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<シリーズ: 事例で見るスマートフォンで生産性向上 (その4)>
本シリーズでは、中小企業が『スマートフォン』を活用することで生産性を向上させた事例について取り上げます。
製造業D社でも、若手社員の多くが個人的にスマートフォンを利用していますが、「便利だから」と『個人のスマートフォン』をこっそり業務利用する人も現れはじめました。これに危機感を感じたのがD社の情報システム部門。『個人のスマートフォン』を業務利用するデメリットとは何なのでしょうか。
今や20代でのスマートフォン利用率は94.2%を超え、30代でも9割以上、全世代の平均でも半数以上の人がスマートフォンを使うという時代になっています (注)。さらに情報収集手段として、これまではパソコン経由でのネット接続から、スマートフォン、タブレット端末経由での情報収集へとシフトが進んでいます。製造業D社でも、多くの社員が個人的にスマートフォンを持ち、家族や友人とのやりとりには個人向けのSNSを日常的に利用していることから、社内でのメールを使ったやりとりなどには「もどかしい」と感じる気持ちもあるようです。
このような理由からか、若手社員の一部ではちょっとした連絡はもちろん、重要なファイルのやりとりすら、『個人スマートフォン』から個人向けSNSを使って行っていることが分かりました。本人たちは「私用でも問題なく使えているし、社外に漏れることはない」と言っていますが、これまでも個人向けSNSでは、アカウント乗っ取りなどによるなりすまし事件などが発生した例もあり、万が一、情報漏えい事件が発生したら、企業にとっては大きなダメージとなりかねません。
情報漏えいが発生すると、このようなダメージを受けることが考えられます。
そして、最終的には、上記の理由から経営が困難になり倒産というケースすらありえるのです。
情報漏えいへの危機感を感じはじめたD社の情報システム部門は、「個人利用のスマートフォンの業務利用は禁止」との全社通達を出しました。しかし『スマートフォン』の便利さを感じている社員たちは、より一層『こっそりと』個人利用のスマートフォンを使うようになっただけで、効果は現れなかったのです。こういった『会社の管理下にない (=管理側からは把握しにくい)、IT機器 (ここでは個人のスマートフォン) を業務に利用すること』は『シャドーIT』と呼ばれ、近年その脅威が指摘されています。
そこでD社の情報システム部門は、「スマートフォンが便利であることは認める。その上で、安全に活用するにはどうすればよいのかを検討すべきだ」と、現状を肯定したうえで対応を考えることにしました。
そこでD社は、これまで社員に貸与していた携帯電話 (フィーチャーフォン) を、『スマートフォン』に切り替え、業務で使うのは『会社が貸与したスマートフォン』のみと限定しました。
合わせて、端末の利用を制限するセキュリティ機能などの各種設定などを管理者側から一括で行うことができるサービス (MDM『モバイルデバイス管理サービス』) も導入したことで、より安全に『スマートフォン』を業務利用できるようにしました。また、万が一紛失した場合には、管理元から遠隔操作によるロックや初期化などもできるため、情報漏えいの危険も最小限に押さえることが可能です。
さらに、コミュニケーションツールとして、一般的に広く普及しているLINEと連携でき、使い勝手も共通しているビジネス用SNSも導入しました。多くの社員が使い慣れているLINEとほぼ同じ使用感のため、抵抗なく使いはじめることができるうえ、社内のみの限定利用というセキュリティ制限もかけられ、ログの保管も行えるアプリケーションです。
社員は慣れ親しんだコミュニケーションが認められたことから、自然に業務上の連絡は個人利用のスマートフォンを使うことをやめて、貸与された『会社のスマートフォン』を活用するようになりました。そもそも、「便利で生産性の高いツールを使いたい」という理由からスマートフォンを使っていただけなので、切り替えはスムーズでした。
同時に、社員向けの情報漏えいリスクに関する教育も実施。改めて個人利用のスマートフォンを業務利用することのリスク、情報漏えいなどが起こった場合、企業にどのようなダメージがあるか…などを全社員が学びました。
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ただ「禁止」するだけでは、個人利用のスマートフォンの使用は、より潜伏的になる危険性もあります。企業側から生産性向上とセキュリティの両立を考えて、本事例のように『業務で安全に使えるスマートフォン』を貸与するといった対応を行うことも一案です。
ぜひ、自社の現状と照らし合わせて検討してみてはいかがでしょうか。
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