できることは、すべてやる。
ただ、それだけ。

震災から10年目の
新たな決意

【特別取材】
KDDI災害対策訓練

中村大輔 (写真右) 技術統括本部 運用本部 運用管理部 ネットワーク強靭化推進室
伏見直樹 (写真中央) 技術統括本部 運用本部 東日本運用センター 仙台フィールドグループ
福島圭史朗 (写真左) 技術統括本部 運用本部 東日本運用センター 仙台エリア品質グループ

中村: auのサービス企画業務を担当したのち、東日本大震災翌年の2012年に仙台テクニカルセンターに異動し、運用業務に携わる。現在は運用管理部で災害対策などを担当。

伏見: 1996年の入社以来、仙台テクニカルセンター (現・東日本運用センター) に勤務。主に東北エリアの基地局建設や通信ネットワークの保守・運用の現場業務に携わっている。

福島: 運用部門にて北海道・東北エリアの通信品質の管理や改善業務を担当。災害時には全国の拠点と協力し、地域を横断して復旧作業にあたっている。

あれから10年。
通信事業者が担う、災害への備えとは

福島: 未曾有の大災害となった東日本大震災から、2021年で10年。この10年の間に通信の役割は重要度を増し、"いつでもつながる"ことが当たり前の世の中になっています。そんな当たり前を脅かすのが、自然災害。地震のリスクに加え、ここ数年は大雨による土砂崩れや河川の氾濫、台風による被害など、気候変動に伴い自然災害の被害も激甚化する傾向にあります。

伏見: KDDIではそうした災害に備えて、通常時から多種多様な対策を準備しています。有事の際にそれらをスムーズに活用して迅速に復旧作業を行えるよう、大規模な公開訓練を年1回、非公開の訓練は年間1万回ほど実施しています。

中村: 2021年2月には震災から10年を目前に、宮城県沖でマグニチュード9の大地震が発生したことを想定して、宮城県仙台市で大規模な訓練を開催。その模様をメディアにも公開しました。私たち通信事業者が災害時にも通信というライフラインを守るためにしっかりと対策を講じていることを、お客さまに周知して安心や信頼に寄与したいと考えています。

中村大輔 (ネットワーク強靭化推進室)

それぞれの場所から"つなぐ"を守る

中村: 私たち3名は、災害時それぞれ別の役割を受け持ちます。私が担当するのは全国における復旧対応を統制する災害対策本部パート。災害が起こるとただちに災害対策本部を立ち上げ、被害規模や道路状況などの情報を集約し、被災地の拠点と協力して復旧プランの検討・判断にあたります。災害時には全国から機材と社員を集めて対応を行うので、その手配や調整も担います。

福島: 私が所属するグループでは、遠隔ツールを用いて管轄エリア内の通信状況を確認しながら、中村さんが担当する災害対策本部とともに復旧プランを検討します。また、伏見さんが所属する現場担当のグループとも現地の情報を共有し、車載型基地局や可搬型基地局を使って市町村役場などの重要施設のエリア復旧を行います。

今回の訓練では、可搬型基地局の設営を担当しました。可搬型基地局は、パラボラアンテナの組み立てから運用までのスピードも重要なため、訓練では時間を計測しながら設営していきます。

伏見: 私のグループは、災害時真っ先に現場へ出向き、被害状況を把握したり、基地局を復旧したりする任務を担っています。しかし災害時には、浸水や土砂崩れ、道路陥没などで車載型基地局がたどり着けない状況が発生する可能性もあります。

そこでKDDIで進めているのが、多様な機材の導入。今回の訓練で私が担当した水陸両用車や四輪バギーは、2021年から国内通信事業者として初めて取り入れたものです。こうした多彩な機材によって浸水地や倒木などで道幅が狭くなったエリアでの復旧作業も可能となり、ここ数年増えている水害での復旧作業にも活用が期待できます。さらに通信の復旧だけではなく、被災によって孤立した地域への生活物資運搬にも役立てることができるのではないでしょうか。

伏見直樹 (写真右・仙台フィールドグループ)

10年の進化、これからの効率化

伏見: この10年、KDDIでは東日本大震災での経験を教訓に毎年災害対策訓練の見直しを行い、多様な自然災害での復旧作業の経験を重ねて、さまざまな状況に対応するための復旧手段を増やしてきました。もし同規模の災害が発生したとしても、10年前より迅速に復旧を行うことができると実感しています。

福島: たとえば10年前には車載型基地局・可搬型基地局は15台しか保有していませんでしたが、現在は全国に187台を配備。ほかにも船舶型基地局、ドローン基地局、そして今回の公開訓練でご覧いただいたヘリコプター基地局など、陸海空どこからでも復旧を進められるように準備しています。

中村: そして、今進めているのがDXによる災害現場対応の効率化です。以前は被災した基地局をホワイトボードに書き出して管理していましたが、現在は情報のダッシュボード化やIoTの活用により、被災した基地局の被害規模や車載型基地局の所在も、自動でオンライン上のマップに表示され、情報を共有できるようになりました。

現在は、本部と同じ情報を現場で共有できるモバイルツールも開発中です。災害現場では災害対策本部の復旧プランの全体像が見えにくい場面も多いと思いますが、DXを行うことで本部との情報伝達をよりスムーズにし、現場の負担を軽減していきたいです。

福島圭史朗 (仙台エリア品質グループ)

災害にも負けない、強い通信のために

福島: 災害はいつ起こるか予測できないものも多く、誰にも止めることができません。だからこそ、日頃から素早く復旧できる強靭な通信基盤と体制をつくっておく必要があります。

伏見: 通信は人々の暮らしに欠かせないものとなりましたが、災害時にはご家族同士の安否確認のためにも、より安定した供給が求められます。被災地での通信の復旧は危険を伴うこともありますが、通信事業者の一員として、この仕事の責任を強く感じています。

中村: 災害が起きたときのために、停電に耐え得るよう基地局のバッテリーを長時間化したり、回線をケーブル断線に強くしたりと、つながり続ける強いネットワークの構築に取り組んでいます。災害にも強い通信でお客さまの想いをつなぎ続けていくことを私たちの使命と捉え、これからも災害への準備や訓練を重ねていきたいと思います。

災害対策訓練に参加したKDDIの社員たち。

  • 所属・内容等は取材当時のものです。