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小学生への環境学習を通じた生物多様性への理解促進

2025/09/11

生物多様性の損失が深刻な問題となっている昨今、長野県飯田市では、環境の保全と環境教育の推進の一環として、市民に向けて7月14日からの2カ月間、「2025いきもの大調査in飯田」(※1)を実施している。開始初日には、飯田市立川路小学校の4年生を対象に特別授業を実施した。気候変動問題に取り組む企業へ出資するKDDI Green Partners Fund(※2)を通してKDDIが出資している株式会社バイオームの生物情報可視化アプリ「Biome(バイオーム)」(※3)を活用したものだ。その様子を飯田市役所環境課環境保全係の大野さまに伺った。

課題

飯田市役所環境課環境保全係 大野 英彦さま

大野さま:長野県南部に位置する飯田市は、南アルプスの山々と天竜川に囲まれた自然豊かな地域です。地球規模で生物多様性の損失が進むなか、飯田市でも都市化と農地減少が進み、生物が生息できる環境が減少しています。また、インターネットやスマートフォンの普及により室内での娯楽が充実し、昔のように野外で虫を捕ったり、植物や自然に触れたりすることは少なくなってきています。このような状況から、市民の生物への関心が減少していると思われます。むしろ、害虫や雑草など、生き物が「厄介者」として扱われる風潮が広がっていると感じています。
これらの課題に対し、飯田市は「21’いいだ環境プラン」(※4)を策定し、重点目標のひとつとして「生物多様性と自然環境の保全・育成」を掲げ、市民が主体となって地域の自然を知り、守る意識を育むために、山での自然観察や川での水生生物観察などのイベントを実施してきました。しかし、いずれも参加者が20名程度にとどまっており、多くの市民に参加してもらうきっかけ作りが課題となっていました。

背景

大野さま:飯田市は、身近な自然を手軽に記録・調査ができるBiomeに着目し、市内で発見した生き物を投稿する「いきもの大調査 in 飯田」を2024年度に初めて開催しました。生き物を10種類以上投稿するクエスト形式となっており、ゲーム感覚で楽しみながら参加できる仕組みです。クエスト完了者には、市から抽選で商品を贈呈していることも、参加のモチベーションにつながっているかもしれません。
2024年度は1,600以上の生き物が投稿され、アンケートには好意的なコメントが多数寄せられるなど好評だったことを受け、2025年度も取り組みを継続しています。また、参加者数は100名以上を記録し、これまで市民参加が得られにくかった状況を打破し、「21’いいだ環境プラン」の実現に向かっている手応えがあります。2025年度はクエスト完了者への商品を拡充し、市としてもさらに力を入れて取り組んでいきます。

2025 いきもの大調査 in いいだ

取り組みについて

特別授業では、KDDIの社員が講師となり、生物多様性について語り、授業の後半には教室を飛び出し、校庭や畑などでフィールドワークを実施した。Biomeは、植物や昆虫など様々な生き物を見つけてアプリで写真を撮ると、植物などの名前や稀少度が判定される仕組みとなっている。授業の中では、延べ50種類もの生き物が記録された。

大野さま:飯田市の小学生は、カリキュラムの一環として環境学習を受けており、生き物に関心を持ってもらいたいと思っています。今年度は、楽しみながら生き物や自然環境への興味を高めてもらえるよう、飯田市立川路小学校の4年生に向けてBiomeを活用した特別授業を実施しました。小学生が熱中して生物を追いかける様子は、このイベントに市民が関心を大いに高めるきっかけになるという市の期待もありました。

参加した生徒からは、「いつもたくさんの昆虫や植物を目にしているけれど、名前まで意識したことがなかったので勉強になった。家の周りでもやってみたい。」、「植物には一つ一つの名前があるのがおもしろい。もっと観察してみたい。」、「まだ知らない植物や昆虫がいることが分かった。楽しかった。」などの感想があり、生き物への興味関心が高まった様子がうかがえた。

飯田市の手応えと今後の期待

大野さま:子どもたちは、スマートフォンを持ちながら嬉々として校庭へ飛び出していき、時間を忘れるくらい虫や植物を探していました。やはり、生き物はとても興味深い存在です。名前がわかると楽しさが倍増するという様子が伝わってきました。
学校で生活をしていれば普段必ず目にしたことがある生き物や、見慣れた生き物でも、その名前を知っているケースはごくわずかです。生き物の名前は、とても個性的で魅力的であり、その名前が分かることで、生態や特徴、歴史などに触れることもできます。名前を知ることは、生き物への関心がはかり知れないほど広がると思います。
Biomeは、生き物に関心をもち、生き物に近づくという経験を、スマートフォン1台で完結できることが最大の利点です。大きな課題であった、多くの市民の生物調査への参加を、効果的に実施できる有効な手段だと考えます。
また、日々違う発見があるように、その年によって必ず新たな発見があると考えています。このような調査は、一過性で終わらず、長期間継続することに意義があると思いますし、今後も継続的に実施することで、市民が生物多様性や保全に関心を寄せることにつながると確信しています。

(参考)Biomeについて

生物の分布状況を把握し、生物多様性や保全の基盤情報として活用していくために開発されたスマートフォン向け無料アプリケーションです。日本国内のほぼ全種(約10万種)の動植物を収録し、独自の名前判定AIによって、ユーザーが撮影した写真から生物の名前を判定します。図鑑・地図・SNS・クエストなど、ゲーム感覚で楽しめる仕掛けが充実しており、「いきものを見つける」という体験をより楽しく、より身近にしてくれます。アプリのダウンロード数は110万以上で、これまで980万件以上の生物データが投稿・蓄積されてきました。これらのデータは、要望に応じて環境保護団体や研究機関などに提供されています。

  • 内容は掲載当時の情報です。現在とは情報が異なる場合があります。

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