通信を守るチカラを、
チカラを合わせて
強くする。

災害対策の持続的な強化

KDDIエンジニアリング

小西 敬喜 (写真左)

技術統括本部

笹川 隆 (写真右)

小西: 2006年に入社し、運用部門へ配属。au基地局の保守・運用に携わり、2011年に東日本大震災を経験。その後、運用企画・管理部門へ異動し、運用体制の再編に携わる。現在は経営企画部門へ異動し、事業運営、経営に関するキャリアアップにチャレンジしている。

笹川: 運用や建設の自動化、効率化を目的とした社内向けシステム開発チームのリーダーとして、案件の全体管理を担当。2020年は「次世代監視ダッシュボード」開発のプロジェクトリーダーを務め、同年度の社長賞を受賞した。

迅速なサービス・強靭なネットワークを実現するために

小西: 昨今、通信の需要はヒトからモノへと拡大しています。5G・IoT・自動運転・eSIMなどの新たなサービスやプロダクトを可能にする通信インフラの重要性はますます高まってきているといえるでしょう。生活やビジネスの根幹を多種多様なかたちで支えている通信インフラにとって、設備故障や大規模自然災害の影響は脅威です。ゆえに、その迅速な復旧対応とサービスの持続的な提供は常に私たちの課題となっています。

私たちKDDIエンジニアリングは、KDDI事業を支える通信ネットワークを構築・運用し、お客さまに安定的にサービスを提供し続けることを使命としています。2021年に大きく体制を再編し、新たに設計・監視運用・品質改善のプロセスを加え、現場実行責任を一元化することで、複雑化・多様化する通信インフラに柔軟に対応し、いち早くトラブルに対処できる体制を整えました。さらに最近は、復旧対応の自動化も進めています。10年前は人手を介していた復旧対応も、自動化を取り入れることで、限られたヒューマンリソースを有効活用できるように進化しています。

小西敬喜 (KDDIエンジニアリング)

「3.11」が浮き彫りにした災害復旧の課題

小西: 東日本大震災が起こった当時、私は仙台でauの基地局の保守・運用を担当していました。突然、それまで経験したことのない規模の揺れを感じ、次の瞬間1900局以上の基地局が機能停止状態に陥りました。監視システムの画面はすべてアラームで埋まってしまい、電話もつながらない。現場でなにが起きているのか状況を把握しづらい環境の中、できる限りの復旧対応にあたりました。
全国各地から災害復旧対応の応援をいただき、通信を提供できていないエリアの状況を確認しながら、遠隔による通信設備やシステムの再起動を手動で行いつつ、復旧機材をつかったエリア構築を行うなど、早期復旧に尽力しました。
しかし、未曾有の地震による被害は想定外の規模の復旧作業を必要としたため、膨大な時間と労力が費やされることになりました。大震災から10年が経ち、近年では復旧作業をボタン一つで自動的に完了するシステムが導入されています。このような自動化と効率化、いわゆる「スマートオペレーション」は今後のシステム管理・運用においてキーになるものです。

笹川隆 (技術統括本部)

次世代のシステム運用を可能にするスマートオペレーション

笹川: 私は、運用業務や建設業務の自動化・効率化を目的としたシステム開発チームのリーダーとして、並行して開発している10以上のさまざまなシステムの全体管理を行っています。その一つに「次世代監視ダッシュボード」というものがあります。これによって多岐にわたるシステムがモニター上に可視化され、統一的な監視が実現しました。

監視の拠点は東京都多摩市と大阪府のネットワークオペレーションセンターに置かれています。同様の機能を有したセンターを二箇所に構えることで、どちらかのセンターが被災しても途切れることなく監視体制を維持することができます。

KDDIの「スマートオペレーション」は、2016年に全運用業務の可視化・標準化を目指してプロジェクトがスタートし、2021年に本格的な運用が開始されました。およそ2000項目におよぶエンジニアの作業内容から4万件のシステム要件を整え、独立していた個別の監視システムを一元化しました。スマートオペレーションの導入によって、これまで個人の経験・判断を必要としていたシステム運用の自動化を実現しています。

それにより、障害発生時のサービス復旧を迅速化し、お客さまへの影響を軽減することが可能になりました。また、それまで運用に割いていたヒューマンリソースをより効率的に再配置し、障害の予測や品質管理、機械学習活用など新たな分野へのチャレンジも進めています。こうした改善のサイクルによって、さらなる通信基盤の強靭化を実現する。それこそが、私たちのスマートオペレーションが目指しているものです。

ネットワークの改善をサステナブルに

小西: これまで蓄積してきた運用者による「匠の技」の数々をシステム化し、体制の自由度を高めることで、これまで以上にサービス品質と運用品質を向上していく。スマートオペレーションは、ネットワークの持続的な強靭化のために取り組んでいるプロジェクトの一つです。

笹川: 通信インフラが生活全般を支えている現代では、災害時の通信障害が命に関わってきます。通信インフラを守り、お客さまを「つなぐ」ために、1分1秒でも早くシステムを復旧させ、障害の影響を最小限にとどめることが私たちの使命です。そして、なによりも障害を起こさないために、日々、運用者からの要望や現場の声のヒアリングを欠かさず、システムの改善を繰り返しています。

小西: 私たちは通信環境の変化に柔軟に順応していくとともに、インフラを「つくり」「守り」「改善していく」プロフェッショナルとして、社会に貢献できるよう自分自身もKDDIグループも成長していかなければならないと考えています。

  • 所属・内容等は取材当時のものです。