本文へ
KDDI: ユビキタス・ソリューション・カンパニー

サイトマップ

ニュースリリース
2007年
IP映像伝送システムの開発と実証実験について

KDDI株式会社
株式会社KDDI研究所

2007年10月25日

KDDI株式会社 (代表取締役社長兼会長: 小野寺 正、以下、KDDI)、株式会社KDDI研究所 (所長: 秋葉 重幸、以下、KDDI研究所) は、この度、ハイビジョン映像のライブ伝送や、サーバに蓄積された映像素材のファイル伝送など異なる要求品質の映像を、1本の物理回線上に複数のパスを張ることで、それぞれに適した品質で伝送するIP映像伝送システムを放送事業者向けに開発しました。加えて、本年5月7日〜6月29日に商用回線を利用した実証実験を行い、本システム上でこれまでの映像伝送サービスと同等の品質で映像伝送が可能なことを確認しました。

本内容については、本年10月28日〜11月1日に米国・ワシントンDCで開催される国際会議MPLS2007で発表、および本年11月20日〜22日に千葉・幕張メッセで開催される国際展示会InterBEE 2007において展示します。

●1. 開発の背景
昨今のオールIP化の流れを受け、放送事業者向けの高品質映像伝送もIPネットワーク上で実現する要求が高まっています。しかし、これまでIPネットワークでは、IPルータで帯域の確保、保証が実現できないため、映像伝送で求められる専用線品質を確保することが困難でした。また、IPネットワーク上で高品質なサービスを提供するための運用・監視制御の確立も課題となっていました。このため、KDDI、KDDI研究所は、IPネットワーク上で、帯域の確保、保証が可能な映像伝送を実現するためのネットワークの構築、及び監視制御技術の開発を行いました。

●2. 開発の概要
(1)  IP映像伝送網の構築について
伝送する帯域の確保、保証は、MPLS Diffserv‐Aware Traffic Engineering技術と優先制御技術を組み合わせて、優先度を設けたサービスクラス毎にMPLSパスの残容量を管理することで実現しました。また、ライブ伝送や、サーバに蓄積された映像素材のファイル伝送、その他ベストエフォートデータ通信といった要求品質の異なるサービスを、動的にそれぞれのMPLSパスに対応付ける手法を確立することにより、1本の物理回線上に、専用線品質からベストエフォート品質のサービスを混在させることが可能になりました。

(2)  監視制御システムの開発について
これらのサービスを迅速かつ高信頼に提供するために、放送事業者からの要求に応じて、KDDIの運用・保守担当者が、容易にIPコーデック装置とルータを制御して、MPLSパスやMPLSパス上の映像回線を設定することが可能となるような監視制御システムを開発しました。また、映像回線やMPLSパスの情報等、MPLSネットワークの状態を自動で収集し、ネットワークの構成情報の可視化を可能とするとともに、映像回線、MPLSパス等を階層的に管理することにより、物理回線等低レイヤでの障害時にサービスへの影響範囲を即座に特定することを可能としました。

●3. 実証実験の内容
本年5月7日〜6月29日に、KDDI新宿局と大阪局それぞれに低遅延IPコーデック装置、蓄積映像伝送サーバ、MPLSルータを設置し、商用の基幹回線を通じて実証実験を行いました。ハイビジョン映像のライブ伝送については、MPLSパス、および映像回線を現用、冗長系の回線を異経路で設定し、また、無瞬断映像切り替えスイッチ (Vision-SW) も使用することで、障害時においても、これまでのハイビジョンライブ映像伝送サービスと同等の品質で映像伝送が可能なことを実証しました。また、新宿局に設置した監視制御システムにより、映像回線、MPLSパスの設定・制御、並びにネットワーク監視が一元的に可能となることを実証しました。

●4. 今後の展開
これまで、放送事業者においては映像回線、電話回線、データ通信回線などアプリケーション毎に品質の異なる回線を別々に契約する必要がありましたが、今回の開発により、1本の物理回線上で効率的に複数のサービスを利用することが可能となります。また、今回のIP映像伝送システム開発の成功は、映像伝送のみならず、ATMやTDMといった旧来の回線交換網上で提供していた諸々の通信サービスを、IPネットワーク上で効率的かつ高信頼に提供できることを示しました。
本システムの商用利用は2008年度を予定しています。

●用語解説
国際会議MPLS2007
北米の相互接続性検証ラボであるISOCOREが主催するMPLS技術に関する国際会議であり、技術セッションと相互接続試験デモンストレーションから構成される。通信事業者、装置ベンダ、測定器ベンダから多数の技術者が参加し、最新のMPLS技術に関する議論が行われる。

InterBEE
国際放送機器展 (InterBEE) は、音と映像と通信のプロフェッショナル展として、国内外のトップレベルの放送機器、映像機器、音響機器、周辺アプリケーションが一堂に会する国際展示会

低遅延IPコーデック技術
JPEG2000の符号化アーキテクチャに独自の高圧縮アルゴリズムを採用し、HDTVの素材伝送 (50〜900Mbps伝送レート) をIPネットワーク上において低遅延・高画質で実現するコーデック技術。

MPLS
Multi Protocol Label Switching技術はフレームやパケットの前方にラベルと呼ばれる識別子を負荷して転送を行うことにより、通信の高速化や機能の付加を図る技術。

ATM/TDM
Asynchronous Transfer Mode (ATM) 技術は、53バイトの固定長のデータであるセルを基本的な通信の単位とする、Virtual Circuit cell relayによる通信プロトコル。Time Division Multiplex (TDM) 技術は複数のデジタル信号を時間的に配列して、一つの伝送路で伝送を行うことが出来るようにする多重化の一方式。

Diffserv-Aware Traffic Engineering
MPLS技術による帯域予約機能 (RSVP-TE) とQoS技術であるDiffserv機能を連携させることにより、QoSクラスごとに帯域幅を予約しその中でさらにDiffservにもとづいた優先制御を行う。

Vision-SW
国内/国際テレビジョン中継の低コスト化、高信頼化を実現する高能率無瞬断テレビ回線切替装置。

図: IP映像伝送網概要
図: 監視制御システム
図: 実証実験概要

ニュースリリース > 2007年
このページの先頭へ
Designing The Future ここから当ウェブサイトの情報についてのメニューです。
免責事項 リンクについて 推奨環境 プライバシーポリシー Copyright © KDDI CORPORATION. All Rights Reserved.