CFOメッセージ
事業成長と社会価値創出の
好循環を通じた
企業価値向上
取締役執行役員専務 CFO
コーポレート統括本部長 兼
ガバナンス推進本部長
サステナビリティ担当役員
最勝寺 奈苗

当社は2026年5月に中期経営戦略を発表し、ブランドメッセージも刷新しました。今後はAIが浸透してくることで、社会に効率化・高度化をもたらし、事業成長や付加価値創出が広がっていく「AI前提社会」が到来します。そのAI前提社会において、当社は未来へ向けて積極的に投資を実施するとともに、グループガバナンス強化の取り組みも着実に実施し、持続的成長に向けた経営基盤をより一層強化してまいります。また、サステナビリティ経営は当社の全社戦略を貫く経営の柱です。マテリアリティ解決を通じた事業成長と社会価値創出の好循環により、企業価値向上を目指してまいります。
AI前提社会における異分野融合による価値創造「Fusion」
前中期経営戦略では、26.3期EPSについて19.3期対比1.5倍の目標を実力値ベース(※1)で達成しました。通信料金値下げや燃料高騰、ミャンマー政変など、外部環境が大きく変化する中でも、持続的成長と株主還元の両立を実現することができました。一方、前中期経営戦略期間で発生した通信障害や不適切取引については、再発防止を全社で徹底し風化させることなく継承していきます。
今後はAIが社会に浸透し、事業の効率化や高度化による付加価値創出が広がっていくと考えられます。そのようなAI前提社会において、当社がこれまで築いてきた「お客さまとの接点・信頼」「全国のインフラ」「人財」は、AIに代替されにくい価値として、差別化のポイントになります。新しい中期経営戦略では「Fusion」と呼ぶ異分野融合による価値創造を提唱いたしました。KDDIグループには多様なサービスがあり、それぞれに顧客基盤を保持しています。インフラ基盤やデバイスを持つほか、パートナリング力にも強みがあります。これらを研究開発力や技術応用力などと融合させることによって、Fusionを生み出し、成長していきたいと考えています。
価値創造の中核にあるのはテクノロジーです。改めてリアルの持つ強みに着目し、AIを最大限活用することで、新しい価値をお客さまに届け、体験価値を創出していきます。新しい価値創造により成長するためには、私たちが新たなスキルを習得し、AI社会の実装を担える人財に進化していかなくてはなりません。
また、顧客体験の変化と社会実装を担う人財の創出に取り組み、AI時代の競争優位性を確立してまいります。

- ※1事業成長による実力値:架空循環取引に伴う外部流出額、契約コスト減損を除く
グループガバナンス強化を通じた企業価値向上
グループ会社における不適切取引事案において、ステークホルダーの皆さまの信頼を損なう結果となったことを、CFOとして深く反省しております。本件により当社グループのガバナンスおよび内部統制の実効性に関する課題が改めて浮き彫りになりました。この反省に立ち、グループガバナンス体制のより一層の強化を推進しており、不正防止の仕組みの整備とグループ会社との信頼関係の構築の両面から取り組んでいます。
仕組み面では、グループ会社を対象にガバナンス総点検を実施し、抽出した課題の改善を完了しました。具体的には、グループにおける取引先与信管理や購買業務の権限分離、財務管理の強化など、調査報告書でも提言いただいた再発防止策を実行しています。また、信頼関係構築の面では、年内にかけて、コミュニケーションの質と量の向上に取り組んでいます。共通言語としてKDDIフィロソフィの理念の浸透を図るとともに、対等な関係づくりに向けて、経営トップによる対話セッションを開始し、また、2026年7月中に主要グループ会社14社への直接訪問を実施しました。グループ会社の生の声に真摯に向き合うことで、KDDIへの信頼と心理的安全性向上につなげていきます。
加えて、体制についても、分散していた管理・牽制機能を集約し、全社およびグループ横断でガバナンス推進を担う本部を設置しました。私が本部長を兼任し、情報を一元的に把握・評価し、実効性の高い管理を実現します。また、新しく加わる社員およびグループ会社に対し、今般の教訓をしっかりと継承していく役割も担います。
今後も、ガバナンスの実効性向上と透明性の確保に取り組み、市場からの信頼回復に努めてまいります。
資本効率向上による企業価値向上
当社は中期経営戦略のもと、持続的成長に加え、成長投資・財務健全性・株主還元のバランスを追求しながら、資本効率の向上に取り組みます。規律を持った成長投資やポートフォリオマネジメントの深化などにより、CFOとして、各事業が戦略的合理性を持ち、相互にシナジーを発揮しながら、資本コストを上回るリターンを継続的に創出できているかをしっかり見極めていきます。こうした考え方は、成長投資を含む経営資源の配分について、取締役会が資本コストを踏まえてその妥当性を不断に検証するという、コーポレートガバナンスコードの原則とも軌を一にするものだと考えています。
キャピタルアロケーションについては、安定増配をベースとしながら、設備投資について「CAPEX to Sales 12%以下」を意識することでコントロールし、基礎FCFの中で成長投資を積極的に検討していきます。あわせて、「Net Debt/EBITDA 2.0倍目安」でのレバレッジ活用や規律に基づいたダイベストメントでキャッシュ創出を最大化し、持続的な利益成長を目指します。また自己株式取得は、大株主との対話を通じ、機動的に実施してまいります。
今中期では、成長原資創出に向けたダイベストメントを進めるとともに、投資パイプライン拡充と目利き力強化に取り組みます。特にグロース領域では、資本コストを上回るリターン創出を前提とした投資を徹底します。加えて、企業文化・KDDIフィロソフィとの適合性を重要な判断軸とし、短期的な採算性のみならず中長期的な企業価値創出への貢献を総合的に評価することで、ポートフォリオマネジメントの深化を図ってまいります。
サステナビリティ経営推進による企業価値向上
当社グループにおいて、サステナビリティ経営は全社戦略を貫く経営の柱です。
マテリアリティ解決を通じた事業成長と社会価値創出の好循環こそが企業価値向上に直結します。このたび、中期経営戦略策定とあわせて、当社グループの6つの新たなマテリアリティを策定しました。
マテリアリティ解決に向けた中期的な取り組みの進捗を測るためのサステナビリティKPIは、一部KDDI単体目標も含まれるものの、グループ全体で高い目標を設定し、達成を目指していきます。
新しいマテリアリティには、「地域の魅力化」を加えたことが特徴です。デジタル技術を通じて、地域の社会課題を解決し、世界と日本の人々の豊かな暮らしを実現したいという思いを込めており、2026年4月には「地域共創・SX推進本部」が発足しました。具体的には、ローソンと連携し、災害時の拠点となる「災害支援ローソン」を2030年度までに全国100店舗設置する計画や、地域課題解決を目指す企業約100社が参画するアライアンス「YORIMIRAI」を通じて、高知県日高村でのオンライン診療導入などを進めており、多様なパートナーとともに地域課題解決を加速していきます。
また、「地球環境への貢献」をマテリアリティの一つに掲げ、これまで注力してきたカーボンニュートラルにとどまらず、循環型社会の実現、生物多様性も含めた環境に関する3領域を一体的に推進し、持続可能な地球の未来に貢献していきます。
さらに、新たな社会変化として、AIがもたらす人権侵害やスマートフォンの適正な利用習慣などへの対応も必要です。KDDIグループ重要人権課題を2026年5月に見直し、AI・テクノロジーによる人権リスクへの対応を進めるとともに、スマートフォンの適正利用にあたっては、スマホ習慣セルフチェックツールを2026年3月に公開しました。
こうした取り組みを進める基盤となる人的資本や知的資本への取り組みも不可欠です。人的資本については新たにCHROを任命し、事業戦略と人財戦略を一体的に推進します。知的資本については、事業に必要となる知財アセットの評価として、評価基準を定義、それぞれのアセットの活用状況や事業貢献度を可視化する取り組みを開始し、事業共創を推進していきます。また、当社が提供する「つなぐチカラ」を定量的に示すものとして、「命・暮らし・心つながり数(2026年3月末時点:約2億2,500万)」の開示を行いました。これは、当社主要サービスの利用者数およびお客さま接点数の総和であり、この結果を毎年公表し続けることで、持続可能な社会への貢献の状況を可視化していきます。
こうしたサステナビリティ経営の推進を通じて、持続的な企業価値向上を目指してまいります。
2026年9月
取締役執行役員専務 CFO
コーポレート統括本部長 兼
ガバナンス推進本部長
サステナビリティ担当役員
最勝寺 奈苗