マネジメントメッセージ

「通信とライフデザインの融合」を実現するとともに、社会課題の解決に取り組み、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献してまいります

  • Q01: 社長就任から1年以上が経過しましたが、率直な感想をお聞かせください。
    A

    01

    振り返ってみれば大変充実した1年だったと思います。
    就任1年目は、今年の5月に発表した「新中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期)」の策定に充てるつもりでした。
    しかしながらその過程で2つの大きな変化があり、それらに対応するために計画の練り直しを余儀なくされました。そうした腐心の末に発表した内容は、コストを抑えつつ持続的な成長への道筋をつくるという課題に対して、しっかりと対応できるものに仕上がったと自負しています。

    中期経営計画

  • Q02: 「2つの大きな変化」とは具体的にどのようなことでしょうか。
    A

    02

    1つ目は、総務省が2018年11月に発表した「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」と、この内容を盛り込んだ電気通信事業法の改正です。
    これを受けて株式市場には、当社を含む通信セクター全体の成長が止まるのではないかという憶測が拡大、当社の株価も大幅に下落しました。正直私自身、この状況には大きな衝撃を受けました。
    しかしながら当社は、既に2017年7月の「auピタットプラン」「auフラットプラン」の導入により、「分離プラン」への対応を済ませており、顧客還元を進めていました。
    そのため、競合他社の新料金プランを受けて我々の料金プランを見直したことによる追加的な減収影響は、今後3年間で合計1,000億円弱にとどまる見込みです。
    2つ目は、新規通信事業者の参入です。これにより、国内のモバイル通信市場の競争がさらに過熱する可能性があります。
    これらの大きな変化への対応策を織り込みつつも、今回の中期経営計画で持続的な成長を目指すことができたことは、大きな成果だったと感じています。

    これまで以上に知恵を絞って「進化」するとともに、信頼性の高いネットワークによって「守り」を固めます。「攻め」の面では、KDDIをトランスフォーメーションしていきます。

  • Q03: 新規通信事業者にはどのように対抗していきますか。
    A

    03

    プレイヤーが増えれば、KDDIがシェアを落とすリスクも出てきますので、2019年10月の参入に向けて、しっかりと対応していきます。
    新規通信事業者は、コマースなどKDDIとは異なる領域でアドバンテージを持っていますから、これまで以上に知恵を絞って我々に足りない領域の「進化」を図ると同時に、KDDIが強みとする信頼性の高い「トラステッド」なネットワークによって「守り」を固めていきます。
    同時に、「攻め」の面では、新規通信事業者が採用するネットワークの仮想化技術「NFV」といった「イノベーティブ」な取り組みもスピード感をもって挑戦していきます。
    厳しい競争環境ではありますが、あらゆる変化に柔軟に、適切に対応していきます。

  • Q04: これまで築き上げてきたネットワークの信頼性以外に、「KDDIが誇る価値の源泉」としてどのようなものがあげられますか。
    A

    04

    KDDIは、これまで18期連続で増益を続けてきました。環境変化が激しい業界の中で持続的成長を続けることができたのは、困難に直面してもしっかりとコストを下げつつ、新たなチャレンジを続けてきたためです。これが全社員の自信にもつながっており、これから戦っていく上で大きな武器になると感じています。
    一つの事例を紹介しますと、KDDIは、3G時代にはいち早くデータ定額制を導入し、4G時代にはモバイルと固定のバンドルによりスマートフォンを低廉な料金でご提供するなど、新たな通信規格へシフトする過程において創意工夫を重ねてきました。パートナー企業とのコラボレーションにより新しい付加価値を生み出し、常にお客さま目線で"ワクワク"を提供してきた結果が、KDDIの業績にも表れているのではないでしょうか。
    そして、これから5G時代に突入する中で、世界の動向をつぶさに見ていくと、KDDIとしてもデジタルトランスフォーメーション (DX) にしっかり対応していく必要があると感じています。より良いサービスを提供し続けるために、ネットワークの仮想化やAIの活用などにより、運用コストをさらに削減していくなど、KDDIの企業風土・社員のモチベーション・行動パターンにみられる「環境変化への耐性」を存分に発揮することで乗り切りたいと考えています。

  • Q05: 新中期経営計画で示した新たな方向性には、どのような思いが込められていますか?
    A

    05

    新中期経営計画の骨子は、「企業理念」「ブランドメッセージ」「目指す姿」「事業戦略・財務目標」「経営基盤強化」の5階層からなります。
    このうち、「企業理念」については引き続き大切にしていきますが、「ブランドメッセージ」については、今回、これからのKDDIを支えていく40代の社員を中心に集中討議を行い、企業ブランドおよび法人向け事業ブランドであるKDDIのブランドスローガンを「Tomorrow, Together」、コンシューマ向け事業ブランドであるauのブランドスローガンを「おもしろいほうの未来へ。」に一新しました。
    また、「目指す姿」としては、昨年発表した「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社」「ワクワクを提案し続ける会社」に、新たに「社会の持続的な成長に貢献する会社」を加えた3つを掲げました。
    新中期経営計画を社員一丸となって達成していくため、このフレームを社内に浸透させていきます。

  • Q06: KDDIらしい持続的成長のあり方とは何ですか?
    A

    06

    「KDDIフィロソフィ」では「売上を最大に、経費を最小に」という基本的な考え方を謳っており、事業成長によりトップラインを伸ばすとともに、コストを適正に削減し、結果として利益を持続的に成長させていくという考え方が社員に浸透しています。そして、その持続的成長の先に、当社の企業理念に掲げる「全従業員の物心両面の幸福」や「豊かなコミュニケーション社会の発展への貢献」があると考えています。

  • Q07: 新中期経営計画をスタートするにあたり、セグメント区分を変更した狙いについてお聞かせください。
    A

    07

    「通信とライフデザインの融合」を進めるため、従来4つあったセグメントを、コンシューマ向け事業の「パーソナルセグメント」と法人向け事業の「ビジネスセグメント」の2つに集約しました。さらに、グローバル事業を国内事業の延長線上の位置づけに変更し、それぞれのセグメントへ統合することで、国内で培った事業ノウハウや経営資源をグローバル事業に活かすことができる体制が整いました。
    パーソナルセグメントでは、これまで通信事業が成長を牽引してきましたが、今後は、通信とライフデザインを融合した「総合ARPA」ベースでの収益拡大を目指します。また、東南アジアを中心に事業拡大を図り、「通信とライフデザインの融合」モデルを海外へ展開していくことで、国内と同等の経済圏創出を目指していきます。
    ビジネスセグメントでは、IoT事業を中心に新たな成長領域への取り組みを強化していくことに加え、既存固定系サービスなどの基盤事業、グローバルICT、グループ会社のトータルで着実な利益成長を目指します。

    5G時代には、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTにより、通信がすべてのものに溶け込んでいきます。

  • Q08: パーソナルセグメントは、「ライフデザイン領域売上高」の拡大によりトップライン成長を図るとのことですが、具体的にはどのように実現していくのでしょうか。
    A

    08

    ライフデザイン領域においては、2019年3月期9,460億円の売上高を、2022年3月期には1.5兆円まで拡大させていきます。具体的には、コマース・エネルギー・金融事業などの成長ドライバーに加えて、エンターテインメントや教育なども含めたトータルでトップラインの成長を目指します。
    金融分野では、2019年2月、中間金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス株式会社」の設立を発表し、4月1日付でKDDIグループの金融関連各社をこの傘下に移管しました。
    また、エネルギー分野においても、「auでんき」で既に200万超のご契約をいただいており、電力小売販売事業者の中でトップクラスのシェアを持っています。
    このように商材は揃ってきているものの、コマースについては、まだまだ他社に見習う点も多く、さらなる強化が必要だと感じています。既存事業をしっかり伸ばしつつ、案件を見極めながら必要に応じてM&Aも検討していきます。

    特集1: 通信とライフデザインの融合

  • Q09: もう一つの成長領域として、「新ビジネスセグメント売上高1兆円」を掲げていますが、どのように実現していくのでしょうか。
    A

    09

    ビジネスセグメントでは、トヨタ自動車株式会社さま (以下、トヨタさま) と推進している「グローバル通信プラットフォーム」を応用・発展させたKDDI「IoT世界基盤」をベースに、あらゆる産業にサービスを提供するプラットフォームを構築していきます。トヨタさまとは、国内で販売されているコネクティッドカーにKDDIの通信モジュールが搭載されているなど、強固な協業関係を築いています。この事業モデルをグローバルにも展開したいとのニーズがあり、米国ではAT&Tと提携しました。また、中国をはじめ世界のさまざまなキャリアとの提携を進め、提供エリアを拡大していきます。
    さらに、トヨタさまとの協業で培ったさまざまなノウハウをKDDI「IoT世界基盤」で活用し、株式会社日立製作所さまや株式会社東芝さまをはじめとしたグローバルパートナーとともに、グローバルで事業展開を図るお客さまのビジネスをサポートしていきます。

    特集3: パートナーとの提携によるビジネス拡大

  • Q10: 今期から始まる5Gの設備投資計画についてお聞かせください。
    A

    10

    本年4月、5G用の周波数が割り当てられました。今回KDDIが総務省に提出した開設計画では、基盤展開率・5G特定基地局数ともに意欲的な目標を掲げたことが評価され、世界的に5Gでの利用が見込まれる周波数帯を含んだ合計600MHz幅を割り当てていただきました。これにより、ネットワーク開発費や端末調達コスト面においてコスト効率化が期待できると考えています。
    なお、開設計画の5G設備投資額は今後5年間で4,667億円を予定していますが、他社との基地局資産の相互利用などにより、さらなる効率化を目指したいと考えています。
    また、今期から4G投資と並行して5G投資を実施していきますが、4G投資額は既にピークアウトしていることもあり、今期の設備投資計画は2019年3月期とほぼ同水準の6,100億円を見込んでいます。また、新中期経営計画期間においても年間6千数百億円水準にコントロールしていきたいと考えています。

  • Q11: 5Gはいつごろ普及してくるとお考えですか。
    A

    11

    今年の秋にトライアルを始め、来年3月に商用サービスを開始する予定です。そのタイミングでは、4Gネットワークに5Gを重畳するNSA (ノンスタンドアローン) での運用となります。まずは、人口カバー率99.9%まで整備したピカピカの4Gと、スペシャルな5Gを組み合わせた"ハイブリッドネットワーク"を展開し、中期的に5G単独となるSA (スタンドアローン) の運用を開始していきます。

  • Q12: 5Gによって、どのような変化が起きていくのでしょうか。
    A

    12

    5G時代には、これまで以上に動画が当たり前な時代が来るのではないでしょうか。ただし、それはVOD (Video on Demand、オンデマンド配信) やデジタルサイネージだけではなく、例えばレシピサイトが動画に、SNSでのテキストのやり取りが動画に取って代わるような、すべての表現方法が動画に転換していくイメージなのではないかと思っています。このような5G時代の先取りとして、本年7月より、月間のデータ容量に上限のない「auデータMAXプラン」を国内のMNO (注1) として初めて提供開始しました。
    こういった変化に対して、KDDIが得意とするOTTプレイヤーとの連携も視野に入れつつ事業拡大を目指します。また、本年4月には地方創生ファンド「KDDI Regional Initiatives Fund」を設立するなど、5Gを活用した地方創生にも取り組んでいきます。

    • 注1)
      Mobile Network Operator: 移動体通信事業者

    特集2: 5Gによる新たな成長機会と社会課題の解決

    あらゆるモノの中に通信が溶け込んでいく時代だからこそ、KDDIが通信サービスを通じてさまざまな社会課題の解決に貢献できると確信しています。

  • Q13: 5中期経営計画には、SDGsをはじめ、すべてのステークホルダーとのエンゲージメントを意識したサステナビリティへの取り組みが盛り込まれました。KDDIならではのサステナビリティへの取り組みの方向性とは何か、どのようにして事業活動にSDGsを浸透させていくのかについてお聞かせください。
    A

    13

    5G時代には、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTにより、通信がすべてのものに溶け込んでいきます。
    こうした時代の変化を背景に、今回、新中期経営計画の目指す姿の1つとして「社会の持続的な成長に貢献する会社」を明記し、「KDDIが目指すSDGs」を策定しました。
    SDGsに対しては、「事業を通じて解決する社会課題」と「企業活動を通じて解決する社会課題」の2通りのアプローチで取り組んでいきます。前者については「通信」「グローバル」「地方創生」「教育」「金融」などの事業戦略と連動する目標を、後者についても「人財育成」「女性活躍推進」「人権・D&I」「地球環境」など企業活動に連動する目標の達成を目指し、中長期的に取り組んでいきます。
    あらゆるモノの中に通信が溶け込んでいく時代だからこそ、KDDIが通信サービスを通じてさまざまな社会課題の解決に貢献できると確信していますし、この考え方を社内にも浸透させていきます。

    KDDIのSDGs

  • Q14: 新中期経営計画では、新たな目標として「利益成長を伴うEPS成長」を掲げていますが、その狙いと、達成までの道筋についてお聞かせください。
    A

    14

    過去の中期経営計画でも、KDDIは一貫して利益成長にこだわってきており、2014年3月期~2016年3月期は「営業利益 毎期2桁成長」、2017年3月期~2019年3月期には「営業利益 CAGR7%」を標榜してきました。新中期経営計画では、市場が大きく変化していることもあり、今回初めて「営業利益」ではなく「EPS」をKPIに設定しました。
    これは、利益成長を最優先しつつも、目標に足りない場合の手段として自己株買いを活用することで、何としても高い目標を達成していくというメッセージを伝えたかったからです。事業成長だけではなく、株主還元も行う、株主の皆さまをしっかり見て経営していく会社だという意思を私なりに表したつもりです。

  • Q15: 今後の株主還元に対する考え方はいかがですか。
    A

    15

    フリー・キャッシュ・フローの使途としては、引き続き持続的な利益成長のための成長投資を最優先とし、次いで配当、機動的な自社株買いを実施してまいります。
    また、財務面の健全性を維持しつつ、安定的な配当を継続していくことを会社の基本方針としています。
    2019年3月期は、営業利益が初めて1兆円を超えたこともあり、株主の皆さまへの感謝の気持ちを込めて前期比+15円となる1株当たり年間105円 (配当性向40.5%) の配当を実施いたしました。今期見通しは、+5円の110円の配当を予定しているほか、本年12月23日までを期限とした上限1,500億円の自己株式取得を発表しており、まずはこれを着実に実行していく方針です。
    また、新中期経営計画では、配当性向40%超をコミットメントとしたほか、機動的な自己株買い、すべての自己株式の消却 (注2) など、前中期経営計画よりも踏み込んだ還元方針を打ち出しています。

    • 注2)
      役員報酬BIP信託口および株式付与ESOP信託口が保有する当社株式を除く
  • Q16: 最後に、ステークホルダーの皆さまへのメッセージをお願いいたします。
    A

    16

    KDDIがステークホルダーの皆さまに申し上げたいのは、2000年の発足以来、どんな困難に直面しても諦めることなく、企業の原点である持続的成長にこだわり、18期連続増益を達成してきた点です。通信業界はいま、グローバルに見てもこれ以上の成長は困難だという見方が広がっています。そのような中、我々KDDIはあらゆる知恵を絞って持続的成長に挑戦していきます。そして、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することで株主・投資家の皆さまを含むあらゆるステークホルダーの皆さまから支持される企業を目指してまいります。
    今後とも、皆さまの変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

    KDDI株式会社 代表取締役社長
    髙橋 誠

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