東京都奥多摩町で遠隔予防医療相談システムの実証実験を開始
~慶應義塾「コ・モビリティ社会の創成プロジェクト」の一環で実施~

慶應義塾大学
日本電気株式会社
KDDI株式会社

2008年12月8日

慶應義塾大学 (注1、以下 慶應義塾) は、同大学の「コ・モビリティ社会の創成プロジェクト」(注2、担当責任者: 金子郁容 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科委員長、担当者: 栗原毅 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科特別研究教授 (前 東京女子医科大学教授) 他) の一環として、日本電気株式会社 (注3、以下 NEC)、KDDI株式会社 (注4、以下 KDDI)と共同で、「遠隔予防医療相談システム」の実証実験を、東京都西多摩郡奥多摩町 (注5、以下 奥多摩町) の協力のもと開始しました。
本実証実験は、文部科学省 科学技術振興調整費における「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」により実施しており、最先端の情報・通信・移動体の技術を活用して、高齢化が進む地域におけるコミュニティ単位の予防医療を実現し、安心安全な社会創りを目指すものであります。

慶應義塾、NEC、KDDIは、本実証実験に向けて、コミュニケーション端末 (ユニファイドコミュニケーション® (注6) 対応型相談端末) ・タッチパネル型端末・血液レオロジー測定装置 (いわゆる血液サラサラ測定、注7) ・携帯電話・インターネット等を組み合わせた「遠隔予防医療相談システム」を新たに開発しました。本システムでは、地域集会所等に常設したコミュニケーション端末と都心部のクリニック・健康センターをネットワークで結び、地域集会所等で採血した血液のサラサラ度合いを都心から遠隔で診断したり、健康状態を定期的に管理し指導することで、住民の健康維持・向上や安心安全な町創りへの効果と有用性を実証します。
尚、血液サラサラ度合いがわかる動画を遠隔で住民と医師が共有するのは、世界初 (注8) の試みであります。

  • 注1) 塾長: 安西祐一郎、所在地: 東京都港区
  • 注2) 慶應義塾大学「コ・モビリティ社会の創成」
  • 注3) 代表取締役執行役員社長: 矢野 薫、本社: 東京都港区
  • 注4) 代表取締役社長兼会長: 小野寺 正、本社: 東京都千代田区
  • 注5) 奥多摩町長: 河村 文夫
  • 注6) ユニファイド・コミュニケーション®は、NECの登録商標。
    電話・メール・テレビ会議・Web会議などの様々なコミュニケーションツールを統合し、効率的なコミュニケーションを実現すること。
  • 注7) 血液レオロジー測定装置は、株式会社エムシー研究所開発商品です。
  • 注8) 2008年10月現在。株式会社エムシー研究所調べ。

●1. 実証実験の概要

(1) 目的
昨今、高齢化が進んだ地域や過疎地域においては、医師不足や予防医療の不足に直面している。遠隔医療の利用が問題解決のひとつの有効な選択肢であると期待されているが、これまでは、画像転送を介した専門医による支援など医師対医師の実践例はあるものの、住民が直接かかわるケースにおける有効性は十分に立証されていない。今回の奥多摩町での実証実験では、遠隔予防医療相談システムを地域コミュニティ単位で導入し、住民同士、あるいは、住民と医師・看護師の日常的なコミュニケーションを増やして予防医療の効果を上げ、健康維持・向上や安心安全な町作りにおける有用性を実証する。

(2) 実験期間
2008年11月12日~2009年3月31日

(3) 実験地
東京都西多摩郡奥多摩町

  • ※ 奥多摩町は、人口6,000人余の東京都の自治体で最大面積の町。高齢化率が30%以上で、山間部が多く移動に時間がかかるため、住民は医療施設利用に困難を伴っている。

(4) 実験の参加者
奥多摩町内に21ある自治会の中で、山間部にあり高齢化率の高い限界集落 (人口の50%が65歳以上) 5地域の65歳以上の高齢者を中心に約100名の希望者

(5) 実証実験概要
地域集会所や公民館等にコミュニケーション端末や血液レオロジー測定装置を常設。採血した血液のサラサラ度合いを血液レオロジー測定装置で検出し、その検出データをインターネットで都心の医師に送信。住民と医師や健康コンシェルジュスタッフが血液データをはじめとする健康データをコミュニケーション端末の画面上で共有しながら、健康相談や助言などを行う。医師と定期的に話すことで住民の安心感を高め、QOL (Quality of Life) の向上、中長期的には自治体の医療費負担の削減につなげることを目標とする。

(6) 慶應義塾、NEC、KDDIそれぞれの役割

  • 慶應義塾
    奥多摩町13カ所のコミュニティセンター (地域集会所、公民館 等) における実証実験の実施、実証実験の運営のとりまとめ、血液レオロジー測定装置の設置、医療相談 (担当: 栗原医師 等) を実施
  • NEC
    コミュニケーション端末の開発および設置、パネルコンピュータの設置、遠隔予防医療相談システムを構築
  • KDDI
    タッチパネル型健康管理専用端末の設置、携帯電話等による遠隔健康管理支援に要する通信インフラを提供

●2. 遠隔予防医療相談システムで用いる製品・技術、および、実証スケジュール

第一ステップ (11月12日~12月中旬)

  • コミュニケーション端末: 電話とタッチパネルコンピュータが統合された、人にやさしいユーザインターフェースの端末
  • テレビ電話: 高画質映像圧縮技術を用いた低遅延高画質テレビ電話上で、複数の住民同士や、住民と医師・健康コンシェルジュスタッフが、双方の画面で同じ画像やメモ書きを共有しながら会話を行える機能を実現
  • 顔認識技術: 住民の端末に表示された顔画像で個人を認証する機能
  • 相談履歴管理: 相談内容の音声記録 (録音) ・相談履歴・健康データなどを蓄積保存。住民は、蓄積保存した健康データを専用端末・携帯電話・自宅PCから閲覧可能

第二ステップ (12月下旬~3月末)

  • 音声認識技術: 相談後に医師が相談内容の要点を音声で入力し、自動的に文字データで記録
  • 相談住民管理: 相談住民の顔写真と、相談の要点の文字データ等を管理
  • プレゼンス管理: 医師や健康コンシェルジュの状態 (待機中・外出中等) の表示、呼出を行う

慶應義塾は今後、このたびの実証実験で得た成果をもとに、本事業をはじめとして、他のいくつかの自治体等との共同研究や最先端の情報システム・移動体システムの研究を進め、高齢者から子どもまでが盛んな交流ができ、自由に移動できる、安心安全で健康で活発なコミュニティを作ることを目指した『コ・モビリティ社会の創成』のための社会基盤の構築に取り組んでいきます。
また、NEC、KDDIは、今回のプロジェクトに参加協力することにより、IT・ネットワークを中心としたソリューションとして、医療・福祉・介護分野に貢献してまいります。

実証実験に関する詳細は別紙をご参照下さい。

  • ※ ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。
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