TCFD提言への対応

TCFD提言への対応

TCFD

KDDIは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を2021年4月に表明しました。TCFDの提言に従い、「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の情報開示フレームワークに基づき積極的な情報開示に努めます。また、気候変動に対応する具体的な対策を講じ、行動していきます。

[1] ガバナンス

KDDIは、事業を通じた社会課題の解決(SDGs)・社会貢献・気候変動対策などのサステナビリティ(持続可能性)に関する課題を審議する機関として、ESG最高推進責任者である代表取締役社長が委員長を務め取締役会の主要メンバーなどで構成するサステナビリティ委員会を設置しています。社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会は、気候変動に関するリスクと機会に関して、監視、監督を行うとともに、報告事項などの承認を行う責任を有しており、監視、監督、報告、承認の最終権限を有しています。社長は、サステナビリティ委員会での上記事項に関する最終承認に関する責任を担っています。
当社にとって気候関連課題への対応は事業戦略の重要な課題と認識しており、気候関連課題解決を推進するために、サステナビリティ委員会においてKDDI単体は従来目標の2050年度から20年前倒しして2030年度にCO2排出量実質ゼロを目指し、全世界に配置しているKDDIデータセンターは2026年度のカーボンニュートラルを目指すことを承認しました。
サステナビリティ委員会は、環境におけるリスクと機会を評価し、それぞれの目標達成に向けた進捗状況のモニタリングを実施しています。

気候関連課題に係るモニタリングプロセス

社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会では、カーボンニュートラル目標の達成状況をモニタリングしています。
具体的には、サステナビリティ委員会の傘下にあるカーボンニュートラル部会が、年度目標未達のリスク要因と年度目標達成の場合の機会要因を半期ごとにモニタリングします。カーボンニュートラル部会のモニタリング結果がサステナビリティ委員会に気候関連のリスクと機会として報告され、重要性のアセスメントを行います。また、気候関連課題に係る目標・施策のモニタリングとアセスメントの結果が報告されます。サステナビリティ委員会は半期ごとに開催されます。上期に開催されるサステナビリティ委員会では、前年度目標達成状況の結果と目標未達の場合の要因分析が報告されます。下期に開催されるサステナビリティ委員会では、当年度の目標達成状況の見込みと目標未達見込みの場合の要因分析が報告されます。

気候関連課題に係るモニタリングプロセス

[2] 戦略

KDDIは、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action」を2020年5月に発表し、その中で地球環境の保全を社会課題の一つとして考え、エネルギー効率の向上と2050年までにCO2排出量実質ゼロの達成を目指すことを公表しました。具体的には、COP21で採択されたパリ協定の合意を受けた「急速に脱炭素社会が実現する2℃未満シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が2℃未満)」と「気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が4℃)」の2つの分析を行いました。その結果、「KDDI環境憲章」のもと、「気候変動対策」「循環型社会の形成」「生物多様性保全」を推進し、地球環境保全により一層貢献することを発表しました。
さらに2022年4月、より積極的なカーボンニュートラルの実現に向けた検討を行った結果、従来の目標を20年前倒しし、2030年度までに自社の事業活動におけるCO2排出量実質ゼロ実現を目指すこと、および全世界に配置しているKDDIデータセンターは2026年度のカーボンニュートラルを目指すことを決定しました。
また、2016年、電力市場の自由化が行われたことを受け、KDDIは、短期戦略として、同年に小売電気事業者として電力小売市場に参入しました。中期戦略として、企業や個人のお客さまへCO2排出量を削減する電力サービス「ノンカーボンメニュー」と「RE100メニュー」を2019年から提供開始しました。長期戦略として、再エネ発電事業を行うauリニューアブルエナジーを2023年4月に設立しました。
カーボンニュートラル実現に向けた大きな原動力となるのが、企業や組織の枠組みを超えた共創によるイノベーションだとKDDIは考えています。
2021年11月、気候変動問題に取り組むスタートアップ企業を支援するため、KDDI Green Partners Fundを設立しました。KDDI Green Partners Fundのスローガンには、「豊かな地球を未来へつなぐ」を掲げています。このファンドの活動を通じて気候変動問題に取り組むスタートアップ企業に資金を提供するとともに、KDDIの有する様々なアセットを出資先企業の成長機会として活用していただくことで、環境分野における技術革新や新技術の普及拡大に、共に取り組んでいきます。

シナリオ分析結果

急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃とする目標が達成される未来)
参照:IEA(International Energy Agency)「World Energy Outlook 2021」Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE Scenario)
移行リスク分析 KDDIとしてのリスク内容 KDDIの対応
政策・法規制
(短期・中期戦略)
炭素税 炭素税課税リスク※1 化石燃料電力から再生可能エネルギー電力への切替えを推進
都条例
排出規制
削減量未達となったCO2排出量に対するクレジット(排出枠)買い取りのコスト増加リスク 2020年度~2024年度の第三計画期間に発生が予想される未達CO2排出量19万t-CO2に相当する排出権(第二計画期間に発生したCO2排出権)を2020年度に4万t-CO2、2023年1月に15万t-CO2をあらかじめ購入した。この排出権は、2020年度~2024年度の第三計画期間の実績により2025年度~2026年度に充当を予定。
消費電力削減・CO2排出量削減への新技術導入(中期戦略) 通信量の増加に伴い発生する通信設備の消費電力の増加リスク 脱炭素に貢献するサステナブルなデータセンターを目指し、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を用いたサーバ冷却のための消費される電力を94%削減する三菱重工社とNECネッツエスアイ社との共同研究開発中。また、基地局スリープ機能(トラフィックの少ない夜間帯にスリープさせる)を導入し消費電力の削減を推進。ミリ波無線機1機種に対応する機能を内製開発し、ノウハウの蓄積と課題の洗い出し実施中。無線機1台あたり年間約100kWhの電力消費の削減が可能となる見込み。
市場・評判
(長期戦略)
カーボンニュートラル目標未達や再生可能エネルギー化の取り組み遅れによるKDDI企業評価低下および加入者減のリスク 化石燃料由来の電力から再生可能エネルギー電力への切替えを推進。当社の事業運営で消費する電力27億kWhを再エネ由来のメニューに切替え予定。また、グループ会社としてauリニューアブルエナジーを設立し、太陽光発電など追加性のある再エネ発電事業を開始。
  1. ※12030年度のCO2排出量見込みは約67.5万t-CO2のため、炭素税14,820円/t-CO2の場合、年間約100億円の課税を想定
気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温が4℃上昇する未来)
参照:IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書
物理的リスク分析
(物理的シナリオ「RCP8.5」を用いて分析)
KDDIとしてのリスク内容 KDDIの対応
急性 (台風や洪水などの)異常気象による災害の激甚化と頻度の上昇 迅速な通信網復旧対応を行うための緊急復旧要員人件費などのコスト増加リスク BCP※2の見直しと災害時復旧訓練実施による効率的な復旧作業への備え
慢性 平均気温上昇 お客さまからお預かりしたサーバを冷却するための、KDDIデータセンターの空調電力使用量の増加リスク 高効率空調装置の導入や再生可能エネルギーへの置換
  1. ※2Business Continuity Plan(事業継続計画)
水リスク評価と対策

近年の気候変動により水害含めた事業リスクが生じる懸念が強まっています。災害発生時に効率的な復旧活動に備える為の事前対策として、水リスク評価と対策を実施しています。
KDDIでは国土交通省または都道府県が定めた、「洪水浸水想定区域(想定最大:1000年に1度)」浸水想定高をもとに、影響度が高い拠点に対して対策工事を計画的に行っています。

【対策事例】
  • 対策例 [1]
対象局舎

中国エリア通信局舎A

対策

防水扉、北側ガラス窓のコンクリート塞ぎ(止水壁)
発電機用給排気口ダクト嵩上げ
トイレへの逆流防止弁の設置など

竣工年月

2022年6月竣工

  • 対策例 [2]
対象局舎

九州エリア通信局舎B

対策

防水扉、防水シャッター設置
窓などの開口部コンクリート塞ぎ
発電機用給排気口などへの防水対策

竣工時期

2024年度竣工に向けて対応中

【主な対策内容】
防水扉
発電機用給排気口ダクト嵩上げ
止水壁

[3] リスク管理

KDDIグループでは、事業を進める上での気候関連対応におけるリスクと機会は事業戦略の重要な課題と認識し、全社的なリスク管理プロセスにおいてマネジメントしています。具体的には、KDDIグループの財務上および経営戦略上に重大な影響を及ぼす気候変動のリスクと機会について、KDDIグループのサプライチェーン上流から下流を含む全事業活動を対象に、経営層とサステナビリティ経営推進本部が重要課題と認識している視点と各事業本部が重要課題と認識している視点の両方の視点で、各事業本部が毎年度評価を行います。
KDDIグループの財務上および経営戦略上に重大な影響を及ぼす気候変動のリスクと機会について、経営層とサステナビリティ経営推進本部は、すべての事業部門のリスクの抽出を年2回、半期ごとに実施しています。抽出されたリスクの中で、気候変動に関するリスクについては、環境ISOの仕組みを活用し、環境マネジメントシステム(EMS)のアプローチで管理しています。管理対象のリスクは、関係する各主管部門においてリスク低減に関する定量的な年間目標を策定し、四半期ごとに進捗評価を行います。進捗評価で指摘された改善内容については、サステナビリティ委員会傘下の部会であるカーボンニュートラル部会で報告され、全社・全部門に関係するリスクと機会については、サステナビリティ委員会で議論の上承認されます。

[4] 指標と目標

KDDIは、2012年度よりKDDI単体、2021年度よりKDDIグループのサプライチェーンの温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3)を算出し環境負荷の定量的把握を通じて、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会の管理を行っています。以下の指標と目標を掲げ、今後も温室効果ガス排出削減にむけ活動を進めていきます。

カテゴリ 2022年度(推定値)目標(KDDIグループ) 目標(KDDIグループ)
スコープ1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 88,165t-CO2(連結) 単体で2030年度、連結で2050年度のカーボンニュートラル達成
スコープ2 他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 1,308,085t-CO2(連結)
スコープ3 スコープ2以外の間接排出
(事業者の活動に関連する他者の排出)
5,252,273t-CO2(単体) 2030年度までに2019年度比14%削減