AIガバナンス

KDDIは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。」という企業理念を掲げ、社会インフラを担う通信事業者として、24時間365日、安定した通信サービスを提供し続けるという重要な社会的使命を担ってきました。また、KDDIフィロソフィのなかでも「『つなぐチカラ』を進化させる」「365日、守るのが使命」を掲げ、社会を支える通信事業者としての使命と責任を果たしてきました。
また、お客さまの大切な情報を取り扱う通信事業者として、KDDIは通信の秘密や個人情報をはじめとするパーソナルデータの保護を重要な責務と認識し、情報セキュリティの確保とプライバシー保護など技術やサービスの進展に応じてガバナンスの取り組みを発展させてきました。
AIが社会インフラとして広く浸透し、AIが生活に溶け込んでいく「AI前提社会」において、KDDIはAIにおいても安心・安全に開発・利活用を進めていく責務があると考えています。
こうした考えのもと、KDDIは2021年8月に「KDDI グループAI開発・利活用原則」を策定・公表しました。本原則に基づき、AIサービスの開発・利活用に関するガイドラインの整備やアセスメント、ガバナンス体制の構築など、AIを適切に開発・利活用するための取り組みを継続的に進めています。
KDDIは今後も、AIを取り巻く技術革新や国内外の動向を踏まえ、AIガバナンスの取り組みを不断に見直しながら、お客さまや社会の皆さまが安心できる形でAIを利活用できるよう取り組み、お客さま体験価値の向上と社会の持続的発展に貢献していきます。

1. 方針

AIガバナンスとリスク管理

KDDIは、AIの開発や利用に伴うリスクに適切に対処しつつ、お客さまの体験価値向上や社会の持続的発展に貢献するために、経営層による議論・承認を経て、2021年8月に9つの原則(※1)を定めた「KDDI グループAI開発・利活用原則」を策定し、公表しました。

また、この原則を社内で実践するために、AI開発者・AI提供者向けの社内ガイドラインとして「AI開発ガイドライン」を整備しています。「AI開発ガイドライン」では、以下の内容を定めています。

「AI開発ガイドライン」の内容(一例)
  • AIシステムおよびデータのサイバーセキュリティ保護を徹底すること
  • 重要な意思決定においては人間が適切に関与し介入できる仕組みを導入すること
  • AIモデルやAIエージェントが生成した結果に基づく行動は使用する人間の責任となることを踏まえ、AIが利用可能な範囲と技術的な限界を適切に定義し運用すること
  • 操作的な技術、脆弱性の悪用、ソーシャルスコアリングなどのEU AI Act新規ウィンドウで開くで禁止される用途をはじめ、AIの利用が適切ではない用途についてはその利用を禁止すること

このような取り組みを通じて、倫理面・法令面の双方から適切なAI開発・利活用を実践しています。

環境への配慮

KDDIグループは「KDDI環境憲章」を掲げ、かけがえのない地球を次の世代に引き継ぐことができるよう、地球環境保護を推進することがグローバル企業としての重要な責務であるととらえ、豊かな地球を未来につなぐための取り組みを続けていきます。
地球環境保護の取り組みとして、KDDIは環境保全計画「KDDI GREEN PLAN」を推進しています。「地球環境との調和」を経営理念の一つとし、「脱炭素社会の実現」「循環型社会の形成」「生物多様性保全」を重点課題として取り組んできました。脱炭素社会の実現を目指す中で、AIの普及に伴う電力消費の増大への対応として、KDDIグループは2026年3月に国内外で運用する全データセンターの使用電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替える環境目標を達成しました。今後新たに開設するデータセンターにおいても、使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来とする方針です。

  • ※1「KDDI グループAI開発・利活用原則」で定める9つの原則
    1. [1]人間の尊厳
    2. [2]適正な利用
    3. [3]制御可能性、人間の判断の介在
    4. [4]安全性とセキュリティ
    5. [5]プライバシー
    6. [6]公平性・非差別
    7. [7]透明性
    8. [8]アカウンタビリティ
    9. [9]連携

2. AIガバナンスの体制

KDDIは経営上の重要リスクを一元的に集約し、審議する社内組織として「リスクマネジメント委員会」を設置しています。
同委員会の配下に、CDO(※2)を部会長とする「データ・AIガバナンス部会」を設置しています。「データ・AIガバナンス部会」では、データ・AIに関して、グループ会社を含めたガバナンスの全社方針・計画を決定するとともに、個別のリスク事案への対応について審議を行います。
また、KDDIはリスクガバナンスフレームワークとして、「スリーラインモデル」の考え方に基づいた体制を整備しています。「スリーラインモデル」の体制に基づき、第2線部門の役割を担う専門組織として、データ・AIガバナンス部門を設置しています。この組織は、社内ルールの策定および改定、AI開発時のリスク評価の運用などを担当しています。データ・AIガバナンス部門は、法務部門、セキュリティ部門、知的財産部門など、ほかの第2線部門と連携し、ガバナンス活動を行っています。また、インシデント発生時は必要に応じて経営層に報告し、対応できる体制を整えています。
加えて、社内規程やルールの適切な改定やAIに関するリスク評価に関して外部の知見を取り入れるために、社外の有識者から構成される「アドバイザリーボード」を年2回程度開催し、KDDIの取り組みに対する議論や意見交換を行っています。

AIガバナンス推進体制

  • ※2Chief Digital Officer(最高デジタル責任者)

3. リスク評価の取り組み

KDDIの社内ガイドラインである「AI開発ガイドライン」は、総務省と経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン新規ウィンドウで開く」に沿って定めています。KDDIは、「AI開発ガイドライン」に基づき、AI開発時のリスク評価を行う仕組みとして、リスクベースアプローチを採用した「AI開発影響評価(AI Impact Assessment、以下「AIA」)(※3)」を運用しています。
「AIA」では、まずAIサービスを企画・開発する部門(第1線)が、企画の段階で所定のチェックシートに自己評価を記入します。これを受けて、データ・AIガバナンス部門(第2線)が「AI開発ガイドライン」への適合性を評価した後、第1線が必要なリスク低減策を反映した上で開発に進みます。評価にあたっては、以下のチェック項目を設けています。

「AIA」におけるチェック項目(一例)
  • 人間の判断の介在の確保:
    AIの利用目的や用途を踏まえ、人間の判断の介在の必要性を評価。特に、重要な意思決定に関する場合には、人間が関与・監督する適切な運用体制を構築
  • 社内セキュリティ規程の遵守:
    個人情報や機密情報など、センシティブな情報の取り扱いを厳しく制限し、社内セキュリティ規程を徹底して遵守
  • AI利用の明示と透明性の確保:
    チャットボットなどでAIを利用する際には、必要に応じてAIとの対話であることを明示するなど、AIの利用者に対してわかりやすい情報提示と適切な理解を推進

運用を開始した後も、リスクのレベルに応じて、AI出力の精度や公平性をモニタリングし、必要な改善を求めています。加えて、導入済みのAIモデルについても、利用用途に応じて公平性とバイアスを評価しています。

「AIA」の判定基準

リスク判定の観点 リスク判定基準 対応
  • EU AI Act、人工知能関連技術の研究開発および活用の推進に関する法律などAI国内外の法規制
  • AI事業者ガイドラインなど各種ガイドライン
  • 影響範囲(社内/社外、ユーザー数)
  • EU AI Act 禁止AIに該当
  • 法律に違反するもの
AIAを実施
企画見直しを勧告
  • EU AI Act ハイリスクAIに該当
  • 制御喪失や暴走による事故リスクが想定されるもの
AIAを実施
必要に応じて実装時の評価を有識者会議にて実施
上記以外 影響範囲を踏まえてプロジェクトごとにAIA実施を判断

「AIA」の実施フロー

  • ※3KDDIが策定したAI開発時におけるリスク評価の仕組み

4. 社員教育

社員が適切にAIを開発・利用するため、KDDIは、AIガバナンスに関するeラーニングを実施しています。eラーニングには、AIガバナンス、AI活用における倫理的な考え方、セキュリティなどが含まれており、全社員が受講しています。
あわせて、DX人材を育成する社内教育プログラム「KDDI DX University」では、AIを用いたサービスやシステムを開発する社員を対象に専門講座を提供しているほか、ハッカソンや社内コミュニティ活動を年に数回行い、AI開発・利用時のリスクや開発手法について実践的に身に付ける機会を創出しています。

KDDI DX Universityの概要

KDDI DX University プログラムの特徴

専門スキル(専門領域別)

KDDIの事業を支える30の専門領域ごとのスキルを学ぶ研修プログラム

図:専門スキル内容 AI分野の該当項目は「生成AI専門研修」
各専門領域ごとの有識者・外部パートナーが開発しており、実務で活用しやすい実践的なプログラム

ポータブルスキル(全社員共通)

仕事を進める上で基盤となるスキル、知識を学ぶ研修プログラム

図:ポータブルスキル内容 AI分野の該当項目は「生成AI基礎スキル研修」
多岐にわたる事業フィールド・キャリア機会がある中で、専門領域や部署が変わっても能力発揮できる強固な土台を培える、多様なプログラム

専門スキル・ポータブルスキル双方の研修を実施(2026年8月31日時点)

5. ステークホルダー連携

KDDIは、国内外におけるガバナンスの枠組みにも積極的に参画し、AIの健全な普及に貢献しています。

広島AIプロセス報告枠組みへの参画と遵守状況の公表

KDDIは、G7が合意した「広島AIプロセス新規ウィンドウで開く」報告枠組みに参画し、国際行動規範の遵守状況を公表(※4)しています。また、広島AIプロセスの考え方に賛同する国々の自発的な枠組みである「フレンズグループ新規ウィンドウで開く」を支える取り組みとして2025年2月に設立された「パートナーズコミュニティ」にも参画し、国際的なルール形成の在り方に関する議論に加わっています。

一般社団法人AIガバナンス協会への参画

一般社団法人AIガバナンス協会新規ウィンドウで開くにおいて、KDDIのCDOが理事を務めています。KDDIは、AIガバナンスが当たり前のものとして定着した社会を目指す同協会の活動に参画しています。

AIセキュリティポータルの公開

AIを安心・安全に利用できる社会の実現に向け、KDDIはAIのセキュリティに関する情報を一元化して発信する「AIセキュリティポータル新規ウィンドウで開く」を公開し、広く社会に知見を還元しています。

6. アジャイル・ガバナンス

AIの技術動向や法制度、社会的な受容性は絶えず変化しており、一度定めたルールや体制が最適であり続けるとは限りません。そこでKDDIは、「AI事業者ガイドライン」が示す「アジャイル・ガバナンス」の考え方を取り入れ、環境・リスク分析/ゴール設定/システムデザイン/運用/評価の5つのプロセスを繰り返しています。

(「AI事業者ガイドライン」よりKDDI作成)
アジャイル・ガバナンスの基本的なモデル
アジャイル・ガバナンス 具体的な取り組み
環境・リスク分析
  • 用途ごとのAIリスク分析
  • リスクベース評価(影響度と頻度による分析)
  • AIの社会的な受容性、技術動向、AIガバナンスの動向に関する情報収集
ゴール設定
  • AIを前提とした中期経営戦略の策定および公表
  • 「KDDI グループAI開発・利活用原則」の策定と公表
システムデザイン
  • 「AI開発ガイドライン」などのAIガバナンスに関する社内ガイドライン策定
  • 「AIA」制度設計(企画段階で実施するよう設計)
  • 便益/リスクの理解のための全社員に対する教育
  • AIガバナンス体制の構築
運用
  • 「AIA」による評価
  • 社内ガイドラインの継続的な改善
  • コーポレートサイトでのAIガバナンスに関する情報開示
評価
  • 「アドバイザリーボード」の開催
  • 「データ・AIガバナンス部会」による運用状況のモニタリング
  • 取締役会、リスクマネジメント委員会、データ・AIガバナンス部会でのフィードバック
  • スリーラインモデルによるガバナンスの実践

7. グループ会社への展開

KDDIグループでは、グループ全体で「KDDI グループAI開発・利活用原則」に基づいて適切なAI開発・利活用の実現を進めています。また、KDDIではデータ・AIガバナンス部門がグループ会社に対して相談窓口を設け、AIガバナンス体制の構築や共通ルールの導入を支援しています。具体的には、「AIガイドライン」や「AIA」の手法をKDDIから共有することで各社の状況を踏まえたガバナンスの実施を支援しています。