マネジメントメッセージ

新たな事業分野へ挑戦し、
持続的な利益成長と
株主還元の強化を通じて、
企業価値のさらなる向上を目指します。

代表取締役社長 田中 孝司
2016年8月

01. 2016年3月期までの振り返り

当社は、2014年3月期から2016年3月期までの3年間を「本格的な利益拡大フェーズ」と位置づけ、国内事業戦略の柱である「3M戦略 (マルチネットワーク・マルチデバイス・マルチユース) の推進・深化」と、「グローバル戦略の推進」に取り組んでまいりました。

「3M戦略の推進・深化」については、3M戦略を具現化したサービス「auスマートバリュー (モバイルと固定通信のセット割引サービス)」および「auスマートパス (auスマートフォン向け付加価値サービス)」を通じたお客さま基盤の拡大と、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトによるau通信ARPUの上昇を軸に、モバイル通信料収入が大幅に増加し、国内事業成長の原動力となりました。また、通信料以外の新たな収益源である付加価値売上をさらに拡大させていくための基盤「au WALLET」の開始など、新たな成長軸の確立に向けた取り組みも並行して行ってまいりました。

「グローバル戦略の推進」については、データセンターを中心として世界各国に展開している法人向けICTビジネスの基盤強化に加え、「ミャンマー通信事業への参入」をはじめとした新たな成長機会への取り組みにも着手しました。

こうした取り組みの結果、最終年度の2016年3月期におきましては、2013年4月に掲げた中期目標「営業利益の毎期2桁成長」と「配当性向30%超」を達成するとともに、利益成長と配当性向引き上げの相乗効果による1株当たり配当金 (DPS) の毎期2桁成長も実現しました。

さらに、これまでの3年間における中期目標の達成を支援していただいた株主の皆さまに対する感謝の意として、自己株式1,000億円の取得も決議しました。

2014年3月期から2016年3月期までの目標

営業利益 1株当たり配当金・配当性向

02. 新たな中期目標~2019年3月期に向けて~

<事業運営方針>

国内通信市場においては、競合他社による「モバイルと固定通信のセット割引サービス (バンドルサービス)」開始などをはじめとする同質化の進展や、MVNO各社による格安SIMサービスの普及など、事業環境は厳しさを増してきています。また、長期的には、少子高齢化・人口減少に伴う市場縮小リスクについても考えていかなければなりません。

これまでは、国内携帯電話市場の拡大を背景に、厳しい競争環境の中でも順調に成長し続けることができましたが、今後は、このような環境変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現していくために、従来のビジネスの延長線ではなく、スピード感を持って「変革」していかなければならないと考えています。

そこで、当社は、今後3年間における新たな事業運営方針として「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を掲げました。

市場が成熟し、商品・サービスの同質化が進展する環境下においては、お客さまに選んでいただける企業になる必要があります。そのためには、自らの強みを徹底的に磨き上げ、あらゆる分野において、お客さまの期待を超える商品・サービスをいち早く提供していくことが求められます。

当社は、それらを通じてお客さま体験価値を提供し続けていく「ライフデザイン企業」への変革を目指していきます。

今後3年間における新たな方針 ライフデザイン企業への変革

<事業戦略>

この方針に基づき、当社は、「(1) 国内通信事業の持続的成長」、「(2) au経済圏の最大化」、「(3) グローバル事業の積極展開」の3つの事業戦略に沿って、成長を追求していきます。

(1) 国内通信事業の持続的成長

国内通信事業については、引き続き、3M戦略の推進による「ID (お客さま数)×ARPA」の最大化を目指していきます。現在、国内通信大手3社間におけるお客さまの流動は、端末・料金・ネットワークの同質化に加え、総務省ガイドラインを受けた各社による過度な端末値引き販売の抑制も相まって、大幅に低下しています。従って、今後のIDの拡大は困難となることが見込まれるため、これまでに築き上げてきた強固なお客さま基盤をベースに、お客さま1人当たりの収入であるARPAをより重視していくことが必要不可欠となります。

そこで、「ID×ARPA」の最大化に向けては、タブレット・ルーターのさらなる普及に加えて、今後迎えるIoT時代を見据えたIoTデバイスへの対応など、「マルチデバイス」推進に取り組んでいきます。なお、IoTについては、さまざまなサービスと組み合わせて新たな体験価値を提供する「マルチユース」推進との連携を通じて、新たなビジネスチャンスの創出が可能と考えています。

今後は、お客さま流動の低下に伴う解約率および販売コストの低減と、「マルチデバイス」および「マルチユース」の推進を通じた「ID×ARPAの最大化」により、引き続き当社の基盤事業として、連結業績の成長を持続的に支えていきます。

事業戦略 マルチデバイス・マルチユース推進による「ID×ARPA」の最大化へ

(2) au経済圏の最大化

当社の大幅な利益成長を牽引してきた国内通信事業が安定成長期に移行することに伴い、国内における新たな成長軸として確立させたいと考えているのが、「au経済圏の最大化」です。国内通信市場が成熟化し、今後の大幅なID拡大が困難となる中、国内通信事業の基盤の上で新たな収益を創出していきます。

au経済圏とは、auのお客さまを対象とした、オンラインコンテンツからオフラインの実店舗決済、さらには両方にまたがるコマース・金融などを含む、非通信領域における経済活動の規模を意味します。日本では、オンライン上のモバイルコンテンツサービスの決済手段としてキャリアビリングが浸透していますが、当社は、この決済プラットフォーム (auかんたん決済) に加えて、オフラインの付加価値売上を取り込むための新たな決済プラットフォームとして、2014年5月より「au WALLETプリペイドカード」を、そして同年10月には「au WALLETクレジットカード」をそれぞれ開始しました。お客さまが、auの通信サービスに加えて、電気や金融サービスなどの支払いも「au WALLETクレジットカード」で決済していただくようになれば、お客さまにとってのメインカードとなり、食品・日用品などのお買物も加わることで、決済額のさらなる拡大とポイントのエコシステム構築につながっていくことが期待できます。この「au WALLET」を通じて、あらゆるサービスや実店舗で利用可能なWALLETポイントの循環モデルを構築したいと考えています。

厳格な本人確認を通じてご契約いただいているauの強固なお客さま基盤をベースに、誰もが利用しやすいこの2大決済プラットフォーム (auかんたん決済・au WALLET) の提供と、ビッグデータおよびデータマネジメントプラットフォーム (DMP) の利活用を通じ、物販・エネルギー・金融などのさまざまなサービスを、お客さまのライフステージに応じて「auライフデザイン」として総合的に提案していくことで、「au経済圏の最大化」を目指していきます。

また、お客さまとのタッチポイントにおいては、オンラインの「auスマートパス」とオフラインの実店舗である「auショップ」をさらに強化することで、「オムニチャネル化」を推進していきます。

以上のような取り組みを通じて、2019年3月期における「au経済圏流通総額 2兆円超」を目指します。

au WALLET ライフデザイン戦略

(3) グローバル事業の積極展開

国内通信市場の長期的な課題である少子高齢化・人口減少の進行を見据えると、グローバル事業を新たな成長軸として確立させることが必須と考えています。そこで、持続的な利益成長に向けて、「グローバル事業の積極展開」を加速していきます。

当社のグローバル事業は、主に新興国において個人のお客さま向けに携帯電話事業などを展開する「グローバルコンシューマ事業」と、データセンターを核とし、全世界を結ぶ大容量かつ信頼性の高いネットワーク、ICT環境を提供するシステムインテグレーションを一括で海外の法人のお客さまに提供する「グローバルICT事業」を主力事業として展開しています。

「グローバルコンシューマ事業」では、まず、当社連結子会社「KDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd」(KSGM) がミャンマー国営郵便・電気通信事業体 (MPT) と共同で運営しているミャンマー通信事業を本格的な成長軌道に乗せるとともに、当社がこれまで国内外で培った事業経験や技術力などの当社リソースをフル活用し、周辺事業についても積極的に展開していきたいと考えています。同国の経済や産業の発展および国民生活の向上に貢献するとともに、グローバル事業における成長の柱となるよう注力していきます。

ミャンマーに続く事業としては、2016年3月に、モンゴル国内携帯電話契約者シェアNo.1の「MobiCom Corporation LLC」(モビコム) を連結化しました。モビコムについては、2016年5月のLTE導入がさらなる成長ドライバーとなり、当社が持つコンシューマ事業のノウハウなどを活用することで、今後のさらなる成長が期待できると考えています。

ミャンマーおよびモンゴルで、お客さまから選ばれ続ける現地No.1の通信事業者を目指すとともに、引き続き、成長余力のある新興国をターゲットエリアとして、新たなビジネスチャンスを求めていきます。

もう一方の「グローバルICT事業」では、世界13の国・地域、24都市、48拠点で展開している「TELEHOUSE」(テレハウス) ブランドのデータセンター事業において、特に競争力のある欧州サイトにリソースを集中していくなど、法人のお客さまのニーズに応じた、接続性の高さを生かしたプレミアムデータセンター事業者として、引き続き基盤強化を図っていきます。

「グローバルコンシューマ事業」・「グローバルICT事業」の両輪で収益力強化と事業規模拡大を図り、さらなる成長に向けた取り組みを加速していきます。

ミャンマー/モンゴルにおける通信事業を強化 コネクティビティを活かしたプレミアムデータセンター事業者へ

<財務目標>

当社は、引き続き成長企業であることを志向し、長期視点に基づいて持続的な利益成長と株主還元強化を両立させていきます。

「利益成長」においては、「営業利益の年平均成長率7%」と「au経済圏における流通総額2兆円超」を目指します。そして、事業成長に向けて、「3年間の累計で5,000億円規模のM&A」を実施したいと考えています。

事業成長に向けたM&Aについては、今後の新たな成長軸と位置づけている「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」を中心に、あらゆる成長機会やリスク要素などを見極めた上で投資判断を行います。なお、基本的な考え方として、「au経済圏の最大化」では、auとのシナジーを非通信領域において発揮できるプレーヤーとの協業を中心に考えています。一方、「グローバル事業の積極展開」では、すでに市場が成熟している先進国ではなく、今後経済発展が見込まれる新興国を中心に中長期的な成長機会を求めていきたいと考えています。

「株主還元」については、財務面の健全性を維持しつつ、安定的な配当を継続していくことを会社の基本方針としています。今後3年間においては、配当性向を、従来の「30%超」から「35%超」へ引き上げ、持続的な利益成長に伴うEPS成長との相乗効果により、今後も増配を継続していきます。2017年3月期は、新たな中期目標における配当性向引き上げを踏まえ、前期比10円増配となる1株当たり年間配当金80円を予定しています。これにより、15期連続増配、6期連続2桁増配を目指します。

自己株式の取得については、成長投資とのバランスに応じて実施していきます。2017年3月期は、1,000億円の自己株式取得を発表しています。自己株式については、発行済株式総数の5%を目安として、超過分は定期的に消却する方針としており、本年5月18日に、発行済株式総数に対する「2.62%」相当を消却しました。

今後3年間における財務目標 1株当たり年間配当金

03. 持続的成長を遂げるための、企業人としての行動の原点「KDDIフィロソフィ」

KDDIには、従業員が持つべき共通の考え方、行動規範を示した「KDDIフィロソフィ」があります。

当社は、「KDDIフィロソフィ」の実践を通じて、すべてのステークホルダーの皆さまから愛され、信頼される企業を目指しています。当社は、社会インフラを担う通信事業者として、24時間365日いかなる状況でも、安定したサービスを提供する重要な社会的使命を背負っています。通信事業は、電波など国民共有の貴重な財産をお借りすることで成り立っている事業であり、全従業員が心と行動をひとつにしなければその責務は到底果たしうるものではありません。社会が抱えるさまざまな課題に対し、高い志を持って貢献していく社会的責任があると認識しています。このような企業としての姿勢、従業員の持つべき考え方をまとめたものが「KDDIフィロソフィ」です。

また、近年、事業のグローバル展開を積極的に進めていく中で、各事業部門の連携強化とシナジーの発揮のためにも、全従業員が共通の価値観を持って行動することが不可欠であると実感しています。当社では、2013年の改定を機に、「KDDIフィロソフィ」の浸透に向けて、国内外で継続的な啓発活動を行っています。今後も、「KDDIフィロソフィ」を全従業員が共有し、一丸となって使命を遂行してまいります。

04. 最後に

新たな中期目標の初年度となる2017年3月期においては、売上高は前期比+5.2%となる4.7兆円、営業利益は前期比+6.2%となる8,850億円、そして、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比+9.2%となる5,400億円をそれぞれ予定しており、「増収増益」を目指します。

我々は、当社を取り巻く環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現しつつ新たな時代を先導していくために、「ライフデザイン企業」への変革に挑戦することを決意しました。これまで以上にスピード感を持って、全社が一丸となって取り組んでいくことにより、引き続き企業価値の向上に取り組んでまいります。

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