2009年6月 社長会見

安心・安全

競争政策

  • 以前、NTTのアクセス網について言及をしたことがあるが、NTTの再々編論議をどのように考えているか。
    2010年問題を含めて、今の時点で断定的にアクセス網を分離すべきとは言うべきでないと考えている。
    NTT再編から10年、来年4月は電気通信自由化からちょうど25年になる。組織論や規制論を議論する前に、25年間自由化を進め、NTTを持株会社のもとで分離し、どういう成果があって、何が足りないかという点をしっかり議論すべきだと思っている。その上で足りないところは何で、それを実現させる為にはどうすべきか議論していかないと方向を間違えるのではないか。
    25年間NCCの立場で見てきた中で、競争の導入によって成果が出ている部分と、そうでない部分とが明らかになって来ている。
    携帯電話については、NTTドコモの分社もあったが、それ以上に技術革新と規制緩和でここまで伸びてきた。携帯電話サービスは音声通信だけでは将来的に行き詰ると考えてわれわれはEZweb、ドコモはiモードを出すなど、お互い競争してきた。それによって携帯電話サービスの一段の飛躍があり、さらにFelica、ワンセグの導入で利便性を高めている。
    これらは規制当局から指示を受けて生まれたサービスはなく、すべて事業者間の競争で生まれている。唯一規制があったのは、3Gの免許を受けた際、人口カバー率に条件を付けられた点。つまりインフラには普及促進の為に条件があったが、それ以外ではない。競争の導入によって初めて、インフラ促進だけでなく、より上位レイヤーの利用分野でのサービスが生まれている。少なくとも利用分野を開拓したのは、事業者間の競争である。
    固定通信については、1985年に自由化が始まり、まずは長距離電話や国際電話の料金競争により料金が大幅に下がった。
    ここまで値下がりすれば、通常は音声トラフィックが増えるのが普通であるのだが、残念ながらトラフィックは大きく増えていない。これは長距離通信について価格弾性がなかったということである。理由としては料金自体が高かったということと、米国で当たり前であった市内定額がなかったからである。米国でも昔、長距離通話は高かったのだが、これが値下がりすれば当然長く話すように変わる。日本はそうならなかった。
    同時に、上位レイヤーでのサービス競争が惹起されたか。音声通信の価格競争は確かに進んだが、新しいサービスが出たといえるのはインターネットだけ。料金競争が長距離電話や国際電話にしかなかったので、インターネットをダイヤルアップでつなぐにしても、米国では当たり前の定額制などはなく、なかなか普及しなかった。日本では市内通話の競争が何もなかったので、NTTはそのような要求に答えようとしなかった。それどころか、独占であった基本料金の分野では、値上げまで行っている。
    固定通信の料金やサービスは、ADSLが出てくるまでの間、なかなか競争が進まなかった。ましてインターネット上でのサービスは、5年前、10年前から大きな変化がない。一方、携帯電話の料金においては、当社が料金定額制を導入し、普及している。つまり、競争のないところでは、新しい需要の創造も、新しいサービスも出ることがなく、それによって、国民生活が豊かになることもないということである。
    結果として、国民の皆さんがどうなっているかというと、今の状況 (NTTのサービス) で不便がないと思ってしまっているのではないか。
    組織論の前に競争の必要性を国民の皆さんにご理解いただく必要があると思う。
    組織論や規制論というのは、結果として何をすればいいかという議論であり、日本の電気通信に競争が必要だと思っていなければ、組織論を議論しても意味がない。
    本当に競争が必要であると国民の皆さんが思っているのかどうか、それをわれわれや皆さんが伝えているのかが問題なのである。
    今後は規制論、政策論、組織論ではなく、事実としての25年、10年の競争で何が起こり、何がメリットで何が問題かの事実関係をご理解いただけるようにしていきたい。同時に技術の進展に伴い、どうあるべきか、技術的な観点から一番よい競争の姿をお話していきたいと思っている。
    1985年自由化の際、NTTがISDNを進めているときも問題となったのは、相互接続料金が高く、新規参入事業者がサービスを進められる料金でなかったということ。
    結果としてISDNがどうなったか、ISDNを一番助けたのはPHS (現WILLCOM) であり、PHSがISDNの交換機を結果的に増やしたと言える。
    ISDN上での利用形態は、Dチャンネルなどさまざまな機能があったにも関わらず活用されなかった。もっと最初の時点からデジタルでインターネットができる環境を伝えていけば普及の余地はあったと思っている。NGNも同じになるのではないか。NTTはNGNをクローズドネットワークとして構築している。
    アクセス系を閉じこんで、ほかの事業者にはネットワークのノード・インターフェイスしかないというネットワークを作ることは、技術上も問題があると思っている。
    競争がない世界は進展・進歩がないと私は信じている。皆さんと共に、国民の皆さんに競争の必要性をといていく協力をお願いしたい
  • NTT問題について、組織論ありきではないとの話だが、特に光通信市場については、競争がないと新しいサービスが生まれないと思う。競争を導入するとすれば、アクセス分離の問題なのか、8分岐なのか。
    FTTHの競争が、何をもって競争と言うのかと考えている。
    3GもLTEも基本的にはエリアカバレッジの点などが、政府から免許もらう条件となっている。しかしFTTHについては何もなく、エリアをどこまで広げるということもNTTは明確にしていない。
    2つの要素があり、インフラをどれだけ早く普及をさせるかと、インフラの上で生まれてくるサービスはどうするのかということ。まず、インフラ普及のテンポをどうするのか、その時にすべてNTTに任せるのか、地方は自治体が構築するのか、という議論をしなくてはならない。そして最後にはFTTH上のサービスをどう開発するのか、というところに行かなければいけない。
    あくまで私見であるが、米国でPCやインターネットが普及した一つの理由は、ほとんどの国民が自ら所得税を申告する必要があり、申告時期にソフトウエアが売り出され、インターネットやPCを利用している。これは、(米国の) 電子政府が納税問題について環境を作ったからであり、インターネットやPCの需要が喚起されている。日本も電子政府を推し進めなければ、米国のように良い回転にはならないのではないだろうか。
    利用環境があり、競争が生まれる。競争は必要である。
    FTTHの問題について、過去、KDDIは投資をせずNTTのインフラにただ乗りしていると言われたことがある。そこでわれわれはパワードコムやCTCとの事業統合を行った。それによって、設備競争をどこまでするのかということが一点にある。また、設備競争を全国津々浦々するのは難しく、一方で設備競争をやっているところでサービス競争をするのかという問題もある。設備競争をするエリアと、NTTの設備の中でサービス競争をするエリアとに分かれてくるというのが現実的なのではないか。
    これは皆さんのご意見を伺いながら検討していきたい。
  • 設備投資はそこまでする必要があるのか。
    一つ目は、実際に自前設備もたなければ何がおこるのかわからないということ。パワードコム、CTCなど、自前で設備を作って初めて、やはりNTTでないと出来ないと気づく点もある。NTTは、NTTに民営化されてから作った設備をなぜNCCに貸さなければいけないのかと言っているが、問題は、線路敷設基盤。電力会社と組むことによって問題ないのではと思われるが、実は電気事業用と電気通信事業用では許可を別にとらねばならない。対して、NTTは電気通信事業用の銅線があるから、光回線への張替えは許可が不要となっている。このような点で明らかな差がある。
    ある程度の設備競争がなければこのような点はわからないのである。
    二つ目は、コストの問題。NTTを高いというのは簡単であるが、自前で設備を作って初めてどれくらい下げられるのかわかるという点もある。そういった意味で設備のコストを下げるには、競争は必要である。
  • 携帯電話の帯域も広がってくる中、光ファイバーのネットワークにここまで投資する必要があるのか。
    光ファイバーのネットワークがなければ、携帯電話 (KDDI) もUQコミュニケーションズもネットワークを構築することは出来ない。携帯電話の基地局までは無線だが、その先には光ファイバーがある。品質向上やエリアの拡大、キャパシティを上げる為にセルサイトはどんどん縮小しているが、このセルサイトから先は全部光ファイバーであり、ここに競争がなくなれば、独占的な部分が値上げされても致し方ない。そうなれば、携帯電話 (KDDI) もUQコミュニケーションズも料金を上げざるを得なくなる。
    携帯電話の高速化については、カタログスペックを一つの基地局で収容している顧客数で割った分しか利用できない。それが無線の宿命である。
    将来的に、例えばハイデフィニションTVのビデオオンデマンドを本格的にやるにはやはりFTTHがなければならない。そういった意味で、FTTHが日本の電気情報通信の基盤であるということは間違いない。

au全般

  • 夏モデルラインナップについて、機種数を絞り、先端的なモデルに絞った印象を受けるが、販売店、ユーザーの反応をどう思っているか。「auらしさ」の回復はどこまで来たのか。
    夏モデルについては、「auらしさ」の回復含め、お客さまの反応をもう少し見たい。
    「auらしさ」は端末だけではない。まだまだ「auらしさ」を回復していく為に、ほかのことも検討していかなければならない。
    夏モデル端末について、出来はかなりいいものだと思っている。「biblio」については、電子辞書などユニークな機能がある。電子辞書も、Felicaやワンセグに続くものとなる可能性もあり、このように携帯電話の利便性を高める取り組みは行っていく。
  • iPhone 3GSが2日後に発売されるが、感想はどうか。
    iPhone 3GSは、まだダイレクトには触ってないので何とも申し上げかねる。
    規制問題にも関わるが、日本の携帯電話市場をガラパゴスと言った話があったが、iPhoneは世界でサブシディモデル (注: 通信キャリアが販売手数料を出すことで店頭での端末販売価格を下げるビジネスモデル) を展開している。
    われわれはその当時から、海外でも、先行している日本に続いてサブシディモデルを出す可能性が高いと言っており、現実そうなった。これについての考え方を、皆さんにはぜひメディアで取り上げていただき、総括してほしい。
    iPhone登場による競争激化は当然と思っているし、われわれも端末・サービスにおいて勉強していく必要があると考えている。
  • アンドロイド搭載モデルについて、現在の開発状況は。
    開発は進めているが、発売時期は来年以降ということで、まだ明確に申し上げる段階ではない。

LTE

  • 3.9Gについて、2012年サービス開始ということで、ドコモを始め他社と比較して最後発となるが、勝算はあるのか。
    LTEについて、われわれは携帯電話タイプを目指して導入する。
    携帯電話に搭載できるようなチップセットが世の中に出てくるのは2011年以降か、少なくとも2010年の時点ではない。2010年時点ではカードタイプのみと聞いている。われわれはあくまでも携帯電話の世界での利用を考えており、本当の競争は2012年度以降と考えている。LTEは非常に重視しており、エリアを早く拡張したいと思っているので、そういった面では、スタート時点の早さは関係ないのではないか。

景況感

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