統合レポート (ESG詳細版) に対する第三者意見

「KDDI 統合レポート2017 (ESG詳細版)」に対する第三者意見

  • 写真: 川村 雅彦氏 (株) オルタナ オルタナ総研 所長・首席研究員 (株) ニッセイ基礎研究所 客員研究員

    川村 雅彦氏
    (株) オルタナ オルタナ総研 所長・首席研究員
    (株) ニッセイ基礎研究所 客員研究員

    1976年九州大学大学院工学研究科修士課程修了後、三井海洋開発 (株) を経て、1988年 (株) ニッセイ基礎研究所入社、2016年秋からオルタナ総研。専門は環境経営、環境ビジネス、CSR経営、統合報告など。所属は環境経営学会 (副会長)、BERC (フェロー)、サンメッセ (株) (アドバイザー) など。著書は「CSR経営パーフェクトガイド」(単著)、「統合報告の新潮流」(共著)、「カーボン・ディスクロージャー」(編著) など。

    本意見は、「KDDI統合レポート2017 (ESG詳細版)」に記載された情報を基に、そのCSR経営の情報開示、ならびにCSR経営の考え方と取組の内容・成果などについて、評価とともに課題や期待の観点から述べるものです。なお、昨年に続き、二回目の意見となります。

1. CSR経営の情報開示について

  • 本報告書は、財務情報を中心とした「統合レポート」に加えて、非財務情報を拡充した「統合レポート (ESG詳細版)」として発行されています。近年、いわゆる統合報告書の中にCSR・ESG情報の概要だけが取り込まれていく中で、情報開示を質的にも拡充しようとする誠実な姿勢は高く評価できます。雇用や環境のパフォーマンス・データは分かりやすく、中でも顧客使用段階 (スコープ3) のCO2排出量の詳細開示は評価に値します。
  • 報告書の全体構成は、昨年と異なり、明確にされたKDDIのCSR体系図に沿ったもので、より分かりやすくなりました。つまり、「KDDIのCSR」と「CSR重要課題」に続いて、大きく「事業を通じたCSR (製品・サービス)」と「事業を支えるCSR (経営基盤)」が配置されています。特に、後者はISO26000の中核主題に準じており、CSRの本質に対する認識がうかがえます。
  • 編集方針にあるように、KDDI単体を中心とする報告ではありますが、各論において単体かグループかのバウンダリー区分が明示されたことで、現在のCSR経営の範囲が明確となりました。
    今後、グローバル企業として海外を含むグループ全体へどう拡張するかが課題です。
  • 進捗統括表としての「CSR重要課題における目標・実績・課題」では、項目ごとに自己評価と今後の課題が明記されていて、PDCAの観点から評価できます。しかし、本文の各論では方針、体制、活動・実績について簡潔に説明されていますが、課題や是正策が記載されておらず、今後の工夫に期待します。

2. CSR経営の内容について

  • 4つのCSR重要課題 (ガバナンス x 1、社会 x 2、環境 x 1) について、それぞれ「KDDIのアプローチ (社会課題の認識、リスクと機会、マネジメント)」「KPI」「ステークホルダー」「今後の課題」が、分かりやすく説明されています。今後、これらのマテリアリテイが価値創造に向けた「統合思考」につながることが期待されます。
  • 2008年に策定されたマテリアリテイの見直し中ですが、その基準としてグローバルレベルで2030年までの社会課題解決をめざすSDGsを採用されたことは一つの見識だと思います。ただし、日本国内を主要市場とする企業としては、最大の社会課題である急激な少子高齢・人口減少にも留意する必要があります。
  • 激変する事業環境に対応するには、同質化した組織から多様な価値観を持つ組織への転換が不可欠です。日本では「働き方改革」が経営課題となる中、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方のもと、「KDDIグループ人権方針」の策定、LGBT対応 (配偶者の定義改定)、外国籍社員の採用、多様な働き方を支える制度の制定などは高く評価できます。
  • 新たな環境保全計画「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」が、従来とは異なり、14年という長期視点から策定されたことは注目に値します。その中で省エネ目標を越えて、CO2排出量削減目標を総量で示されたことの意味は大きいと思います (KDDI単体 (国内): 2013年度比で2030年度7%削減)。
  • しかし、この削減目標は、日本政府の地球温暖化対策計画における産業部門目標7%には合致しているものの、家庭部門や運輸部門等をいれた日本全体の中期目標値26%には及びません。
    これまでの基地局の消費電力低減を始めとする業種特性を踏まえた様々な取組を理解したうえで、敢えて申し上げれば、「パリ協定」が発効している現在、新長期計画を実施する中で目標数値の見直しに期待します。
  • そこで「SBT (科学的根拠に基づく目標設定)」の検討をお勧めします。これは、ESG投資家も着目するTCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) による低炭素経済への「移行リスク」とその「財務インパクト」につながるからです。また、「CDP気候変動」では国内通信業界トップに甘んじることなく、最高位の「Aリスト」を視野に入れるべきだと思います。
  • 本「統合レポート (ESG詳細版)」を外れますが、最後に統合報告書のあり方について、IIRCの「国際統合報告フレームワーク」に基づき見解を述べます。
  • 本来の統合報告書は、長期的・構造的な事業環境の変化を背景に、戦略的見地から財務・非財務要素を包括的に結合して、どのように企業価値を創造 (毀損防止) するのか、すなわち「統合思考」を記載するものです。世界のESG投資家は「ポートフォリオの脱炭素化」に取り組んでおり、CO2排出量の多い企業は投資対象外となります。それゆえ、日本を代表する通信事業会社として長期戦略の策定とその実践に期待します。

第三者意見を受けて

統合レポート2017 (ESG詳細版) へ貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

本年のレポートでは、昨年に引き続き、投資家の皆さまに向けたESG情報の発信を強化し、積極的、網羅的に情報開示いたしました。また、CSR経営をより認識いただけるよう「KDDIフィロソフィ」および「KDDI行動指針」を基盤に、「事業を通じたCSR」と「事業を支えるCSR」といった、当社のCSR体系に則ったレポート構成に変更いたしました。またCSR経営については、「働き方変革の推進」のほか、自社のCO2排出量について、2030年度に2013年度比7%削減を目標とする新たな環境保全計画「KDDI GREENPLAN 2017-2030」の策定・公表等、CSR経営の強化、深化に向けた取り組みを実施いたしました。

情報開示については、「報告書の全体構成がより分かりやすくなり、CSRの本質に対する認識がうかがえる」、またCSR経営に関しては「多様な働き方を支える制度の策定などは高く評価できる」、「CO2排出量削減目標を総量で示されたことの意味は大きい」とご評価いただき、大変うれしく思っております。

一方、情報開示において、本文の各論における課題や是正策記載のご提案をいただきました。また、どのように企業価値を創造 (毀損防止) するかを述べる「統合思考」の記載については、ご期待に応えるべく真の統合思考を目指し、改善を検討してまいります。引き続き、ステークホルダーの皆さまから求められている情報に関し、誠実で分かりやすい開示を推進し、当社の事業活動がステークホルダーの皆さまや社会に対して価値を生み、また当社の長期の価値創造に繋がるCSR経営を推進していく所存です。

KDDIは、今後も、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを大切にしながら、SDGsや日本特有の社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献していきます。

写真: KDDI株式会社 CSR・環境担当役員 総務・人事本部長 土橋 明

KDDI株式会社
CSR・環境担当役員
総務・人事本部長
土橋 明

KDDI

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