No.2002-2052002.12.27

「東・西NTTの進出業務に関する当社意見」の提出について



KDDIは、総務省の諮問機関である情報通信審議会電気通信事業部会による「東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の日本電信電話株式会社等に関する法律第2条第5項に規定する業務に係る認可申請に関する意見募集」に対応して、本日、総務省に意見書を提出しました。
概要は以下のとおりです。



1.基本的考え方
(1) 結論
今回の申請内容は、東・西NTTの進出業務と競合事業者との間の公正競争条件を促進する内容でないことから、不認可とすべきと考えます。
(2) NTT再編成の形骸化
1) 地域通信市場の競争が進展していない現状で、今回の申請が認可された場合、東・西NTTの独占が一層助長されることとなり、NTT再編成の目的に逆行し、結果としてお客様の利便性向上に資する公正競争を確保することはできないものと考えます。
2) NTT持株会社の連結決算対象会社であるNTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)が県間通信(インターネット等を含む)を提供する状況の下で、同様にNTT持株会社の傘下にある東・西NTTの業務範囲を県間通信へと拡大させることは、NTTグループの独占力を一層助長することとなると考えます。
(3) 地域通信市場の競争進展の実態
1) IT部会第一次答申では、「インセンティブ活用型競争促進施策」として、東・西NTTの業務範囲拡大をインセンティブとして、地域通信市場の競争促進を求めることとなっています。
2) 東・西NTTの業務範囲拡大は、まず実態として地域通信市場での競争が進展して初めて認められるべきものです。
3) 東・西NTTが、加入者回線の99%以上のシェアを有しており、地域通信市場の競争が進展していない現状においては、東・西NTTの業務範囲拡大は認められるべきではないと考えます。
4) よって、東・西NTTの再編の趣旨に立ち返り、また、お客様利便の向上のためにも、実態としての地域通信市場の競争促進を前提とした東・西NTTの業務範囲拡大に関する議論がなされるべきと考えます。
(4) 申請内容に応じた審査
1) 「東・西NTTの業務区域拡大に係る公正競争ガイドライン」(以下、ガイドライン)に従い、個別の業務の性格に応じた審査及び判断をすべきと考えます。
2) 併せて、ガイドラインを踏まえ、「電気通信事業の公正な競争の確保に支障を及ぼすおそれ」の程度の評価にあたり、例えば以下の事項について、個別の業務の性格に応じた審査及び判断をすべきと考えます。
(1) 追加的措置の実施
(2) 市場支配力
(3) ボトルネック設備との関連性
(4) ボトルネック設備以外の要素
(5) 新たに指定電気通信設備に指定する/指定電気通信設備の扱いに準じて措置を講じる必要の有無
(6) 営業面でのファイアーウォールの具体的内容の検討
(7) バンドルサービス
3) 今回の申請についても、NTT再編成時の措置(「日本電信電話株式会社の再編成に関する基本方針」及び「日本電信電話株式会社の事業の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画案」)と同様の措置がなされるべきと考えます。
【NTT再編成時の主な措置(抜粋)】
(1) 地域会社と長距離会社との間の役員兼任は行わないこと
(2) 地域会社と長距離会社との間において在籍出向は行わないこと
(3) 持株会社及び承継会社の短期借入については、それぞれ個別に実施すること
(4) 持株会社及び地域会社は、長距離会社と共同して資材調達を行わないこと
(5) 地域会社と長距離会社との間の接続形態は、地域会社と他の電気通信事業者との間のものと同等にすること
(6) 地域会社と長距離会社との間の接続条件は、地域会社と他の電気通信事業者との間のものと同一とすること
(7) 地域会社と長距離会社との間の電気通信役務の提供に関連する取引条件は、地域会社と他の電気通信事業者との間のものと同一とすること
(8) 長距離会社は、独立した営業部門を設置すること
(9) 地域会社と長距離会社との間で提供される顧客情報その他の情報は、他の電気通信事業者との間のものと同一とすること
(10) 持株会社及び地域会社が、長距離会社に対して行う研究成果に係る情報の開示の条件は、他の電気通信事業者に対するものと同一とすること


2.個別事項(抜粋)
(1) 地域電気通信市場における競争の進展状況
1) 地域通信市場においては、東・西NTTが、加入者回線の99%以上のシェア(設備ベース)を有しています。「地域通信市場における競争の進展状況」は、「比較的競争が進展している」か否かの基準ではなく、事前に決定したガイドラインに規定する、「競争が進展している」か否かの基準により判断すべきと考えます。
また、ガイドラインにおいては「設備ベース」の競争進展を基本とする旨規定されており、「サービスベース」のシェア(ADSLにおける東・西NTTシェア「40%」など)のみによってこのような判断をすべきでないと考えます。
2) 総務省の考え方で示されている「フレッツサービスと同等のサービスにより構成される市場」について、その市場の範囲を画定した理由を示すべきと考えます。
(2) ボトルネック設備との密接関連性
本来業務の経営リソースを流用する場合の例を考慮すると、フレッツ・ADSLの東・西NTT地域におけるシェア「40%」のみで競争進展を判断すべきではなく、電話(基本料含む)、専用線等の本来業務と併せて評価すべきと考えます。
【本来業務の経営リソースを進出業務に流用する場合の具体例(一例)】
加入電話料金請求書へのフレッツサービス等の営業チラシ封入
加入電話とフレッツシリーズとの合算請求
アカウントマネージャーの営業活動(顧客情報の流用等)
高いシェアを有する本来業務とのバンドルサービス
(3) ネットワークのオープン化
東・西NTT指定設備利用部門と接続事業者との公正かつ有効な競争の確保の条件について、以下のとおりと考えます。
1) 公正競争の確保
東・西NTT指定設備利用部門と接続事業者との公正競争の確保のために、接続事業者が必要とするアンバンドル・接続条件が適正に規定されていること。(収容局での振り分け機能の必要性、ダークファイバの提供期間の同等性など)
2) 有効競争の確保
市場環境の活性化、ユーザ利便の更なる追求(利用者料金の低廉化、多様化を進展)のため、東・西NTT指定設備利用部門と接続事業者との間で適正な有効競争が確保されること。(実効的競争の必要性、フレッツサービスのアクセスチャージ化、コンテンツ配信機能のオープン化、フレッツオフィスのキャリアズレート化など)
(4) 営業面でのファイアーウォール
1) 東・西NTTが講ずることとしている措置では不十分と考えます。
具体的には、営業面でのファイアーウォールについては、例えば、本来業務と進出業務との一体での営業体制における営業活動、料金請求の禁止、本来業務において獲得した顧客情報等を利用することの禁止、電話等の請求書への進出業務の営業チラシの同封を行うことの禁止等の項目が含まれることを明記すべきと考えます。
2) 営業に関し、本来業務と進出業務との間で明確に分離することが必要と考えます。


3.その他意見
(1) パブリックコメントの機能強化等
今回のパブリックコメントが提出された後、申請に対する「判断(案)」と「考え方(案)」が出された段階で、それらに対し(1)再意見募集を行う(2)公開ヒアリングを行う等の方法によって、議論を深めるべきと考えます。
また、併せて、東・西NTTの進出業務に関する認可申請については、情報通信審議会への義務的な諮問事項とすべきと考えます。
(2) ガイドラインの見直し
ガイドラインには、「おおむね制度施行後1年程度を目途に見直す」旨、規定されており、ガイドライン施行から既に1年を経過していることから、ただちに見直しを行うべきと考えます。



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