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本シリーズでは、中小企業における、新卒・中途の採用業務の効率化を実現する方法や事例などを紹介していきます。
2015年あたりから顕著に言われるようになったことが『内定辞退の増加』です。今回は、その背景と原因、対応策を考えていきましょう。
売り手市場の新卒採用で、企業の採用担当者の嘆きは切実なものがあります。特にここ最近、現場からよく聞こえてくるのは「内定を出しても安心できない」という声。「内定を出して安心していたら10月の内定式直前に辞退された。それも10人の内定者のうち4人に」というケースも耳にします。中には、10人以上に内定を出したのに、結果として入社に至ったのはたった2名という会社もあったようです。
上記は、経団連のアンケート調査ですが、ここでも半数以上の企業が「内定辞退者が増えた」と回答しています。また、そのために追加募集を行った企業も少なくないことも分かります。そんな時期に追加募集をして学生が集まるのかというと、時には優秀な学生に出会えるケースもあると聞きます。
これは、2015年8月1日現在、つまり選考解禁日時点の学生の状況を調査したものです。すでに7割近くの学生が内定を得ていますが、内定を得た学生のうち半数もが「就職活動を継続する」と回答しているのです。中には「絶対数は少ないが、一部上場企業の内定を持つ学生が面接を受けに来た」と驚く中堅企業の担当者もいました。売り手市場ということもあり、「少しでも条件が良い企業に就職したい」と活動を継続する学生が多いようです。
2017年入社組の中にも、内定を得ているのにまだ就職活動を続けるという学生は少なくないでしょう。採用担当者の中には「企業研究の期間が短縮されたので、学生はもっと多くの企業を知りたいと思っているのではないか」と言う人もいます。なかなか採用数を確保できない企業にとっては、採用のチャンスが増える一方、「せっかく内定を出した学生が逃げるリスク」が気になることでしょう。
では内定辞退を防ぐためには何が必要なのでしょうか?
それは『学生との適度で適切なコミュニケーション』です。かつては、定期的に研修や懇親会を開くといった内定者フォローが一般的でしたが、現在ではSNSやメールなどを活用したコミュニケーションが増えています。
学生側も、内定後に適度なコミュニケーションがないと「放っておかれている」と感じるようです。ただ、学生とのコミュニケーションは社会人同士のものとは勝手が違います。
学生とのコミュニケーションにおけるポイントは、時間です。社会人同士なら、夜間の連絡は避けるものですが、学生と連絡を取りやすいのは基本的に夕方以降です。そうなると1人の採用担当者ではあまりにも負荷が高くなります。
負荷軽減のためには、面接を行った面接官やリクルーターなど内定者と接触があった社員を巻き込んで、1対1ではなく1対多で対応することが有効です。採用担当者の負荷が減るばかりでなく学生とのコミュニケーションが密になることも期待できるでしょう。
さらにスマートフォンやタブレットというツールを活用することで、夜間でも学生からの質問にすぐ返信できるようになるなど、より柔軟な対応も可能となります。
このように同時に複数のスタッフでコミュニケーションを取る場合、気を付けるべきことは、『コミュニケーションの手段』です。個人情報を扱いますし、時にナーバスな情報も出て来ると思われますので、部外者のアクセスを制御できるコミュニケーションツールなどセキュリティを確保した環境を準備する必要があるでしょう。
加えて、いつでも手軽に連絡を取り合える手段であることが望まれます。ビジネス上の連絡はメールが主要な手段ですが、学生はメールよりもチャットやSNSになれている傾向があります。採用担当者からは「学生とのやりとりにはSNSは欠かせない」という声も聞かれます。
「同じような条件の会社ならば、コミュニケーションが密な会社を選ぶ傾向がある」と言う採用担当者も少なくありません。もし複数内定を得ていて他社を選ぼうとしていたとしても、普段から密なコミュニケーションが採れていれば早期にそれを把握し対応することもできるでしょう。
内定を出したら内定式まで連絡しない、内定式後から入社までの連絡が数回だけ、というのは好ましいことではないのです。
次回は、内定辞退を防ぐ具体的な対応策を事例でご紹介します。