そこに住む人と、
一緒に変える。
明日が変わる。

デジタルで地方創生を

経営戦略本部 地方創生推進部

鈴木 真帆

2015年に新卒で入社。建設本部でエンジニアとして、auのサービスエリアの品質向上に携わる。2021年に経営戦略本部 地方創生推進部に異動。高知県日高村の「村まるごとデジタル化事業」を推進する取り組みにコアメンバーとして参加している。

より良い暮らしを、一緒につくりたい

東日本大震災の際、通信インフラの大切さを痛感したことが入社を志す大きなきっかけでした。入社後は、現場で各地の通信品質の向上に携わり、災害時には現場や後方から通信の復旧や品質改善を支援してきました。そのなかで、「復旧だけでなく、もっと復興の力になれないだろうか」「被害を小さくするために通信でできることはないだろうか」と思うようになり、地域活性化に向けた取り組みを行う、地方創生推進部へと異動しました。

復興支援室を前身とする地方創生推進部は、自治体や企業が主体で進めるビジネスモデルの構築を、KDDIの5GネットワークやICTソリューション、その他さまざまなリソースやファンドからの資金提供を通じて支援しています。

その活動の一つが、私が参加している高知県日高村の「村まるごとデジタル化事業」です。その名の通り、村全体をデジタル化するための環境整備や、デジタル化に伴う住民生活の質の向上を目的とした事業で、行政からの公募をきっかけにスタートしました。

村全体のデジタル化といってもさまざまな方法が考えられます。日高村で課題としてあがっていたのは、自治体から住民へ情報伝達するために全戸に配備されていた、IP告知システムの老朽化でした。このシステムは停電すると動作しないことや、屋外に持ち出せないことから、状況によっては重要な情報が住民に行き渡らない可能性がありました。そこで、より安定的にいつでもどこでも情報を受け取れるよう、スマートフォンを起点とした情報通信網の整備を進めることになったのです。

テクノロジーは使われてこそ価値を発揮する

日高村は人口5000人ほどの小さな村で、スマートフォンの普及率は6割程度。100%のスマートフォン普及率を目標に、デジタル機器に馴染みの薄い方々へ向けて、不安を解消するための説明会やスマホ教室の実施、料金プランの相談などといった活動を、役場や住民の方々、近隣のauショップ、現地のKDDI社員などが一体となって行ってきました。

普段デジタル機器を利用されない方にとって、スマートフォンは「よう使わん」ものです。そうした、デジタル機器に対する心の障壁を取り除くためには、スマートフォンの魅力を具体的に、かつ丁寧に説明することが必要です。例えば地図アプリの便利さや、メッセージアプリでご家族とやりとりできる楽しさを伝えると、よい反応に変わっていくことも。また、災害対策アプリも文字情報だけでなく音声で届いたり、伝言板としても使えたりすることがわかると、その便利さに驚かれる方がたくさんいらっしゃいました。

地方創生におけるデジタル技術導入の取り組みで重要なことは、設備や機器を導入して使いやすい環境をつくることだけではありません。特に、地域住民の方々との信頼関係を構築し、"ともに"進めていくことが大切なのです。

デジタルだけでなく、人と人のつながりを大切に

テクノロジーは使われてこそ価値を発揮します。しかし、提供するサービスが生活の質を豊かにしてくれるものだとしても、「よそから来た私たち」が一方的に推し進めてしまっては、地域の方々にご納得いただくことはできません。だからこそ、「なぜこのサービスが必要なのか」を地域の方、一人ひとりに丁寧にお伝えすることが重要です。

デジタル化という言葉の響きからは想像できないような草の根的な仕事ではありますが、人と人とのつながりが希薄化すると言われている現代社会において、欠かすことのできない取り組みだと感じています。

地元の方を後押しする存在へ

日高村の事例について、他の地方自治体から問い合わせをいただくことが多く、ノウハウを尋ねられるのですが、私たちの役割はあくまで、そこで暮らす人たちが目指すものを実現するためのサポートです。通信会社が入るから地方創生がうまくいくのではなく、地域住民のみなさんがテクノロジーを活用し、自走し始めることで、より豊かな暮らしのきっかけが芽生えてくる。私たちが提供できるのは、テクノロジーの種を植えた畑であって、それを育てるのは地域住民の方々なのです。

「村まるごとデジタル化事業」の根幹になるのは、まずはスマートフォンを持ってもらうこと、そして日常的かつアクティブに使ってもらえる環境を整えることです。そのためには、スマートフォンが村にとっても住民のみなさんにとっても価値のあるものだと実感してもらう必要があります。

日高村で販売するスマートフォンには、自治体がおすすめするアプリがあらかじめインストールされているのですが、そのひとつにKDDIが提供している健康増進アプリがあります。日高村では運動するとポイントが貯まり、そのまま地域通貨として使うことができる仕組みを導入しており、住民のみなさんにはゲーム感覚で楽しんでいただいています。

地域通貨を今後さらに活用していけば、地元の店舗や企業が潤い、地域の経済循環が活発化するでしょう。また、スマートフォンを使っていなかった方々がInstagramのようなSNSを積極的に活用することで、埋もれていた地元の魅力的なコンテンツがたくさん発掘されるかもしれません。村が村として存続していくには、そこに住む人々のチカラを活かせる仕組みづくりが必要不可欠です。

この仕組みづくりを実現する鍵は、地方創生を「KDDIがやる」のではなくて「KDDIとやる」という関係性にあります。地方分散型の社会になると、誰もが都会に出ていく必要はなくなっていくでしょう。そんな、地元にとどまりたいと願う人の気持ちを実現するために、テクノロジーの力を活用する場面が各地で増えてくるはずです。地域の主役として活躍するみなさんを、KDDIが技術だけでなく、人と人、心と心のつながりを提供することで応援する、そんな未来をつくっていきたいです。

  • 所属・内容等は取材当時のものです。