エネルギーのバトンを、
次の世代へ。

脱炭素社会への貢献

パーソナル事業本部 サービス統括本部
エネルギービジネス企画部

三井 悠平

新卒から電力業界に勤め、2016年8月にKDDIへ入社。同年4月にスタートしたばかりの「auでんき」の拡大普及に取り組む。現在は、KDDIのエネルギー領域におけるカーボンニュートラルに関するプロジェクトも含め、中長期的な事業計画の策定と新しいエネルギーサービスの開発に尽力している。

「auでんき」は環境に配慮した電気へ

2016年4月の電力自由化に伴いスタートした「auでんき」は、現在約300万件のお客さまにご利用いただいており、地域電力会社を除いた新電力と呼ばれる新規参入事業者の中では、最も多くのお客さまにご利用いただいているサービスです。

これまでは、利用料金に応じたポイント還元というおトクさが支持されてきましたが、新たな取り組みとして、環境に配慮した「ecoプラン」を2021年9月よりスタートしました。これは、「非化石価値取引市場」を通じて、再生可能エネルギーによる発電事業者から、CO2を出さない電気の環境価値を証書のかたちで買い取り、提供する電気と組み合わせることで、お客さまはCO2排出量が実質ゼロの電気をご利用いただけるプランとなっています。

併せてお客さまから頂戴する利用料金の2%は、環境保全活動に寄付する仕組みにしています。寄付金は、主にアジア・太平洋地域で環境保全活動を展開する国際協力NGOを通じて、CO2排出量の削減にもつながる植林活動や森林整備などに活用されます。

カーボンニュートラルが社会的な課題に

2020年10月、政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これは2050年までに、日本全体のCO2排出量を実質ゼロにしようとする大胆なビジョンですが、KDDIは政府と同様の方針を同年5月に発表しており、その取り組みの一環として「ecoプラン」のプロジェクトを推進していました。

こうした流れも含めて、社会の環境意識の高まりも感じています。当社が行ったアンケートでは、相当数の方から、従来と同等の電気料金もしくは少し高い料金であっても、環境に配慮した電力プラン (グリーンメニュー) に加入したいとの回答がありました。世界的にサステナビリティが重視され、国内においても環境意識が高まるなかで、グリーンメニューは時代に則したプランと考えました。

一方で、まだまだ電気を選ぶ際に、料金が重視される傾向にあることに変わりはありません。そのような中でも環境貢献を重視するお客さまに対して、環境に配慮したプランという選択肢をご提供し、KDDIとお客さまが一緒になって環境保全に貢献し、その輪を着実に広げていくことができればとの思いで、「ecoプラン」の導入に踏み切ったのです。

KDDIの責任と挑戦

私たちの主事業である通信事業では、お客さまのデータをお預かりするデータセンターや携帯電話基地局を多く抱えているため大量の電気を消費しており、その電気を発電する際にCO2が排出されています。政府も掲げる「2050年カーボンニュートラル」を達成するためには、私たち自身が率先して環境貢献に対する姿勢を示すことが重要だと考えています。

「ecoプラン」の導入にあたっては、役員自らがホワイトボードの前に立って、環境への取り組みの考えをまとめる場面もあるほど、関係者全員で真剣な議論を重ねてきました。実際、他社のグリーンメニューと比べても、「ecoプラン」はかなり踏み込んだプランになっています。環境保全に対するKDDIの本気度を社会に示しながら、社会全体の環境保全に対する行動を促進していくことも私たちの責任だと考えています。

さらに、KDDIは「2050年カーボンニュートラル」実現にむけた中間目標として「KDDI GREEN PLAN 2030」を発表し、2030年度のCO2排出量を2019年度比で50%まで削減する、企業独自の目標を掲げています。まずは、データセンターや携帯電話基地局における各種設備を省エネ設備に更新するとともに、使用する電気を再生可能エネルギーに置き換える計画です。

しかし、日本全体としてカーボンニュートラルの目標を達成するにはこれだけでは足りません。電力会社が提供する電気の全てをCO2排出がない発電方法で賄う必要があります。そもそも、CO2を排出しない発電方法は日本全体で約20%に留まっています。これを100%に引き上げるというのは本当に大きな課題です。未来に達成すべき目標を念頭におきながら、KDDIとしても脱炭素への取り組みを加速させていきたいと考えています。

娘が生きる未来に、より良い地球環境をつないでいきたい

長らくエネルギー業界に身を置くなかで、エネルギー自給率が低い日本において、安価で安定的に調達できる、石炭をはじめとした化石燃料での発電も最大限活用しながら経済合理性を求めることが、国益としてもエネルギーセキュリティの観点からも、重要だと考えていました。

しかし、娘が生まれ、娘の将来を想像したときに、単純に自分たちの世代だけのことを考えた、短期的な経済合理性だけを追い求めることに疑問を感じ始めました。今回のプロジェクトのように、脱炭素の取り組みに注力するようになってから、企業として痛みを伴ってでも、カーボンニュートラルを実現させなくてはならないという考えに変わっていきました。

2050年時点では、私はまだギリギリ現役世代です。エネルギー事業に携わる立場として、そして小さな娘を持つ親として、この問題を子ども世代まで先送りにせず、自分たちの世代でカーボンニュートラルを実現させ、エネルギー問題や気候変動に悩まない社会を次世代へ引き継いでいきたいと思っています。

  • 「ecoプラン」は、ecoMプランおよびecoLプランの総称です。
  • 所属・内容等は取材当時のものです。