可能性にあふれる、
すべての子どもたちへ。

ネパールでの
ICT教育支援

KDDI財団 (出向)

中山 善博

KDDIが世界展開するデータセンター「TELEHOUSE」のニューヨーク拠点、香港拠点などでグローバルの運用保守業務に携わったのち、KDDI財団へ。現在はモンゴルやネパールなどのアジア諸国を中心に、ICTを活用した国際協力事業を行っている。

アジア諸国の
社会課題と通信技術をマッチング

入社以来、長年グローバル分野に携わり、2015年からSDGsの達成に向けて社会貢献活動を推進するKDDI財団に勤務しています。配属後はアジア各国でICT普及事業に参画し、モンゴルの辺境の集落でインターネットが使えるようにしたり、バングラデシュで農家支援のためのモバイルアプリを開発して農村に提供したり。やがて自分でもプロジェクトを立ち上げたいと思うようになり、注目したのがネパールです。ヒマラヤ山脈に臨む美しい国ですが、経済的にはまだまだ発展途上。KDDI財団としてできることがあるのではないかと考えました。

国際協力事業で要となるのは、現地で必要とされていることと、スキルのある組織や人材とのマッチングです。適切な座組みを作るため、日本国内で地方の課題に取り組むKDDI地方創生支援室や、アジア太平洋地域の都市問題の改善を目指す組織などにプロジェクト設計の仕方を相談しながら、ネパールが抱える社会課題に対して何ができるかを考えていきました。

「教育の普及」と「質の向上」、両輪で

結果、辿り着いたのがプログラミング教育です。日本の小学校では、論理的思考や問題解決力を養えるとして導入されていますが、ネパールでは普及していない状況。現地の教育関連NGOや、これまでの支援活動を通してつながりのある国内の大学にも協力していただき、首都カトマンズに隣接するラリトプール市の小・中学校にプログラミング教育のカリキュラムを導入しました。10校に子ども用のプログラミング入門キットとブロック教材を配備し、クラブ活動や授業での活用を進めています。

ネパールにはまだまだ学校に行けない子どもたちも多く、プログラミング教育よりもまずは学ぶ機会を与えられない子どもたちの境遇を改善すべきだという考えもあります。それでも、実際に現地を訪れてみたことで、従来から英語教育のレベルが高く、人材としてのポテンシャルの高さを感じ、その能力をしっかりと伸ばせる環境をつくりたいと思いました。

実際にプログラミングを体験した子どもたちは驚くほど理解が早く、どんどん率先して取り組んでくれます。また、PCを配備したことで、これまで学校への関心が薄かった保護者が子どもを学校に行かせるようになるなど、子どもを取り囲む周辺の意識向上にも寄与しました。SDGsの「質の高い教育をみんなに」との目標にもあるように、教育を普及させると同時に、レベルアップに取り組むことも大切です。

テクノロジーを通し、
教育の普及に貢献を

プロジェクト推進中に、世界へ広がった新型コロナウイルス感染症。ネパールでも感染が拡大しました。そんなコロナ禍で課題となったのは、感染拡大防止の観点から学校が閉鎖され、プログラミング教育の継続が難しくなったこと。家庭でも学習が続けられる設備の必要性を強く感じ、教科書とタブレットを併用した自宅学習の仕組みを構築するための機材配備を進めています。

コロナ禍で顕著になったのは、家庭のICT環境や保護者のリテラシーによって子どもたちの学習機会が左右され、学力の二極化が進むこと。日本でも同様の課題が表出しました。この状況を前に、国内でもテクノロジーを使った教育活動にも貢献していきたいと、思いを新たにしました。ネパールでの取り組みを機に、学校でのICT活用を支援するICT支援員の資格を取得しているので、今後は日本の地域の教育活動にも携わっていけたら、と考えています。

社会貢献活動がビジネスの芽にもなる時代へ

30年以上の会社人生を振り返ると、KDDIはさまざまなことにチャレンジさせてくれる会社だと感じます。学生時代から興味のあった海外勤務をはじめ、ネパールで一からプロジェクトを立ち上げたことも私にとって大きなチャレンジでした。現地でのプログラミング教育はパイロット運用段階ですが、しっかりと効果検証を行い、教育基盤整備に寄与できるものにしていきます。

これまで日本では、社会貢献活動とビジネスは別物ととらえられる傾向がありました。しかし、2015年に国連がSDGsを策定して以来、事業を通して社会に貢献する企業が増えており、私たちKDDIグループも、社会の持続的な成長に貢献することを目指しています。

そして、どんなに社会的に意義がある活動でも、継続のためには収益を生む仕組みが必要です。現地の政策やビジネスにつながるよう、活動のすそ野を広げていきたいと思います。それが、日本、そして世界の発展に寄与することになれば嬉しいです。

  • 所属・内容等は取材当時のものです。