期的に行っています。端末の製造は海外メーカーが多いのですが、その部品は日本企業であることもよくあり、裾野も複雑・多様に広がっています。リソースが限られる中で、一次、二次、三次とどこまでみていくのかが課題です。

足立: 順番としてまずは一次サプライヤーが最も重要です。ただ紛争鉱物など、物によっては最上流まで遡り、サプライチェーン全体を通じた確認をしないと危ないでしょう。
CSR調達に終わりはありません。工場はどんどん新設され、サプライヤーが変わることもありますし、対応すべき課題も常に変化しています。いきなり100点を目指すのは難しいので、まずはサプライヤーの対応状況として、大きなリスクが排除されたことが確認できた状態を目指すのが良いかと思います。

第二部 CSR調達アンケートの深化
目的を明確化し、一歩掘り下げた設問に

KDDI: 調達金額比率で9割以上の主要なお取引先さまに約80項目からなる「CSR調達チェックシート」への回答をお願いしています。初回の結果では回答率が72%と低く、回答とホームページに開示している内容に齟齬が見られたりしたため、2015年度の実施時には事前説明を丁寧に行いました。結果、ほぼ100%の回答率を得て、KDDIのCSR調達方針に逸脱した企業はないことを確認しています。また回答後に確認のため、一部のお取引先さまにヒアリングも行いました。

金丸: アンケートの設問については「生物多様性保全活動を行っているか」という漠然としたレベルではなく、もう少し具体的なものである必要があると思います。アンケートの目的や内容をしっかりと理解いただけるよう、当社では、初めてのお取引先さまに対してまずイオンの基本理念とともにCSR調達の考え方を伝える説明会を実施し、CoC (取引行動規範) を遵守しますというお約束をいただいた上で、初回は外部機関による第三者監査、第三者監査で認証された場合は、イオンの認定監査員による2年に1回の二者監査、さらに良好なマネジメントの確立が確認された場合は、自ら確認する一者監査という流れで確認を行っています。

足立: まず必要なのは、たとえば現状把握や問題発見など、CSR調達の目的を明確化し、その目的に応じてアンケート内容を精査することです。これまでのアンケートでサプライヤーの現況は把握できたと思いますので、リスクの発見を目指すのであればもう一歩掘り下げた設問にしていくべきです。また、サプライチェーンで想定される課題は数多くありますが、御社にとって重要性が高いものを重点的に確認することが必要です。たとえば生物多様性や社会貢献はすべてのサプライヤーに尋ねる必要はなく、基地局建設時の環境アセスメントや用紙調達など特に関係が深いところに絞るのも一手です。
アンケートはあくまで問題発見の手段に過ぎません。アンケートで可視化された課題にどう対応するかが重要です。

CSR調達で企業のブランドを守り、競争力向上につなげる

足立: CSR調達においてはアンケートだけでは不十分で、全工場に対する訪問調査が基本です。ただ、一気にすべての工場に監査を行うのは難しいので、予備的調査としてアンケートの結果を活用することをおすすめします。

金丸: 監査で課題が見つかった場合には、法令違反の場合は取引中止となることもありますが、一緒に改善してより高いレベルに行きましょうという考え方で私たちはやっています。このときに書類のやり取りだけでは難しいですね。改善を進めるのに必要な信頼関係ができません。実際に足を運んで、現場を見て対応していくことが大切です。

KDDI: 強制的にやるのではなく、工場側と信頼関係をつくって彼らの意見を聞きながら取り組んでいくことは従来の購買活動でも重要視しています。関係性の構築には時間がかかりますね。どこまでやったらいいという点については、中国など文化の違う地域でも、法律の基準を超えて、国際規範といったソフトローを基準としていく必要があると認識しています。

足立: ソフトローについては、少なくとも中国やベトナムではほぼ共有されているとお考えください。サプライヤー側も監査慣れしており、こちら側の本気度を伝えないと、相手側の対応の仕方が変わってきます。当然その分のリソースは必要ですが、これは購買部門だけで考えて対応していてはいけない課題です。サプライチェーンに問題が起きれば会社全体に影響する。いかにして企業のブランドを守っていくかという話なのです。きちんとしたCSR調達を行うために必要なリソースを算出し、経営層で検討していただきたいと思います。

KDDI: コストの話でいうと、製造工程を見直し歩留まり率を改善することで、コストを下げようという議論を工場との間でします。

足立: まさにその通りで、CSR調達はルールなので守ってくださいというだけではなく、製造プロセスの見直しとして取り組むべきです。実際にCSR調達を行うことで生産効率が上がった、あるいは工場でのラインストップが減ったという調査結果も出ており、競争力向上にもつながっています。

第三部 グリーン調達について

KDDI: 2010年に「KDDIグリーン調達ガイドライン」を制定しました。電源設備と空調設備は省エネ製品の調達が積極的にできていますが、通信機器は環境配慮型の製品が出始めたばかりでまだ価格も高く、コストの関係で導入が進んできませんでした。最近は世の中に省エネ製品が増え価格も手頃になってきていますので、ガイドラインの基準を見直して取り組みを進めていく必要性を感じています。

足立: 調達物品に対して環境配慮のハードルを定めることは、企業としての責任です。個人が省エネ製品をつくってくださいと言っても企業はなかなか動きませんが、一定量の契約が見込めれば取引先は技術開発に取り組めるのです。つまり、グリーン調達の推進はサプライヤーにとっての新たなイノベーション、競争力強化にもつながります。確かに環境に配慮した製品は価格が若干高いことはあります。しかし他社に先駆けて取り組めば、その投資は回収できるはずです。

金丸: 社会が変化し、自社の状況も変化するなかで、より実効性を高めていくためにはグリーン調達ガイドラインを更新していく必要があります。私どもも、まさに見直しを行っている最中です。

おわりに: CSR調達・グリーン調達のさらなる推進に向けて

金丸: 企業経営の視点でCSR調達にいかに全社的に取り組んでいくかはどこの企業でも共通の課題です。経営層の認識を合わせるには、リスクや競争相手の動向の共有が有効ではないでしょうか。そうして、全社の経営の方針にCSR調達が盛り込まれていくよう、経営レベルでの議論を深めていくことが大切です。CSR調達への取り組みは、企業評価やブランド向上に必ず役立っていくと考えています。

足立: お客さまがKDDIさんを選ぶ理由は何でしょうか。技術力や価格で選ぶお客さまもいらっしゃると思いますが、企業にとって一番うれしいのは「信頼できるから」という理由ではないでしょうか。そうだとしたら、信頼してもらうためにはどうしたらいいのか。それはやはり実際にどういう行動をするかだと思います。CSR調達はまさにその信頼の土台にあたる一番重要な部分です。困難はたくさんあると思いますが、さらに取り組みを進めていただければと思います。

KDDI: グローバルに求められる基準やトレンドをお示しいただいて非常によく分かりました。全社的な課題としてCSR調達を位置づけ、経営層で議論を深めることの必要性と、課題ごとに、現地現物で、一歩ずつお取引先さまとともに改善を繰り返していく重要性を確認しました。
KDDIでは経営層が参加するCSR委員会が今年の3月からスタートし、また、2016年4月にはお取引先さまも対象とした人権宣言を公表します。PDCAをしっかりと回していきながら、日々の業務の改善活動と同じく、着実にひとつずつ問題を解決しながら、取り組みを進めていきたいと思います。どうもありがとうございました。

KDDI

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