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光海底ケーブルの建設・保守

技術統括本部 グローバル技術・運用本部
グローバルネットワーク・オペレーションマネジメント部

熊澤 ひとみ

2008年入社。モバイル部門で基地局建設による携帯電話向けサービスエリアの拡大に携わる。その後、総合通信会社の一員として幅広い業務経験を積みたいと考え海底ケーブルグループへ異動し、24時間365日体制で、国際間の通信を支える光海底ケーブルの保守・管理を担っている。

国際通信の99%を支える光海底ケーブル

インターネットの発展によって誰でも手軽に世界とつながり、音声や動画などさまざまなコミュニケーションができる時代になりました。そんな国際間の通信を支えているのが光海底ケーブルの存在です。現在、日本と各国の通信の約99%が光海底ケーブルを通して行われています。個人のインターネットからテレビのスポーツ中継まで、その用途は幅広く存在します。

無線で飛ばす通信衛星も存在しますが、光海底ケーブルはより大容量のデータを低遅延かつ短時間で送ることができます。コロナ禍で国を越えた移動が難しくなる中、ますます重要となっているインターネット通信を支えている通信インフラといえます。

しかし、実際にインターネットを利用する皆さまにとっては、インターネットが国際通信であり、そこに使われているのが光海底ケーブルであるという意識はほとんどないでしょう。そんな、安定した通信を当たり前のものとして提供するために、光海底ケーブルを整備し、障害が発生した際も速やかに復旧することが、私たちKDDIの仕事です。

通信を途絶えさせないために

KDDIは通信業界の中でも、古くから光海底ケーブルの建設や保守・管理を担ってきた企業の一つです。近年では大規模な新設工事は多くありませんが、世界中のケーブルを24時間体制で監視し、保守・管理にあたることが、私たちの重要なミッションです。非常時も速やかに国外を含む関係各所と連携して、事態の収拾にあたっています。

障害パターンとして特に多いのは、漁船の網や錨 (いかり) が、光海底ケーブルに引っかかってしまうケースです。浅瀬では、ケーブルを海底に埋めることで事故リスクを減らすことができますが、遠洋ではどうしてもケーブルが露出している状態になるため、こうした事故が起こりがちです。

障害につながる異常を検知したら、すぐにケーブル船のパートナー会社や漁業者と連携して、復旧作業を進めていきます。光海底ケーブルの「世界の各地をつなぐ」という性質上、私たちの復旧作業も日本国内だけで完結することは少なく、海外の通信事業者との折衝・交渉も重要になってきます。言葉や文化の違いがある中でも、自分たちのやるべきことを地道に進めていく必要があります。

復旧作業には多大な時間を要する場合もありますが、その間も通信を途絶えさせるわけにはいきません。そうした事態に備え、仮に一本が障害となった際も、他のケーブルを迂回して通信できるよう設計しています。こうした、つながり続けるネットワークシステムの構築によって通信基盤の強靭化も日々進めています。

ノウハウの継承を仕組み化する

この仕事の難しさは、大規模な設備を構築したり、復旧のために船を手配したりと、業務の幅がとても広いことです。光海底ケーブル設備には既製品というものが存在せず、常に環境に応じた建設計画を立て、開発していく必要があります。各国政府や自治体、地元の漁業組合など関係者も多岐にわたり、プロジェクトの進行は一筋縄ではいかないのですが、だからこそ達成できた時の喜びが大きい仕事でもあると感じています。

ケーブルの敷設に関連した業務の中で、さまざまな知見を得ながら、自分自身の成長につながることも、やりがいの一つです。海から陸に引き揚げたケーブルを国内のネットワークに接続するために、「陸揚げ局舎」を設置する必要があるのですが、そのための最適な場所の確保も私たちの業務です。海岸の環境も、砂浜や岩場、断崖、港、工業地帯など多様で、土地の利用や不動産に関する知識を習得して業務を遂行しなければなりません。こうして、さまざまな経験を積むことで一人のビジネスパーソンとしても、幅広いスキルを獲得できていると感じています。

一方で、光海底ケーブル事業全体としての課題もあります。光海底ケーブルは世界中の安定した通信のために重要な役割を果たしていますが、やや特殊な分野ということもあり、技術の継承と若手の人材不足が課題となっています。伝送技術やケーブル品質など、設備の性能は進化を続けているものの、建設・保守という現場の業務についてはベテラン社員の個別のノウハウに頼る部分が大きいのが現状です。私としては、もっと若くから活躍できる光海底ケーブル事業にしたいという想いがあります。マニュアル化を進める、業務を効率化するなど、若い人材が短期間で必要な技術を身につけられる環境をつくっていきたいです。

光海底ケーブルの寿命は約25年なので、定期的に交換する必要があります。また、年々増え続ける通信量は、さらに多くのケーブル需要を生み出しています。KDDIの光海底ケーブル技術をこれからも継承していくために、若手人材の育成も大切になってきます。

拠点を活かした地域支援も

光海底ケーブル事業は、通信インフラとしての役割にとどまらず、地域の活性化や、持続可能な暮らしにも貢献できるのではないかと考えています。例えば、ケーブルの保守・管理に必要となる陸揚げ局舎は日本全国にあり、多くのスタッフが駐在しています。中には、地域活動に積極的に参加する例も出てきています。

他にも、陸揚げ局舎の省エネ化やグリーン化など、私たち自身ができることは、まだまだあると思っています。これからもKDDIらしい活動で、地域のみなさんと力を合わせながら、通信会社として貢献できることを模索していきたいです。

  • 所属・内容等は取材当時のものです。